「マイニングの費用を日本円で支払い、日本国外の資産を蓄積することで資産を分散する」ビットコインマイナー弁護士・小峰氏 2/3

小峰 孝史氏に、日本居住者が海外でマイニングすることの魅力などについて伺いました。

小峰 孝史氏 プロフィール

米系法律事務所Sidley Austinの東京オフィス・香港オフィスに勤務、TMI総合法律事務所所属時に香港駐在。2018年より現職。主として日本の富裕層向けに香港やその他の海外の税制上のメリットを生かす投資スキーム作り・移住をサポートしている。
Twitter:https://twitter.com/tkomine921 会社:https://owl-investments.com/

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取材実施日

2023年4月21日

ビットコインのようなP2P通貨は、特に外国為替規制が存在する場所で非常に有用であるという事実を中国人はよく理解している

ーー以前は中国人のマイニングが活発だったと思うのですが、禁止された現在ではどうなっているのでしょうか。

現在でも、四川省などでは一部の人々がマイニングを続けているようですが、全体としてはその数は大きく減っています。

しかしながら、専用コンピューターASICを人民元で購入し、それを稼働させて人民元をビットコインに変換するスキーム自体は依然として有効な手段です。

そのため、中国の外、例えばロシアや中央アジア、ラオスなどで活動している中国人は多いです。

ビットコインのようなP2P通貨は、法定通貨が国境を越えるのが難しい場所、特に外国為替規制が存在する場所で非常に有用であるという事実を、中国人はよく理解しているのではないかと考えています。

なお、いまは中国の話をしましたが、実は日本も日本国内から海外に資産を移すというのはアンチマネーロンダリング(AML)の規制が存在するため意外と難しいです。

マイニングの費用を日本円で支払い、日本国外の資産を蓄積する

ーーどういうことでしょうか。

銀行が大量の現金を預ける際に身分証明書の提示を求める理由は、まさにこのAML規制が適用されるからであり、暗号資産取引所の利用や金の延べ棒を購入する場合なども、AML規制が存在します。

地政学的なリスクの上昇や金融、経済の不確実性が増す中で、自身の資産を日本国外にも分散させたいと考える投資家は少なくないと思いますが、そう簡単ではないんです。

中国人に限らず日本人においても、マイニングマシンの代金や稼働費用、電気代を日本円で支払うことで日本国外の資産を蓄積するというのは、資産の国外への分散を考えるうえではきわめて魅力的な手法の一つと言えるでしょう。

例えば、海外法人名義でマイニングマシンをシベリアで稼働させ、その海外法人のウォレットにビットコインを蓄積させる、ということももちろん可能です。

ある意味合法的にAML規制が適用されない範囲で国内の資産を無国籍な通貨に変換することができる

ーーマイニングは投資としての単純な利回りの追求にとどまらない魅力があるのだと理解しました。

マイニングマシンは基本的にはコンピュータと同様で、通常のコンピュータを購入する際に身分証明を求められることはありません。

ある意味合法的に、AML規制が適用されない範囲で国内の資産を無国籍な通貨に変換することができるのです。

中国人が外為規制がある国内でこの活動を行っていたという事実が、これを裏付けています。

ビットコインという中長期で見て高いリターンが期待できる商品への投資と、中国国内の資産を政府に関与されない無国籍な通貨へ変換するという二つの目標を同時に達成できるわけです。

中国人にとっては、一石二鳥と言えるでしょう。

ーー小峰さんにマイニングの管理を依頼している方は、日本居住の方が多いのでしょうか。

海外に住んでいる方や海外法人を持つ方が多く、日本人の場合でも海外法人を通じてマシンを所有しているケースが多いです。

なぜなら、日本国内で個人としてマイニングマシンを所有すると、その収益は雑所得として最大55%の税金が発生してしまうためです。

日本法人の場合、決算期ごとに含み益の簿価を洗い直さなければならず、実際には利益確定していなくてもその都度税金がかかってしまう問題があります。

これらの点から、海外法人を通じてマイニングマシンを所有している方が多くいらっしゃいます。

マイニングで得たビットコインの報酬は、無国籍で特定の地理に依存しないウォレットに蓄積されるため新興国からの資金の回収問題をクリアする

ーーマイニングを行う場所と運営する法人は別でも問題ないのですね。

全く問題ありません。

例えば、ロシア法人を運営するのは一苦労です。設立自体は可能ですが、その後の管理が大変だからです。

これはビットコインのマイニングのメリットにもなってくるため、詳しく説明します。

中国やロシアに限らず、発展途上国や新興国への投資は、資金を投入するのは容易ですが、資金の回収が難しいという問題があります。

投資を始めるときは現地の政府から歓迎されますが、利益が出てその資金を海外に持ち出そうとすると、外為規制などの理由で阻止されることが多いのです。

2000年代に中国に投資し、大量の資金を投入していた企業も、中国への投資開始時には熱烈に歓迎されました。

しかし、中国で利益を上げて日本に資金を持ち帰ろうとすると、さまざまな理由をつけられ、資金の持ち出しが困難になることが頻繁にあったのです。

しかし、ビットコインマイニングの場合は異なります。

マイニングマシン本体はロシアにあるかもしれませんが、マイニングで得たビットコインの報酬は、無国籍で特定の地理に依存しないウォレットに蓄積されるためです。

この特性はマイニングの一つの強みと言えます。

もちろん、マイニングマシン自体は現地で人質に取られているという見方はできますが、それを除けば、新興国投資の大きな課題の一つ、すなわち利益の海外への持ち出しの問題はクリアできているというのが私の見解です。

マイニングは製鉄所や石油コンビナートのような装置産業に似ている

ーー海外でマイニングを始めたい場合に、なにが一番大変なのでしょうか。

ロシアやラオスなど、法律や会計の情報が不透明な国も存在し、私自身も最初はロシアの弁護士や会計士と多くのディスカッションをしました。

そこはかなり大変と言えます。

しかし、一度適切な仕組みを作り、それがスムーズに運用に乗れば、比較的滞りなく進むビジネス、投資になります。

クリプトのウォッチャーの方々には、迅速な判断が求められるトレーディングを好む方々が多いのかもしれません。

しかし、私自身、クリプトを始める前から株式投資をしていましたが、反射神経を駆使するような取引は得意ではありませんでした。

株価が上昇し始めると、利益確定の思いに駆られ、株を売却した途端に価格がさらに上昇すると、非常に悔やまれるんですね。

そういったこともあり、私の性格には合わないと感じてしまいます。

ーーマイニングは違うのでしょうか。

マイニングは一度仕組みを作り上げるとその規模を拡大するだけでよく、これは所謂、製鉄所や石油コンビナートのような規模を拡大することで利益を出す装置産業と似ています。

マイニングも、マシンの調達経路や電力供給の仕組みなど、一度物理的な電気設備、変電設備、マシン、修理体制などのプランをすべて作り上げれば、その規模を徐々に大きくしていくことが可能です。

ビットコインの長期的な価格上昇の恩恵を受けつつ、チャートに一喜一憂しなくてもいいということで私の性格に向いているかなと思います。

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インタビューの3記事目では、ロシアやラオスでのマイニングにおける電気代事情などについて伺いました。

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