株式投資家のおせちーず氏に、日本市場のこれまでや今後の見立てについて伺いました。
おせちーず氏 プロフィール
投資歴約31年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリストを経て、現在は企業に勤めながら大学で非常勤講師にも従事。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/
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取材実施日
2023年9月14日
コロナで一時下落があったものの2012年から上昇し続ける日本株
ーー本日は今後の日本株におけるおせちーずさんの見立てについて伺います。まずは日経平均株価の2010年から現在までの大まかな値動きについて教えてください。
2010年から2012年末までは暗黒時代でした。
2011年は東日本大震災が起きて一時8,000円台まで下落し、同年に米国の債務上限問題がありそこでも10,000円を切っていましたね。
2012年は欧州債務危機で円高となりましたが、日本は製造業が多く円高がマイナス要素となって株価が低迷しました。
その後、2012年に政権交代が起き、故・安倍晋三氏が2度目の首相となり、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を行いました。
デフレ脱却と2%のインフレ目標、東日本大震災の復興、民間投資を喚起する成長戦略を行い、それがある程度効果を上げ日経平均株価も10,000円を超えました。
2014年には消費税が5%から8%へ引き上げられましたが、2015年7月頃まではそのまま上昇を続けています。
ーー2015年では6月に20,000円を超えてその後ピークが下がるものの、2020年からさらに上昇しています。
2016年にはイギリスでEU離脱をかけた国民投票が行われEU離脱派が勝利し金融市場は混乱しました。イギリスの通貨ポンドは30年ぶりの安値となり、株式市場は300兆円以上の損失を出しましたね。その混乱で日本市場も引きづられています。
2016年の米国大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が大統領になりました。ビジネス界出身ということもあり、株式市場には非常に敏感だったと思います。大統領就任後、それまでも好調だったNYダウはさらに上昇しました。
そして日経平均の株価も米国株が上がるのと一緒に連れ高で上がっていき、下落と上昇を繰り返しながらも2019年まで少しずつ上昇しています。
2020年からはコロナ禍となりました。日本は低金利が効いたのか定かではありませんが、リバウンドが起こり上昇を続けています。
ーー2023年のチャートを見ると、4月に27,000円を超え、6月にはさらに33,000円を超えています。要因についてはどのように見ていますか。
今年の3月に東京証券取引所がPBR1倍以下の上場企業に対し改善策を要請したことで海外投資家から割安株への注文が入ったことや、自社株買いが進むなどして株価が上昇したことが要因であると見ています。
参考:東証、PBR1倍割れ1800社に改善策の開示を要請 – 日本経済新聞
また、昨年から中国経済が低迷してきたこともあり、中国に流れていた資金が日本に流入してきたと見る人もいます。
金利上昇に伴い円安となっても全ての輸出企業が有利になるとは言えない
ーー米国の利下げタイミングなど金利動向が注目されていますが、日本株への影響について教えてください。
米国の金利上昇で有利となる日本企業はあるでしょう。例えばトヨタやホンダみたいな会社は追い風を受けると思います。いまも上場来高値をつけていますから。
ただ金利上昇に伴い円安となるからといって、全ての輸出企業が有利になるとは言えません。
自動車に限っては、需要と供給のバランスが整ったことが要因と見ています。昨年はウクライナ問題があり、部品の供給不足が続いたため長期間自動車を作れない状況でした。
車種によっては未だに納車が遅れていると聞きますが、全体としてはサプライチェーンが整ってきたこと、買い替えのニーズが高まったことが合わさってトヨタやホンダの株価は高値になったと見ています。
一方、半導体関連株や私が保有するダイキン工業の株価はあまり良くないですね。
※当該取材は2023年9月17日に実施。取材後、9月21日に米FRBは利上げを見送ると発表。 日経平均株価は400円以上の値下がりとなった。参考:21日の日本株は続落、金利上昇重しでグロース株が下落|会社四季報オンライン
ーー半導体関連株とダイキン工業の株価が下がった理由はなぜだと思いますか。
半導体の種類によりますが、業界で供給過剰状態に陥っているからだと思います。
特にダイキン工業は在庫が積みあがっているという報道があり、ならば下げは仕方ないなと考えています。
ただ、半導体産業は裾野が広く、車用メモリー、データセンター用、パソコン用など用途も違えば作る半導体も異なります。
金利上昇や物価高、経済低迷でデジタル機器の売上が低調なのでデジタル機器関連の半導体の株価は影響を受けるでしょう。
同様にパソコン用のメモリーなども需要がなく株価も落ちています。
一方、NVIDIAやAI銘柄の株価は好調で、ひとくちに半導体と言っても棲み分けができています。
ただ、「シリコンサイクル」といって半導体産業の業況は約4年ごとサイクルで変動すると言われていて、今はおそらくシリコンサイクルのボトムにいる状況ではないかと見ています。
来年から少しずつ回復する予想も出ており、私も少しずつ半導体関連株を買い増しています。
参考:アングル:半導体業界、供給過剰解消に期待 需要予想は依然低調|ロイター
参考:シリコンサイクル | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
なぜ人手不足がこれほど深刻になったのか
ーーおせちーずさんが今後の日本株を見る上で注目しているポイントがあれば教えてください。
慢性的な人手不足ですね。
例えば小売や外食などいわゆるサービス産業では人的作業の依存度が高く、人手不足が経営に大きなダメージを与えます。
私は青森にいますが、明らかな人手不足を感じますね。東京はもっと深刻でしょう。
各企業の対応内容によって、今後大きな差が出てくると思います。
また、これはサービス業に限った話ではなく、今後恐らく他の業種でも人手不足はかなり深刻な問題になると見ています。
ーーなぜ人手不足がこれほど深刻になったと見ていますか。
私が考える理由は次の2つです。
1つ目は、アフターコロナとなった今、就業者が企業を選ぶ時代へ変わったことです。コロナ前は、企業が就業者を選んでいましたが立場が逆転しました。
コロナで一旦雇用から離れたことで仕事への情熱が冷め、無理してでも働く気持ちがなくなったのではと見ています。
また、コロナ禍で大変な思いをした就業者も多かったのではないでしょうか。私の周囲でも働きたくないと言っている人が結構います。
2つ目は、少子高齢化の加速による働く世代の減少です。
しかし、未だに若い世代を欲しがる企業が多いように見受けますね。
「雇用するなら若者」という古い考えに縛られている企業は、人手不足の解消は難しいでしょう。雇用する世代に縛りをかけていない企業は、打開策を見つけていくと思います。
ーー仮に人手不足の解決策を挙げるとしたらどのようなものでしょうか。
まずは人件費を上げることでしょう。
そのためには上昇した分の人件費を販売価格へ転嫁する必要がありますが、それができるか否かが問われると思います。
株価のパフォーマンスが良い会社は、価格転嫁ができている会社なんです。
実際、値上げを発表した企業では、素直に株価が反応しています。
参考:食品メーカーに値上げの動き、実施か否かで株価二極化も | ロイター
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おせちーず氏のインタビュー記事、後編に続きます
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