暗号資産のトレーダーとして活動するタキオン氏に、損切りのコツや不確実性にどのように対処しているか、トレードに向いている人について伺いました。
インタビュー・編集・執筆:内田 誠也
タキオン氏 プロフィール
クリプトトレーダー、BTC短期から長期まで幅広く株も商品もボラさえあればなんでも触る。最近はNFT多め。本業はWeb系のプロダクトマネージャー。
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取材実施日
2023年3月13日
自分の感情と値動きは関係ない
ーートレーダーや投資家に向いている人はどういう人だと考えていますか。
大衆と全く同じ動きをしていると大衆と同じ結果にしかならないので、そういう人は向いていないと思います。
みんながこうだから自分もこういう取引をする、ではなくて、自分で考えて自分の意見を貫徹できる人が向いていると思いますね。
トレードをやっていると含み益や含み損でいろんな自分の感情が絡んできますが、自分の感情と値動きは関係ないんです。
あくまで、市場は市場の原理で動いてるだけであり、そういうメンタルに左右されない、自分の考えでトレードできる人の方が向いています。
かといって、自分のトレード理論にこだわりすぎるとそれはそれで頭でっかちになるので駄目なんですが。
ーーそのほかにトレーダーに向いている人の特徴はありますか。
試行錯誤できる人ですね。
どうして良い結果が得られたのか、悪い結果になったのかを考えて改善を続けられるひとが、どういうトレード手法であれ、トレードに向いていると思います。
ーータキオンさんもご自身のトレードは振り返りしていますか。
昔はトレードノートをつけていましたが、いまはそれをやらないと駄目になるというほどではなくなってきたので、もう卒業しましたね。
よくない事象に対処できる準備をしておく、何が起きてもおかしくないという前提で取引、資金管理するしかない
ーー不確実性にどのように準備や対処をしているのでしょうか。
この手の話題で挙がるのがFTXだと思いますが、FTX破綻も予想できた人は多分いなくて、古参で巻き込まれた人もいらっしゃいますよね。
だから前提として予測はできないんですね。
いかに予測するかというよりは、よくない事象が起きたときに対処できる準備をしておく、もしくは何が起きてもおかしくないという前提で取引、資金管理するしかないと考えています。
FTXの話も結局やれたことは取引所を分散しておくとか、そういう初歩的なことだったと思います。
ーーFTXのときは巻き込まれたのでしょうか。
少額入れていたのですが、出金が間に合いましたね。
グローバルの時はステーキングでまとまった資金をいれていたのですが、日本でグローバルの取引所が使えなくなったタイミングで資金のほとんどを抜いていて、FTX JAPANが展開されてからもあまり資金を入れていませんでした。
たまたま少額しか資金を入れておらず、出金も間に合った。事前に危機を予知して使っていなかったとか、そういうことではないです。
本当にたまたまで運がよかっただけです。
ビットコインやイーサリアム以外の取引
ーー長期ではビットコインやイーサリアムを保有されているということでしたが、相場が盛り上がったタイミングではDeFiやアルトコインなども取引しているのでしょうか。
取引していますね。最近(編集者注:2023年3月)は相場がたいしたことないのでやっていませんが。
いわゆる草コインと呼ばれるようなアルトも触りますし、NFTも触っていました。
ーーそれは短期売買でしょうか。
完全に短期ですね。
ーー短期ではチャートやファンダなどどういったところを見て取引しているのでしょうか。
私の場合は、相場が盛り上がって出来高が増えたら短期で取れるチャンスがあると考えているので、上がりかかって出来高も増えてきたら、単純に追いかけるというやり方をしています。
昔は盛り上がるコインを血眼のように探していた時期もあったのですが、情報を追いきれないのでやめました。
盛り上がってきた後に、2波目で大盛り上がりすることがあって、それを取っていますね。
最近ではないですが、ソラナが上がってきたときが典型でしたね。ソラナが100ドルまで上がったとき、20ドル、30ドルあたりから、ガンガントレードしてました。
ーーイールドファーミングやステーキングなども取り組まれていますか。
やっていますね。それこそ、いつなくなってもおかしくないものだと考えているので、大金は入れませんでしたが。
基本的に、そういう流行っぽいものが出てきたらとりあえずは試しています。置いていかれないようにという意味合いで。
自分が破産するレバレッジ、勝率で取引してないかを確認すべき
ーー熱くなって損失を重ねてしまう、損切りが苦手、コツコツドカンしてしまう、といったトレーダーのよくある悩みについて、どのように対処すればいいのでしょうか。
コツコツドカンは単純にハイレバが原因であることが多い印象です。
バルサラの破産確率という、レバレッジと勝率と損益率を設定すると、何回トレードするとどれくらいの確率で破産するかを算出してくれるツールがあります。
多くのトレーダーは、まず自分が破産するレバレッジ、勝率で取引してないかを見た方がいいです。
例えば、レバ25倍の場合、勝率55%はないとトレードを続けていくと破産する計算だったと思います。
参考:バルサラの破産確率の使い方・計算方法・応用方法を徹底解説してみた
どれだけすごいトレーダーでも勝率は6割強ぐらいなので、レバ25倍というのはかなり破産リスクが高い。無理なレバレッジをかけていないか一度確認すべきです。
私も昔、HATさんがやっていたのを参考にしてました。
ーータキオンさんもコツコツドカンをしてしまう時期があったのでしょうか。
ありましたね。むしろ、やらかしてたからこそ、これを取り入れました。
ーー長い時期でしょうか。
長い時期というか、2018年辺りに多かった記憶がありますね。急落が多かったからかな。
ロングを損切りするときにドカン気味で、それを矯正しようとしていました。
事前に決めた損切ラインを動かさない
ーー損切りはどうやったら上手くなるのでしょうか。
損切りラインを自分ではっきり決めることですね。ただし、なんとなくではなく、根拠を持って決めること、事前に決めた損切ラインを動かさないことが重要です。
損切りラインを動かし始めると収拾がつかなくなるので絶対やってはいけないと思います。
ーー損失を出した後に取り戻そうと熱くなってしまうことの対策はありますか。
3連敗したらその日はトレードしないとか、自分でルールを決めた方がいいですね。
2、3回連続で負けたらその日は取引やめる、スマホやパソコンを切る、などスパっとやめるのがいいと思います。
相場が最初に盛り上がるときはビットコインから
ーー次に暗号資産の相場が盛り上がったときに向けて、考えている取引の戦略があれば教えてください。
元々、コロナショックを契機として金融緩和して始まった相場なので、一旦これがリセットされるまではしょうがないと捉えていて、とにかくアメリカの金利の上昇が止まるまで、もしくは見通しがはっきりと立つまでは我慢と考えています。
今年はもう1段の下げはないかもしれませんが、そういった下げが起きることも覚悟はしています。
とはいえ、相場の調整も進んでいて、2024年にビットコインの半減期もあり、徐々に仕込みの時期と考えています。
ここで大事なのは、相場が最初に盛り上がるときは、ビットコインからなんですね。
なので、まずはビットコインから集めておくことを考えていて、いまは変に草コインは触らないようにしています。
前回の半減期より半減期効果は小さくなる
ーービットコインの半減期の話題が出ましたが、4年周期で2024年から再度ビットコインが上がると言われつつ、その説を言っている人が多すぎて逆に上がらないのでは、という話もあります。タキオンさんはどのように見ていますか。
半減期は、その都度発行が半分になっていくので、回を重ねるごとに、半減期の絶対的な効果は減っているのではと考えています。
なので前回の半減期より半減期効果は小さくなると考えていて、大きな盛り上がりは期待していません。
デジタルな無国籍通貨となればビットコイン以外に代替するものがない
ーートレーダーやbotterの方には、ボラさえあればよくてクリプト自体には何の興味もない、という方もいらっしゃいますが、タキオンさんはクリプト自体をどう見ているのでしょうか。
確かに短期トレードの観点ではボラさえあればと考えていますが、私は元々現物から入っています。
このインタビューでゴールドが好きという話をしましたが、無国籍通貨というビットコインの思想はゴールドをデジタル化しているようなもので、それに惹かれて暗号資産に入ってきている部分があるんですね。
国内の暗号資産の企業で副業していたこともありますし、ファンダも漁っており、取引対象だけでなく暗号資産自体にも興味があります。
ーービットコインの魅力は、2100万枚の供給制限や海外送金の便利さなど多様ですが、タキオンさんとしては無国籍通貨である点に一番魅力を感じているということでしょうか。
そうですね。デジタルな無国籍通貨となればビットコイン以外に代替するものがないと考えています。
最近のウクライナ戦争やロシアがSWIFTから除外されたことなどを考えると、ビットコインの存在感がより増すだろうと見ています。
NFTはSTEPNのようなキラーコンテンツが出てくればさらに発展する
ーーいま、クリプトの中で注目しているプロジェクトや領域などはありますか。
ユニスワップなどが一定使われ始めたということを踏まえて、DeFiはもっとメジャーになると見ています。特にdYdXは期待しています。
ーーNFTについてはどうでしょうか。
一旦流行して、いま減滅期を迎えたと思っているので、これから本質的なものの芽が出るかもと見ています。
トレードというよりも社会実装されることの方を気にしていて、既存の企業から既存のIPを使ってうまくやるところがでないかな、と考えていますね。
いまのNFTはいわゆるWeb2と比較するとクオリティが非常に低く、またブレークスルーしないとは見ているものの、どこかでSTEPNのようなキラーコンテンツが出てきてさらに発展するだろうと見ています。
コンテンツ次第ですかね。
今後の活動について
ーークリプトの様々な領域にお詳しいですが、クリプトやいわゆるWeb3的な領域への転職などは考えていないのでしょうか。
暗号資産界隈での転職先もいい機会がないか探していますし、起業も考えていますが、いまのところ種はまだ見つかっていません。
自分の力が活かせるポジションであれば転職してもいいとはずっと考えています。
もしこの記事を読んでご興味いただいた方がいればお気軽にご連絡いただければと思います。
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