「ビットコインのETF承認に伴う機関投資家による買いは売りに回りづらい一方的な買い圧になる」pafin・斎藤 岳氏 前編

元ゴールドマン・サックスで株式会社pafin代表の斎藤 岳氏に、今後の米国株式の動向などについて伺いました。

斎藤 岳氏 プロフィール

クリプタクト、defitact、フィンタクトを提供する、株式会社pafin(旧クリプタクト)代表取締役Co-CEO、JCBA税制検討部会長。12年間、ゴールドマン・サックスの自己勘定投資チーム及びヘッジファンド運用担当者として勤務。不良債権、プライベートエクイティ、不動産、法的整理、上場株、債券、為替、金利、CDS、デリバティブなど最大800億円のポートフォリオを運用。

取材実施日

2023年12月8日

株式投資家の暗号資産への投資が増えていないのはなぜか

ーー斎藤さんは株式の投資家の方々とも繋がりがあると思いますが、そのような投資家のビットコインや暗号資産への投資は増えていますか。

ビットコインや暗号資産の投資家が株式やFXの取引も始めるというのはあるのですが、株式の投資家がビットコインや暗号資産を触り始める動きはまだ見られません。

私はビットコインをデジタル上のコモディティだと思っていますが、株式の投資家がビットコインを取引しない主な理由はそのような認識がまだ進んでいないからでしょう。

株式の場合、その企業の残余財産や利益の分配権がそのまま発行されている株式と紐づきます。つまり裏付け資産が明確なのが株式であり、だからこそそのような評価方法に慣れている株式の投資家にはビットコインの価値がわかりづらい、評価しづらいのだと思います。

同時に、株式の投資家の大半はドルや円などの法定通貨が裏付けがある資産だと思っていますがそれは大きな間違いです。

日本円にはなぜ価値があるのか

ーー詳しく教えてください。

日本人が日本円を保有しているのは国が納税に関して円を指定しているから、日々の決済で日本円での決済を求められるからですが、つまり国は日本円に対して決済手段として利用できるということしか保証していません。

もっというと、1971年のニクソンショックで金本位制が廃止されて以降、どの国も法定通貨の価値を保証していません。

そう考えればビットコインにせよ日本円にせよ、その価値を誰も保証していないという点に違いはありませんが、多くの人々は日本円の価値は国が保証していると思い込んでしまっています。

ーー金と兌換されず裏付けがない中でもマーケットで日本円が取引されているのは日本円に一定の価値があるとされているからですが、どのような価値が挙げられますか。

二つ挙げます。

一つ目は、日本の経済、つまり円で決済できる経済規模がとても大きいことです。

日本のGDPは2023年にドイツに抜かれましたが、それでも世界第4位であり、この経済規模が円の価値を支えています。要するに円で購入できるモノやサービスが豊富にあるということ、そのものが円の価値でもあります。

二つ目は、円はドルやユーロなどほかの通貨にすぐに、簡単に交換できることです。流動性が潤沢にあるので円を持っていても困らない、何かあってもほかの法定通貨に換えられる利便性があります。

決済ボリュームと流動性、この二点が大きいほど通貨の価値は上がりますし、これが法定通貨の本源的な価値だと思います。

先ほど、ビットコインと法定通貨の本質的価値に差はないという話をしましたが、経済規模については大きな違いがあります。

ビットコインの流動性がほかの主要な法定通貨と同等程度になり、ビットコインで決済できる経済圏がいま以上に拡大すれば、法定通貨と同じ、もしくはそれに準じた位置付けになるでしょう。

ETF承認に伴う機関投資家による買いは売りに回りづらい一方的な買い圧になる

ーービットコインのETFが承認されると機関投資家の参入が見込めますが、機関投資家はビットコインをどのように認識しているのでしょうか。ゴールドや原油と同じコモディティの枠で見るのでしょうか。

機関投資家のタイプにもよりますが、金などのコモディティの枠にビットコインが加わるのだと思います。それが全体の3%なのか、5%なのかはわかりませんが、一部であったとしても絶対額が大きいので価格に大きな影響を及ぼすでしょう。

また、そのような機関投資家はポートフォリオ全体のアロケーションのためにビットコインへ投資するわけで、価格が上がるから買う、上がったから売るという個人投資家の取引とは根本的に異なります。

つまり一方的な買い圧力になり得るということで、ビットコインの価格にとっては非常にポジティブです。

ーー2024年、2025年のビットコインや暗号資産のマーケットについてポジティブに見ていると思いますが、あえてネガティブな要因を挙げるとしたらなにがありますか。

ETFの承認、米国の利下げ、ともに実現しなかった場合でしょうか。

インフレ率が下がらないまたは上昇に転じれば金利は高止まりするはずで、そうなれば暗号資産への資金流入も期待できません。

また、いま時点でビットコインの価格はすでにETFの承認を織り込んでいると思いますが、ETF承認は過去に何回も見送られてきており、もし今回も見送られれば価格にはネガティブに作用するでしょう。

米国の景気については暗号資産のマーケットにはあまり関係ないと思っているので私は気にしていません。

※編集者注:当該インタビューは2023年12月8日に実施。その後、2024年1月11日にビットコインの現物ETFはSECにて承認

米国株は短期ではネガティブな見立てだが長期での積み立て対象としては外せない

ーー米国株についてはどのように見ていますか。
まず、2024年前半での利下げを挙げる声が多いですが、私はこのまま金利が高止まりし、景気を後退させるリスクは一定程度あると思っており、この場合は株式市場にとってはネガティブになると見ています。

ーー今、日本で米国株S&P500への積立投資がブームとなっていることについてはいかがでしょうか。

2024年という短期のスコープであれば、先ほどの説明のとおり景気交代や金利の動向によりネガティブにも見えますが、もっと長期を視野にした積み立てであれば私は悪くないと思いますね。

米国に対する期待が高すぎるという声もありますが、米国はこれまでも大きな景気の波に乗って成長を続け、現在も先進国で唯一、経済成長を続けている国で底力があります。むしろ、長期で投資をするなら米国は欠かせません。

結局、米国の金利がここまで高止まりしている理由は、景気が良くて賃金や株価も上がっているから、つまり金利が高くても経済が伸びているからです。

強いインフレへの対策として金利が引き上げられている点は短期での経済においてネガティブではありますが、金利を引き上げられているということはそれだけ将来における金融政策的な持ち手が増えているということでもあるんです。

一方、日本は金利を引き上げられていないため、今後、より景気が悪化したとしても打つ手がありません。

日本と比較しても米国の株価は下がりにくいですし、今後、米国は景気後退により企業の決算が落ち込む局面が訪れたとしても、金利を大胆に下げて、景気を活性化させる手が打てます。

このような状況を考慮すると、米国株式市場に投資することは間違いだとは思いません。

ーーそのほか、注目しているトピックがあれば教えてください。

日本に限った話ですが、2024年に法人税の税制改正がされる可能性があると報道されています。

報道通りになれば、市場にとってポジティブな材料が一つ増えると思います。

ETF承認の件も含めてですが、一つひとつの要素のインパクトというより、ポジティブな要素が集まることで、流れが来ていると見なされるのだと思います。結果的に、市場にもポジティブに働くと思っています。

※編集者注:当該インタビューは2023年12月8日に実施。その後、発行者以外の第三者が保有する法人所有の暗号資産について、一定の条件を満たすことで、期末時価評価課税の対象外とする見直しを行うことについて12月22日に閣議決定。

参考:Web3ビジネスのターニングポイントに──第三者保有の税制改正で「日本にベーシックな環境整った」:JCBA | CoinDesk JAPAN

ーー最後に、読者にメッセージがあればお願いします。

最近のマーケットの盛り上がりに伴い、弊社提供の『クリプタクト』の新規の利用者数も増加傾向にあります。

Burry Market Researchの読者には積極的にオンチェーン取引を行う方々も少なくないと思いますので、ぜひご利用いただければと思います。

ーー暗号資産の取引計算ツールは『クリプタクト』以外にもいくつかありますが、注目機能などがあれば教えてください。

クリプタクト』にはオンチェーン上の過去の取引履歴から入出金を自動で識別する機能がありますが、単に入出金を自動で読み込めるだけでなく、読み込み後に自動識別まで可能で、この機能は『クリプタクト』だけと自負しています。

2024年は暗号資産のマーケットも引き続き盛り上がりが予想されますし、弊社としてもより多くの方に利用いただけるよう、機能強化を行っていきたいと考えています。

ぜひご利用ください。

参考:仮想通貨の損益計算・確定申告ツールならクリプタクト
参考:defitact — Web3の家計簿
参考:フィンタクト|投資判断をサポートする金融情報プラットフォーム

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斎藤 岳氏の全2回のインタビュー、後編に続きます

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