元ゴールドマン・サックスで株式会社pafin代表の斎藤 岳氏に、最近の暗号資産のマーケット動向などについて伺いました。
斎藤 岳氏 プロフィール
クリプタクト、defitact、フィンタクトを提供する、株式会社pafin(旧クリプタクト)代表取締役Co-CEO、JCBA税制検討部会長。12年間、ゴールドマン・サックスの自己勘定投資チーム及びヘッジファンド運用担当者として勤務。不良債権、プライベートエクイティ、不動産、法的整理、上場株、債券、為替、金利、CDS、デリバティブなど最大800億円のポートフォリオを運用。
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
取材実施日
2023年12月8日
暗号資産は価格は上がっているが人が少なくまだ閑散としている状態
ーー最近の暗号資産のマーケットについてどのように見ていますか。
価格は上がっていますが、マーケットの参加者は2022年の暴落前と比べるとまだ戻ってきていません。取引所の出来高も増えてはいますが、以前と比べるとまだ少ない印象です。
売る人がいないために価格が上がってるのではないかと思うほど、強く上昇する価格とは裏腹に市場は閑散としています。
ーー2024年春にはビットコインの半減期があります。4年周期を踏襲するのであれば2024年、2025年は強気相場を迎えるとの声もありますがいかがでしょうか。
ビットコインの歴史を見ても4年周期で繰り返されている印象があり私も意識してはいます。個人的には2024年下半期から盛り上がると予想していたので、半年ほど早まっている印象です。
出典:tradingview.com
ーーなぜ2024年下半期から盛り上がると予想されていたのでしょうか。
単純に2019年の動きと2023年の動きに相似性があったからですね。
前回のサイクルでは、2018年に価格が下落、2019年にマーケットの参加者数が減少し、2020年下期から価格が上がりました。
同様に、今回のサイクルも2022年に価格が下落、2023年にマーケットの参加者が減少、2022年は価格が暴落したため人が減り続け、2023年は閑散期となりました。
一般的に、暴落後の閑散期は売る人がいないので意外と価格は下がらず、むしろ上値が軽くなり上昇しやすい傾向にありますが、2023年夏の時点では出来高は2022年の半分程度でした。
それで2024年下半期からの上昇を見込んでいたのですが、想定より早く上がりましたね。
このまま冬の時代が終わりさらなる価格の上昇が見込め、マーケットの参加者も増えるでしょう。また、2024年はビットコインのETF承認や国内法人の税制改正など、ポジティブな要素が重なる年となりそうです。
暗号資産はファンダメンタルズが確立されていないからテクニカル、周期性に答えや法則性が求められがち
ーー他のマーケット、例えば株式でも同じようにサイクルはありますか。
どのマーケットにも一定のサイクルがありますが、より色濃く反映されやすいのは暗号資産の特徴だと思いますね。
4年周期は偶然の可能性も否定できませんが、強いて理由をあげるとすれば、暗号資産は他の資産と比較して見るべきポイントが定まっていない、ファンダメンタルズが確立されていないからというのはあると思います。
だからどうしてもテクニカル、周期性に答えや法則性を求めがちになってしまい、多くのマーケット参加者が周期性を意識することでよりそのような周期的な動きが強化されている、という側面があるのだと見ています。
ーー注視している指標や今後市場が盛り上がったときに注目したい指標があれば教えてください。
一つ目はビットコインのETF承認、二つ目はマクロデータです。
米国債10年利回りはいま時点で4%を超えていますが、利上げのピークが見えれば市場は先に織り込みに行くので、金利次第でお金の流れも変わるでしょう。
米国ドルで年利5%がもらえるならドルを買うという人も、2%、1%と低くなれば暗号資産に流れる人も少なくないと思います。そういう意味でマクロ環境や数値はよく見ています。
※編集者注:当該インタビューは2023年12月8日に実施。その後、2024年1月11日にビットコインの現物ETFはSECにて承認。
利下げ開始で同じリスク資産である株式は下落する傾向にあるが暗号資産は本当に上がるのか
ーー利下げによる暗号資産の上昇を予想する声は多いですが、マーケットは早期に価格に織り込みますし、同じリスク資産である株式は利下げが開始すると逆に価格が下落した事例もあります。トータルでは利下げは本当にプラスになるのでしょうか。
利下げが始まるということは利下げが必要な程度に景気が後退しているということで、その意味で株価にとって必ずしもプラスに働くとは言えず、利下げのタイミングで株価が下落することもあるというのはそういうことだと思います。
それで暗号資産の場合ですが、企業の決算や景気動向がマーケットに直接影響を与えることはありませんので、金融政策の影響のみと考えれば利下げはポジティブに効くと考えています。
ーー利下げ以外で注目している指標やイベントがあれば教えてください。
金やビットコインは紛争リスクから回避できる可能性が高いコモディティであり、決して歓迎する訳ではありませんが、紛争リスクが広がれば広がるほど、他の資産と比較して安全資産だと見られる可能性は高いでしょう。
ーー不確実性が高まったリスクオフ時はリスク資産は売られドルに資金が集まるとも言われていますが、紛争リスクでビットコインに資金が集まる可能性はあるのでしょうか。
おっしゃるとおり、一般的にリスクオフの際は金やビットコインに限らずどの資産も売られる傾向にありますが、国家や法定通貨のリスクから回避する局面では金やビットコインに退避する可能性は高いと見ています。
エクスポージャーをとりすぎず長期で保有できる投資家ほど利益を最大化できている印象
ーー暗号資産の投資に向いている人、向いていない人の特徴があれば教えてください。
暗号資産のような価格のボラティリティが大きいアセットの場合、つい短期売買しがちですが、長期で保有できる投資家ほど利益を最大化できている印象です。
逆に、暗号資産への投資に向いていない人は、リスク量のコントロールが苦手な人です。
ブル相場が終わったように見えてそこからまだ強く価格が上がり続けるというのは暗号資産に限らずよくありますが、そのような強く長く続く相場でじっと保有し続けられるリスク量であること、そのようにコントロールできることが大事だと思います。
エクスポージャーをとりすぎると日々の動きに振り回されてしまい、短期的な上昇、下落で売買しがちです。「ちょっと少なかったかも」と思える程度のポジション、エクスポージャーがちょうどいいと思います。
ーーーーー
斎藤 岳氏の全2回のインタビュー、前編はこちら
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです