証券アナリストの経験を生かし、ローリスク・ローリターンに徹した投資で資産を形成したおせちーず氏。投資先を選ぶときには、自分が信じられるストーリーを持つことが必要だという。そんなおせちーず氏に、相場が急変動したときの向き合い方や、投資で上手に利益をあげたい人へのメッセージなどを聞いた。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司
- インタビュー1記事目:「個別株で、預金以上インデックスファンド未満の低リスク低リターンを目指している」株式投資家・おせちーず氏 1/4
- インタビュー2記事目:歴30年の投資家が語る、日本のバブル・リーマンショック・欧州危機・東日本大震災 株式投資家・おせちーず氏 2/4
- インタビュー3記事目:「社会が不安定になっても業績が悪くなりづらい会社に投資する」株式投資家・おせちーず氏 3/4
おせちーず氏 プロフィール
投資歴約31年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリストを経て、現在は企業に勤めながら大学で非常勤講師にも従事。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
Twitter:https://twitter.com/osechies
ブログ:https://ssizehappy.exblog.jp/
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他人の意見を鵜呑みにしない人が投資に向いている
――投資に向いているのはどのような人だと思いますか。
他人の意見に必要以上に左右されない人。そして、勉強する人ですね。
SNSで他人の意見ばかり見ている人や、これがいいという誰かの意見を、そうなんだとそのまま受け入れてしまう人。そういう人は向いていないと思います。
SNSの情報をそのまま参考にするなとは言いませんけど、言っていることの意味をきちんと理解しないままただ真似ているだけだったら、たぶん痛い目に遭います。
――リーマンショックやコロナショックなど、相場が大きく変動するときは、どのように対応すればいいのでしょう。
そういうときに買い向かえる人が強い人だと思います。
永遠に売られ続けることなど絶対にないし、買われ続けることもないんです。必ずどこかでマーケットは反転するので、その反転の流れをつかむには、どうすればいいかを考えることが必要です。
それを考えられる人が投資に向いている人なのでしょう。何も決められずに、どうしよう、とうろたえるだけの人はだめです。
流動性が低いので中型株、小型株は保有しない
――反転の流れはどのようにつかめばいいのでしょうか。
私は日本株だったら、騰落レシオと52週の高値と安値を見ます。
騰落レシオは市場の過熱感を見る指標で、値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割ってパーセントで表示します。
120%が過熱気味、70%以下は底値が近いと言われていて、5日間の短期間で見る5日騰落レシオと、25日間の中期的な期間で見る25日騰落レシオがよく使われると思います。
52週高値安値は要するに1年間の最高値と最安値です。こうした指標をもとに、そろそろ底を打つのか、まだまだ下がり続けるのかを自分なりに判断するのが大切ですね。
こうした指標に加えて、マーケットが反転するとき、最初に反応するのは何なのか、ということを知っているか知らないかの違いも大きいでしょう。
――『マーケットが反転するとき、最初に反応する』とは例えばどのようなものがありますか。
日本株だったら絶対に大型株から買われ始めるんです。それは、世界中の投資家が、日本の株が安いな、と思ったときに何から買い始めるのか、という話なんです。
それで最初に買われ始めるのはトヨタ自動車やソニーなどの大型株なんです。
そして買いだけでなく売却も重要です。
私は常に出口を意識していますが、売却したいと考えた時に手っ取り早く売れるのは何かといえば、やはり流動性が高い銘柄です。そして中型株、小型株と呼ばれるものは大型株と比較して流動性が低い。
だから、私は中型株、小型株と呼ばれるものは基本的に保有しません。
売りたいときに売れるというのは非常に大事なことです。それが利確であっても損切りであっても。
1日あたりの取引が5,000株なのか100万株なのか、その取引高によって結果は大きく変わりえます。
余裕資金を使い、決して無理をしない
――投資で資産を増やしていくにはどうしたらいいのでしょう。
やはり、しっかり出口を考えておくということですね。特に、思い通りに上がっていかなかったときに、どうするかということを決めておかなければならない。
何があっても死ぬまで持ち続けるというのであれば、それも出口の1つですが、どこかで売ろうと思っているのなら、なにがどうなったら売るのかを事前に考えておかないといけない。
それを考えていないから、盲目的に塩漬けにしてしまったり狼狽売りしてしまったりするのです。
自分がどこまでロスに耐えられるかを知っておくことも大切です。
あとは、よく言われますけど余裕資金でやること。なくなってもいいお金とまでは言いませんが、放っておいてもいいお金でやることですね。当たり前のことですが。
――無理をして資金を突っ込む人も多いですね。
失敗する人は、基本的なルールや自分で決めたことを守れない人が多いと思います。
例えば、2022年だとリチウムイオン電池用セパレーターの専業メーカ―、ダブル・スコープの暴落が騒動になりました。
参考:ダブル・スコープ急落でネット上は大混乱 「韓国子会社の公募価格が予想を下回る」との報道
人気を集めて3,000円台まで上昇していたのに、突然3日間で半値近くまで下がってしまったのですが、信用取引をしていた個人投資家がかなりいたようです。
中には現物の株を担保にして信用取引をする「信用二階建て」までしていて、1千万円を超える損失を出したなんて声がSNSに上がっていました。
そこまでリスクを取る必要があったのかなぁと感じます。
――ロスに耐えられるかを知るというのは、損切りポイントを明確にするということでしょうか。
少し違います。
多少のロスを抱えていても、信じられるものがあればいいんです。逆に言うと、この銘柄のここが良い、これがすごい、という気持ちになれないものは持ってはいけないと思います。
たとえば、最近株価が上がってきた資生堂を例に挙げれば、資生堂はこれからインバウンド客が増えてきたら、きっと復活するはずだと、これもまた一つのストーリーですよ。
資生堂は、世界中の女性が憧れる化粧品のブランドだから、いずれ復活してくるだろうと。特にこれからは新興国の女性たちが買うようになるかもしれない、などというストーリーを描けて、それを信じられるのなら、買ったら良いと思う。
だけど、日本を訪れるインバウンド客が、思うように戻らないかもしれない、というのも一つのストーリーです。
こうした悪いほうのストーリーになっちゃったときに、どうするのかを決めておくことが必要です。
そうしたストーリーにどう対応するのかを考えずに、買ってはいけないということですね。
投資のスタートならつみたてNISAでも十分
――これから投資を始めたいという人にメッセージをお願いします。
できることをコツコツとやればいいと思います。あと、わからないことはやらない。よく分からないのに手を出すのが一番よくありません。
何を買えばいいのかよくわからないのであれば、本当にS&P500のインデックスをひたすら買い続ければいいと思います。
私が証券口座を開いた頃は、投資には結構コストがかかる時代でした。ですから、なかなか株を買ったりインデックスを買ったりできなかったんですが、今なら手軽に100円からでも始められる。
そういうことを月1,000円でも3,000円でもいいので、コツコツやればいいと思います。本当に今からスタートするのなら、すぐに儲けられるようになるとは考えずに、自分が理解できる範囲で始めてほしいと思います。
――NISAができたこともあって、つみたてNISAでひたすら米国株のインデックスを買っているという人もいます。
ほかに何をしたらいいのかわからないんだったら、それでいいと思います。難しいことを考えずにできるのが、つみたてNISAでインデックスを買い増していくという方法だと思うので。
私も最初は、さわかみファンドに10年ぐらい積み立てていましたから。投資のスタートとしてはつみたてNISAで十分だと思います。
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前回までのインタビューはこちら。
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