「儲け話に見えるものが実はリスクの裏返しであることを忘れてはいけない」クリプトトレーダー・タキオン氏 1/3

暗号資産のトレーダーとして活動するタキオン氏に、印象的な取引やトレーダーとして注意すべきことについて伺いました。

インタビュー・編集・執筆:内田 誠也

タキオン氏 プロフィール

クリプトトレーダー、BTC短期から長期まで幅広く株も商品もボラさえあればなんでも触る。最近はNFT多め。本業はWeb系のプロダクトマネージャー。

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取材実施日

2023年3月13日

cisさんのモナコイン煽りでリターンを出す

ーー印象的な成功した取引、失敗した取引について教えてください。

2017年にモナコインの価格が500円まで市況感に乗って上がったのですが、さらにcisさんがモナコインを買って煽るということがあったんですね。

参考:cisさん「ネタでモナコインを1000万買ってみました」←急騰

それが燃料になって、2,000円まで価格が上昇したことがありました。

そのとき、勢い余ってもっと上がるかもしれないとも思いつつ、ここが限界かもと念のために1,500円で利確したんですね。

300円から500円で買い集めたのでリターンもよかったのですが、欲を出しすぎずうまく利確できたのでよかったなと思っています。

▼2017年10-12月のMONA/JPYのチャート。12月に大きく上昇している。

ーータキオンさんが、モナコインを300円で買い集めていたのはどういった理由でしょうか。

モナコインはライトコインコピーで、ビットコイン系統のコインが上がるという噂に乗っかっていたのと、モナコインは国産コインなので日本人がたくさん買って上がりそう、そのあたりに期待していて買い集めていました。

ーーcisさんが煽っていたのはある意味予想が当たっていたということでしょうか。

cisさんの煽りがなくても上がったと思いますが、最後にそれが追い風になったというのはあると思います。

ーー当時、なぜcisさんは煽っていたのでしょうか。

当時、日本人の中ではリップルとモナコインのホルダーが多かったんですね。なので、Zaifのチャットとかで煽れば買う人がいるだろうと考えたのだと思います。

正直、これはいまでもよくわかっていません。

コロナ対応の金融緩和を見てビットコインを買う

ーーモナコイン以外でも印象的な取引はありますか。

2020年6月ごろに8,000から9,000ドルで停滞していたときに現物のビットコインを買い集めたのですが、2022年に7万ドル付近で売却することができ、値幅もとれてよかったですね。

現物だけでなくレバの取引も1万5,000ドルを超えてから1万6,000、7,000ドルあたりも取れました。

▼2020 – 2022年のBTC/USDのチャート。赤丸部分がタキオン氏が現物のビットコインを買い集めた時期。

ーーなぜその取引ができたのですか。

コロナ対応の金融緩和で資金が市場にジャブジャブと流れてきて、株は盛り上がってるけど当時ビットコインはまだ反応しておらず、上がり遅れていると見ていました。

その遅れを取るという単純に株の後追いで買っただけですが、それがうまくはまったのは、長く相場を見ていたからかなと思っています。

メンタルが崩壊するレベルの資金をZAIFトークンに入れて失敗

ーー失敗した取引についても教えてください。

2017年8月にZAIFトークンに飛びついた取引ですね。

当時の余剰資金のうち、それがなくなったらメンタルが崩壊するレベルの資金をZAIFトークンに入れましたが、その後暴落して、投下資金は十分の一になってしまいました。

▼2017年8月のZAIF/JPYのチャート。8月26日ごろに大きな髭をつけている。

ある特定の銘柄に投資余力分だけ買って、かつ、ボラが高く比較的リスクの高い商品を一点張りしてしまったという、本当に初心者中の初心者の間違いです。

メンタルも強いほうではないので、狼狽トレードしてしまいだいぶ失ってしまった。

非常に大きな失敗でしたね。これが成功のもとでもあり、ある意味原点になっている失敗でもありますが。

失敗を活かして損切りのルールを設定

ーーその後のトレードに失敗から得たものが反映されたのでしょうか。

これをきっかけに、損切りラインを決めること、損切りした後に雑にドテンしないことをルール化しました。

例えば、ロングで30%損切りした後にドテンでショートして更に30%損切りすると、資金は約50%になります。その損失を取り戻すためには資金を2倍にしなくてはいけない。

メンタル的にも熱くなりやすいですし、損切り後のドテンは大きく資金を減らしやすいんです。

ーーそのルールは守れているのでしょうか。

損切りラインは守れています。

ドテンについては、当初は頭でわかっていても徹底するのが難しく、頭がカッとなったときに何度かやらかしました。そして、だいたいどの取引も失敗しています。

最近はトレード自体に淡泊になったからか、そういうトレードはしなくなりましたね。全体的に、昔に比べて熱くならなくなりました。

損切りラインはテクニカルを見て設定

ーートレード自体に淡白になった、熱くならなくなったのは取引歴が長くなったからでしょうか。

それもありますし、余剰資金をロックしていることも大きいと思います。

最悪、その資金がなくなってもいいと考えながらトレードするのと、全財産を博打しているのでは熱くなり具合が違いますよね。

余剰資金を決めて最悪なくなってもいい、ぐらいの気持ちでやっていて、本業のかたわらであくまで副業的にやっているだけ、と考えられるとメンタルが全然変わってきます。

ーー例えとして、30%の損切りを2回すると半分になる、というお話がありましたが、損切ラインはどれくらいに設定しているのでしょうか。

私はパーセンテージでは設定していません。あくまでテクニカルで判断します。

直近の安値でギリギリで取るとひげでカットされたりするので、そこから多少マージンを取って、みたいなやり方が多いです。

本当に長期で持っているポジションについては全く損切りしません。

株や金の現物とクリプトを1:1で保有

ーークリプトとそれ以外の資産の割合について教えてください。

株や金の現物などが1、クリプト1、現金少しです。

株は個別株も投信も持っていますね。REITも持っています。

ーー個別株は日本株も持っているのでしょうか。

日本株も持っていますね。

グロースで買いの条件に引っかかった銘柄、株主優待目的の銘柄、貯金の感覚で持っている銘柄、大化けしそうで長い時間軸で持っている銘柄、などいくつかだけ持っています。

金融、ベンチャーなど個人的に業界研究的によく知っていて、まだみんなに知られていないだろうと考えて持っているものですね。

自分以外は全員詐欺師と思い、詐欺、闇落ちに注意する

ーークリプトの投資やトレードについて気をつけた方がいいことや注意すべきことを教えてください。

誰も信用しない、ということですね。自分以外は全員詐欺師と思わないと、足をすくわれます。

トレードがいくら上手くても、いくら時流に乗って儲かったとしても、詐欺に引っかかったり、goxしたり、闇落ちしてしまったら終わりなんですね。

特に闇落ちは後で取り返しがつかないことになることもある。

そういう犯罪に巻き込まれないことが大事です。

2018年が顕著ですが、儲かっていると、おだてられて良い話がいっぱい来るんですね。詐欺まがいというか、法律すれすれ、もしくはアウトな話がたくさん来ます。

そういう欲求に負けない心を持っていないと、トレードで買ってもトレード外で負けてしまいますので注意した方がいいです。

ーーそういった話はDMで来るのでしょうか。

DMでも来ますし、オフ会も詐欺の巣窟です。

難しいのは、私にコンタクトをとっている人が必ずしも悪意を持っているとは限らないということです。

その人自身は本当によかれと思ってやっている可能性が高くて、その人のバックに黒い人がいることがあるんですね。なので、判断、避けるのが難しい。

そういう、怖いなと思う経験は何十回とありました。

相場が低迷しているからか、最近はそういった話は減ってきましたけどね。 

詐欺と儲け話の境界は曖昧

ーー参加したオフ会がそういう感じだった、ということがあったのでしょうか。

オフ会自体が危ないというわけではないんですね。詐欺を働いてる人たちも別に会っても怖くはないんですよ。むしろ優しいです。

近寄ったとしてもよほどのことがない限り何も起きないのですが、そこから儲け話に乗ると詐欺の片棒を担がされることがある。

実際、相場が低迷してお金に困ったときにそういうところに手を染めた人を何人も見ています。

普通の人が考えている以上に詐欺と儲け話の境界は曖昧で、ぱっと見で詐欺だとはわからない。少しでも怪しいと思うのであれば、手を引いた方が安全です。

本当に誰がどこまでどうだったか、というのは私もわかりません。ただ、2018年にひやひやする思いをしたので、危ない話には手を突っ込まないようにしているということです。

儲け話に見えるものが実はリスクの裏返しであることを忘れてはいけない

ーー「信用しない」というのはどの程度の範囲で「信用しない」のでしょうか。

全部ですね。取引所も知人も全て。

誰がなんと言おうと、取引所であろうと知人だろうと信用しないことが大事です。FTXが破綻して補償されないのを見てもその通りです。

とにかく、投資は自分でしか責任が取れないので、誰かが救済してくれるとかそういう甘い考えは通用しません。

いろんな甘いことや楽しいことを言ってくる人が多いですし、レンディング事業者も安全性がどうとか、貸し出し利率が何%とかアピールしてきますが、それが何を意味しているか考えなければいけません。

儲け話に見えるものが実はリスクの裏返しであることを忘れてはいけないと思います。

リスクが高いから金利が高い、というのが金融の原則なのに、金利が高いことはいい儲け話であると解釈する人たちが一定いますが、そういう発想自体がよくないです。

人の意見や感想、事業者の説明をそのまま鵜呑みにするのでなく、自分の頭で考えて、どうしてその利率が生まれるのか、どういう仕組みなのか、ということを理解した上で買うべき、預けるべきだと考えています。

その上で騙されてもいいから一部の資金を入れてみよう、というのは私は賛成です。そうでなければ、クリプトは面白い儲けには乗れないので。

STEPNもそうですよね。あんなに儲かるとは誰も考えていなかったと思います。

ちゃんとリスクを限定して、どういうリスクがあるかを理解してからやるべきでしょうね。

ーーどのタイミングでそういった境地に至ったのでしょうか。

2019年が終わった後にもう一度相場が低迷しますが、そのあたりには大体いまの考えに固まってきていました。

商材もそうで、私もフォロワー数が一定いるので、人の弱みにつけこめば、ある程度そこで儲けることもできるんだろうなとは思いますが、やりたいとは思わないですね。

私は商材を売ることも否定しないし、自分でもよく買うのですが、最近自分でもやらなくなったのは、そういうことをすると、そういう人が寄ってきてそれが嫌だから、というのがあります。

それは本当に哲学やこだわりに近い話で、合理性はないのですが。

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インタビューの2記事目では、トレードをはじめたきっかけや過去の相場での取引について伺います。

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