ビットコインマイナー弁護士の小峰孝史氏に、家族で海外移住した際に困るケースや注意点などについて伺いました。
小峰孝史氏 プロフィール
米系法律事務所Sidley Austinの東京オフィス・香港オフィスに勤務、TMI総合法律事務所所属時に香港駐在。2018年より現職。主として日本の富裕層向けに香港やその他の海外の税制上のメリットを生かす投資スキーム作り・移住をサポートしている。
Twitter:https://twitter.com/tkomine921 会社:https://owl-investments.com/
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
取材実施日
2023年4月28日
家族での海外移住で、移住後に困る、悩むケース
ーー家族での海外移住で、移住後に困る、悩むケースにはどのようなものがありますか。
まずお子様に関して言うと、特に男の子ですが、中学生や高校生で米国に転校するとスクールカーストで最下層になる可能性が高いように思います。
米国は体がでかくて運動ができるやつが偉いというカルチャーがあるので、日本であればごく一般的なレベルの男子でも、米国だとスクールカースト最下層になってしまう危険があります。
アイデンティティ確立において重要な10代で、自己評価が非常に低くなってしまう可能性が高いです。
お子様にとってそれは結構つらいことでしょう。
ーータイのインターナショナルスクールではそのようなことはないのでしょうか。
私は聞いたことがありません。
タイ人あるいはタイとのハーフの生徒が比較的多く、日本人や中国人のような東アジア系の子もある程度います。
白人の子もいますが、私が見ている限りは、いわゆる体のでかいやつだけが偉いという感じではなさそうです。
最初の1年は入れるインターナショナルスクールで英語を習得し、1年後に名門インターナショナルスクールに転入する選択肢もある
ーー小学生からの転校では特に問題にならないのでしょうか。
小学生でも、英語ができないことで辛いことはあるかもしれません。
小学校6年生で英語がほぼゼロの状態からタイのインターナショナルスクールに転校したケースがありますが、楽ではなかったと思います。
ただ、私がその授業を見に行ったところ、ティーチング・アシスタントが隣に座ってノートをとるのを手伝ってくれていたり、かなり細かいサポートがありました。
しかし、中学校以降、特にいわゆる名門のインターナショナルスクールになればなるほど、「英語学校ではないので英語ができるようになってから入学してください」とお断りされることが多いです。
そのため、最初の1年は入れるインターナショナルスクールで英語を習得し、1年ぐらい後に名門インターナショナルスクールに転入するというのも選択肢として考えられると思います。
これが悩みの一つ目です。
▼名門インターナショナルスクールISBのバンコク分校の写真。小峰氏提供。


海外に移住しても、日本の家を保有すると税務署や国税局から「その家が住所だ」と認定されやすくなってしまう
ーー二つ目について教えてください。
二つ目は、日本に一時帰国する時に、ホテル住まいだと落ち着かないから家を買いたいとおっしゃる方が結構います。
こうしたお客様の気持ちはよく分かります。
私も海外に長く住んできましたが、日本への一時帰国時にホテル住まいだと、どうしても落ち着かないです。
ただ、日本の家を保有すると、税務署・国税局から、「その家が住所だ」と認定されやすくなってしまいます。
そのため、個人で居住用の家を買うのはお勧めしにくいです。次善の策として、例えば、ご自身が保有する法人の会社名義で不動産を所有し、会社の保養所、寮とする等を、選択される方はいらっしゃいました。
悩みの三つ目は、クリプト投資家が手持ちのクリプトをどのように法定通貨に換えるか、ということです。
例えば不動産を買うために一億円単位での法定通貨が必要となった場合に、いま時点では直接クリプトでは買えませんよね。
そのため、なんらかの方法で保有しているクリプトを法定通貨に換える必要がありますが、1億円を超える現金が突然銀行に入金されると口座を止められることが結構あります。
ーー素人考えですが、100万円を100回換金するというようなやり方では、クリアできないのでしょうか。
どうでしょう。
クリプト絡みは入金が厳しく、100回も入金するとそれはそれで目立つので止められてしまいそうです。
OTC(店頭取引)を利用するというのが、おそらく最も簡単で、目立たずにまとめて入金できる方法だと思います。
これに関しては、これが一番いいという明確な答えがあるわけではありませんね。
ーー海外での生活自体が苦になるケースはないのでしょうか。
私が見ている限りでは、生活自体が苦になっているケースはありません。
タイやシンガポールなどは日本食も充実していますし、スポーツチームなどのアクティビティも日本人向けのものが揃っていますから、困難さは感じないのではないでしょうか。
クリプトのトレーダー以外では、海外移住者はビジネスで収益を上げている方が多い
ーー小峰さんがご存知の海外移住のケースは経済的に余裕がある方々だと思いますが、どういうお仕事をされている方が多いのでしょうか。
クリプト以外で海外に移住した方々の中には、ビジネスで実際に収益を上げている方々が多いです。
自身で起業した会社の上場を機に海外移住された方、医師や歯科医師でクリニックのオーナーをされている方などもいます。
会社のオーナーの場合、売上規模が10億円以上の方々が多いです。
ーークリプトで儲けた方の場合も、もともと入金力があったケースが多いでしょうか。
はい、両方いらっしゃるかなと思います。
例えば、前編でご紹介したご家族のケースでは個人事業で飲食店を経営し、もともと一定程度の資産を保有する中でカルダノでさらにリターンを上げることができたんですね。
とはいえ、そういう方ばかりではないです。
クリプト投資家の場合は、私が知る範囲では、もともとは大きな資産を持っていなかったけれども、クリプトでひと山当てたという方が少なくありません。
ーークリプト以外で海外に行った方々は日本で会社を売却して海外に移住しているのでしょうか。もしくは海外移住後も日本の会社に携わっているケースもあるのでしょうか。
どちらのケースもあります。
税金の問題でもありますが、代表取締役の職を退いてから海外移住するほうが、おそらく無難です。
日本の会社で代表取締役の職を維持したまま海外に移住すると、住所が日本にあるとみなされる確率は高まってしまうでしょう。
家族での海外移住における注意点
ーー家族での海外移住における注意点を教えてください。
弊社でサポートさせていただく場合、税金面での有利になる移住の体制を整えることは十分可能だと思います。
ただ、税金面でメリットがあっても生活面で楽しいと感じられない場合、海外生活はなかなか続きません。
なので、例えばお子さんがインターナショナルスクールに通う場合、親も学校の勉強や課外活動をお手伝いし、子どもと一緒に楽しむのもよいでしょう。
地域のスポーツチームに参加するなどもいいと思います。
そういう楽しみがあれば、親も子どもも幸せになると思います。
その点、バンコクは様々なアクティビティが充実しています。英語で行うスポーツチームや語学学校もあります。
日本人が多いため、日本語で行われるスポーツクラブやスポーツチーム、音楽ならピアノのレッスンなども多いです。
そのため、海外で何か新しいことにチャレンジしたいと思ったときにも、限界を感じることは比較的少ないと思います。
家族で移住する場合、生活面を充実させることが税金面の悩み以上に重要
ーー生活面から見ても、タイは移住先としてお勧めできるということですね。
そうです。ご家族で移住される場合、生活面を充実させることが、税金面の悩み以上に重要だと思います。
教育については、小学5年生くらいになったら、子どもをそのままインターナショナルスクールに通わせてその後は海外の大学へ進ませるのか、中学あるいは高校から日本の学校で学ばせる方向を目指すか、どちらの道を目指すかを考える必要があると思います。
ただ、なかなか決めがたいことも多く、両にらみ作戦を取りたいかたもいらっしゃいます。
その点、バンコクやその他の都市であれば、インターナショナルスクールに通いつつ、日本の学校に戻るための勉強もしっかりできます。
ですから、インターナショナルスクールに通って英語ができるようになることはいいけれども、それでは日本に戻れなくなってしまう、という心配は少ないと思います。
たとえば、駿台予備校の海外校が香港や台北などにありますし、私も昨年2022年に駿台予備校のバンコク校に訪問しましたが、生徒のレベルも高く、トップレベルの中高一貫校にかなりの人数が合格しています。
こうした日本の受験塾に通って勉強をしながら、インターナショナルスクールで英語を学ぶ方法をとれば、そのままイギリスやアメリカの大学を目指すこともできますし、日本に戻りたいと思えばいつでも戻れるような勉強もできるため、選択肢が多く作れます。
家族で香港から日本に帰国したケース
ーー日本に戻って来られるパターンもありますか。
はい、あります。
ーーどのような理由で戻って来られることがありますか。
私の家族の例を挙げると、今、私の長男は中学2年生です。小学校時代は香港で英語で授業を受け、中国語を外国語として学びました。
その後、日本人のサッカーチームでプレーするようになり、香港にある日本の中学受験向けの塾で勉強しました。
そして、中学校に進学する時は、日本で帰国生入試を受けました。
そうすると、日本人としてのアイデンティティを中学生、高校生のうちに養いつつ、英語もすごくできる子になると私は期待しています。
自画自賛かもしれませんが、おそらくこれが一番お得なコースかなと思います。
小学校時代に海外で英語を学び、中学校進学、高校進学の際に帰国生入試を受けることをお勧めします。
そうすれば大学受験では日本の大学を受験することができますし、英語が得意であればワンランク上の大学に進学することもできます。
ワンランク、ツーランク上の学校に進学することができますので、この方法が一番お得だと思います。
香港の場合は、公立でも英語で教える学校、中国語で教える学校もある
ーー貴社にご相談し家族で海外移住するパターンでは、ほぼすべてお子様がインターナショナルスクールに通いますか。もしくは現地の地元の公立や私立に通うこともあるのでしょうか。
弊社がサポートしたケースでは、例えばタイ移住の場合、現地の学校では言語がタイ語になってしまうので、そのような例はありません。
香港移住であれば、地元の学校もお勧めです。
前提として、香港の公立校は日本と仕組みが異なります。
日本の公立の中学校の場合、どの学校でも必ず日本語で授業しますよね。
しかし香港の場合は、英語で教える学校もあれば、中国語で教える学校もあるんです。私の子どもの場合、英語で教える学校に通っていました。
そしてその学校では、外国語として中国語を学ぶことになっていました。
うちの子どもたちが通っただけでなく、うちの会社で、その学校への入学手続をお手伝いした例もあります。
日本人であれば、英語で教育を受けることができ、中国語も外国語として学べる環境なので、お得ですね。
公立学校の制度は国によって異なるため、簡単に入れるかどうかはその制度によります。でも、面接などの部分では、私たちがお手伝いできると思います。
参考:海外で生活し日英バイリンガルを目指す子供たち、帰国生入試を受けて日本に戻るのはお得な進路か?
参考:海外生活で英語力を磨いた帰国生、学歴をラクラク手に入れられる?(香港の進学塾episの講師にインタビュー)
暗号資産の投資家は、自分たちが税の徴収について注目されている認識を持ち、対策を練ったほうが良い
ーー最後に、読者にメッセージをお願いします。
国税庁は、ウェブサイトで所得税や消費税調査の情報を公開していて、現在の主要な関心事について公表しています。
暗号資産はその関心ごとの一つとして明記されています。つまり、暗号資産投資家は、税務当局から狙われている訳です。
そのため、暗号資産の投資家は、自分たちが税の徴収について注目されている認識を持ち、対策を練ったほうが良いと思います。
実際にうちのお客さまでも狙われた例が多数あります。
日本で会社員や公務員として働いている場合、仕事を辞めて海外移住というのは難しい判断でしょう。
しかし、辞めても惜しくない人や自営業者・会社経営者であれば、なんとかなります。
自分が会社のトップだからやめられないとおっしゃるかもしれませんが、正直、結構なんとかなります。
社内のナンバー2に任せて自分だけ海外に移住する方法もありますし、会社の事業ごと海外に持ち出せる場合もあるでしょう。
この辺りは、会社の事業内容しだいですが、なんとかできることが多いので、ぜひご連絡いただければと思います。
ーーーーー
小峰氏のTwitterアカウントや企業のHPはこちら
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
インタビューの前編はこちら。
この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです。