アベノミクスから始まった金融緩和の流れに乗って、FXや暗号資産のトレードで資産を増やしてきたやがてゃ氏。しかし、長く続いた欧米の金融緩和政策も終わり、日本でも出口に向けた動きが始まっている。今後の相場をどう見るのか、トレードをする人へのメッセージとともに展望を聞いた。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司
やがてゃ氏 プロフィール
歴10年のトレーダー。チャートの形やファンダメンタルズを用いた分析を行い、通貨やゴールド、暗号資産を取引。IT企業の副代表やバーの経営なども行っている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/Light_Yagami_a
note:https://note.com/bakueki/
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金融緩和が終わり株や暗号資産は下落へ
――2023年以降のマーケットをどう見ていますか。(取材は2023年1月上旬に実施)
通貨に関しては、欧米で金融緩和政策の転換が始まったということがポイントですよね。
2021年は以前からの金融緩和に加え、新型コロナ禍に対する経済対策もあり、かなりの資金が市場にも入ってきました。しかし今後は、それを望めない。
そうした緩和相場が終わると、徐々に為替のボラティリティも低くなり、激しい値動きは減っていくのではないかと思っています。年単位で見ていけば為替も大きなレンジの中で動いているので、それなりのところに収まっていくでしょう。
株に関しては悲観的で、米NYダウなどは、22年の安値を割り込んでいくんじゃないかなと思っています。
株が下がればビットコインだけ無事というわけにはいかず、やはり22年の安値を割るでしょう。
1万4000ドルくらいの水準まで下がるのではないでしょうか。2月から4月頃にかけて下がり始めて、22年安値を目指すという流れになると見ています。
金については先行きがちょっと読めません。遠い先の将来の話をすれば、金も埋蔵量が決まっているので価格はじわじわ上がっていくとは思うのですが、当面の動きを予想するのは難しいですね。
ただ直近の動きを見てると、どこかで日足レベルの下降トレンドに入るのではないかと思っています。どこかで調整が入らないと、今のレベルから上へ行くのは難しいのではないでしょうか。
株が安値更新していくと、株の損失を埋めるための換金売りも出るでしょうし。直近の上値は、あと50ドルぐらいですかね。そこまで上がるといったん調整が入ると思います。
下値はどこまで下がるか読めません。株価の動きやファンダメンタルズを見ながら値を追うしかないと思っています。
――基本的には下げ相場という見立てなのでしょうか。
NYダウとかナスダックとか米国ファンドを積み立てていたら、いつか勝てるみたいな考えが一部で流行っていましたよね。
そういう米株神話のようなものは、いったん潰れるような気がします。
そうした事態も視野に入れて立ち回っていくのが大切だと思っています。
だから、株やビットコインの商品を積み立てるにしても、始めるのは株価が22年安値を割ってからにしたほうがいいと思います。
株が安値更新することを前提に話していますけど、そうした動きになるだろうと、結構自信を持っています。
チャートよりもファンダメンタルズを重視
――株が安値更新すると考えるのは、チャートの形からでしょうか。それとも不況が来るからということでしょうか。
不況ですよね。世界的なインフレが続いていますし、日本でも物の値段が上がっています。日本は円安もありましたから。
チャートの形から言えば、ダウは今拡大トライアングルの上のほうに位置しています。
順当に行けば下割れということになりますが、株はチャートだけでは予測できません。ファンダメンタルズも合わせての判断です。

――チャートの形だけではなく、ファンダメンタルズも判断要素にしているのでしょうか。
いろいろなものを見ていますね。Twitterなどで指標の結果を速報している人がいますし、さまざまな情報ツールがあるので、そうしたものを利用しています。
通知をオンにしておけばすぐにスマホなどで見られますし、検索するより早いことが多い。そういう情報を見ながら前回のデータと見比べて現状を分析しています。
――チャートとファンダメンタルズで、それぞれどの程度の割合で取引の参考にしているのでしょうか。
スキャルピングのように1分足とか、5分足だけを見てトレードするのだったら、別にファンダメンタルズを見なくてもトレードできます。
指標の発表時だけ急な値動きに気を付けていれば大体は取れますから。
でも、相場全体の流れを追って大きく取っていこうとすると、ファンダメンタルズを見ておかないと厳しい。
なので、トレードの時間軸が伸びていくにつれてファンダメンタルズを参考にする比率は上がっていきます。
長期のポジションを握り続けるのであれば、ファンダメンタルズ6割か、少なくとも1:1で見ておく必要があると思います。
22年に金の価格がリバウンドしたのに合わせて利益を上げられたのですが、この時も中国勢が買い始めたとか、金属全体が買われ始めたという情報などを参考して、相場の流れの転換を捉えることができました。
――そうした下げ相場の中でどのようなトレードを考えていますか。
以前は、22年末から株式が大幅に下げると見ていました。そうなれば年明けの1月からビットコインを買い始めようと準備していた。
それで毎月100万円分のビットコインの積み立てを考えていたのですが、予想通りには株が下がらなくて。ちょと時期が早いということで、今は様子見です。いずれチャンスが訪れると思いますが。
理論にとらわれない文系のほうがトレーダーに向いている
――サロンでトレードに関する質問を受けることも多いと思うのですが、どのような人がトレードに向いていると思いますか。
質問を受けて感じたことは、どちらかと言えば文系の人がトレードに向いているということと、文章をしっかり書けない人は向いていないということですね。
例えばDMなどで質問をもらっても、誤字脱字が多くて、ちゃんとした文章になっていない人がいるんです。それほど勉強ができるわけではない僕でも、こんな日本語はおかしいだろうと感じるレベルで。
そういう人は何を教えても理解してもらえないということが多い。
――トレードは理系の人が向いているイメージがあるのですが、文系のほうが向いている印象なのでしょうか。
僕は文系の方が向いていると思いますね。
理系で、特に生真面目な人は何かと理屈をつけたがるような気がします。
実際の値動きを見ながら、チャートがこの形だから上値がここまで行かないとおかしい、みたいな考えの人が多くて、現実よりも理論を優先するような印象があります。
ダブルボトムが成立したんだからダブルボトムのネックからトップ部分は上に伸びるはずだ、みたいな。もう少し臨機応変に対応したほうがいいんじゃないか、と思うことがあります。
公式に当てはめれば導き出される答えは一つという考えをしがちなタイプの理系の人、頭が固くて柔軟に対応できない人は、トレードに向いていない気がします。
ーーそのほか、トレードに向いてる人の特徴などはありますか。
例えば「これについて僕はこう思うんですけど、やがてゃさんはどう思われますか」みたいなパターンで質問してくる人っていうのは、勝てるようになるイメージがあります。
自分の考えを持ってその考えが合ってるか合ってないかも一緒に聞いてくる人っていうのは伸びる傾向にあると思います。
ーーいまの質問は平均以上にトレードがうまい人の傾向だと思うのですが、やがてゃさんは年間利益数千万円以上の特別にうまいトレーダーのお知り合いも多いと思います。そのような方の共通点などはありますか。
結構バラバラですね。スタイルも違ったりするんで。
ただ感覚派のトレーダーは学歴がよろしくない人が多いですね。僕含めなんですけど。
学歴がよろしくないというのは高卒中卒、大卒でもFランとかそういう感じですね。
なんでなんですかね、僕もわかりません。
逆に感覚派じゃないデータなどをよく見て取引する人は高学歴が多い印象です。東大とか多いです。
ちゃんと計算してロジカルなデータも見て一つ一つサンプル取ってこういうデータのときはこうなりやすいから、というのもちゃんとやってるんだろうなっていうのがわかります。
プラスにならないのは利確に問題がある
――時間軸の話がありましたが、スキャルピングのような短時間のトレードと、スイングのような少し長めのトレードで向き不向きはあると思いますか。
狼狽して失敗しがちな人は、スイングなど時間軸が長いほうが向いているのではないでしょうか。
短期のトレードでは上下の揺さぶりに辛抱しきれない人がいるんですよ。
あとはシンプルに反射神経に自信がない人はスキャルピングをしないほうがいいでしょう。時間軸が短くなれば短くなるほど反射神経を競うようなところがあります。
――トータルでなかなかプラスにならないトレーダーはどこに原因があると思いますか。
僕が周りの人を見ている限りは利確のタイミングですね。
明らかに、もう下落に転じそうなのに、なぜか頑張ってロングのポジションを持ち続けている人って多いですね。最初に設定した利確ポイントまでは何とか持っていたいと思うのでしょうが。
そういう人は相場の全体の流れが見えていないのだと思います。
極端な話をすると、株が暴落して、金も暴落しているようなときに、ビットコインをロングで持ち続けるような人です。
ビットコインはビットコイン単独で動くから、ビットコインの指標しか見ないとか。そんなやり方では勝てませんよね。
通貨や株、金や政策金利など、全体的な相場のトレンドを見なければならないのに、全体が見えていない。勝てない人はそんな人が多いと思います。
1年でうまくいかなければ、きっぱりと諦めたほうがいい
――トレードを始めたいと思っている人や、もっとうまくなりたいという人にメッセージなどをお願いできますか。
そもそもトレードを始めるのはあまりお勧めできないですね。仕事をしているのなら、本業をしっかり頑張ったほうがいい。
どうしてもやりたいのであれば、1年ほどやってみて安定的に勝てるのであれば続けてみてもいいでしょう。1年やってみてダメだったらきっぱり諦めることです。
――1年で判断できるのでしょうか。
僕の周りでうまくいっている人はだいたい半年から1年で、数千万円の安定した利益を出せるようになっています。何年もかけて、ようやく安定したという人はあまりいません。
1年やってみて、なんとかトータルでプラスとか、年1,000万から2,000万円程度のプラスであれば専業は無理ですね。ほかにもっと向いていることがあるはずです。
始めて1年も経たないうちに、安定して2,000万円勝てるようになりました、という人が珍しくない世界です。
――厳しい世界ですね。
トレードはセンスが問われる部分があると思います。何度やっても上手くいかない人がいる一方で、はめ込みを狙っている人に教えてもらっても勝てるようになる人もいるんですよ。
そういうのはセンスの差だと思います。
もともとセンスがいい人はどの世界にもいて、野球でいえば、人一倍努力してもプロ野球選手になれるとは限らない。努力を重ねて社会人野球の選手まではなれたけれど、持って生まれたセンスの違いで、プロ野球にはあと一歩届かなかったという人もいます。
トレードでも努力を重ねて勝てるようになる人もいますが、多くのロットを張って値幅を抜くというトレードで安定して勝ち続けるという人は、やはり才能があるのだと思います。
努力だけではたどりつけない部分が、専業トレーダーには必要な気がします。
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