「FXは大口投資家が作る流れに乗るのが大切」元外資系証券トレーダー 2/3

元外資系証券会社トレーダーで、現在はFXトレードなどを行っているK氏。世界各国が利上げを始めるなか、異次元の金融緩和からの出口が見えない日本は、現在、非常に厳しい経済環境に置かれているという。そんな中、株や為替、仮想通貨などの取り引きについてどう考えるべきなのか、K氏に現状や今後の展望について聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

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仮想通貨は投資対象として落ち着いていく

――株や為替、債券の取り引きの違いについては、どう考えていますか。
株から話すと、基本的に株と国債の市場は本来、逆の動きをするんです。リスクオンのアセットが株で、リスクオフのアセットが債券です。

だから、リスクが高い相場だと思えば、国債を持っていて、リスクを取れそうだと判断すれば、国債を売って株を買う。一方、株式市場が荒れそうだと判断すれば、株を手放して国債を持っておくという感じで資産を運用するのが一般的です。実際の相場の動きもそうなることが多く(最近は必ずしもそうではないですが)、株が上がれば債券は下がるし、株が下がれば債券は上がります。

だから、リスクを取りたい人は株取引を考えるといいし、リスクを取らずに資産を運用したい人は国債などの債券を買うといい。私は仕事で債券を扱ってきましたが、マーケットが全然違うというのが印象です。債券はファンダメンタルズによって市場が左右されることが多く、国あるいは世界全体の大きな動きを見ていかなければならない。

一方で、株はファンダメンタルズや業績などとは関係ないことで、値が動くことがある。友達のトレーダーから聞いたのでは、ある会社の株が一気に値を下げたので、何事かと理由を調べてみたら、社長が社員にセクハラをしていたことが分かったという話がありました。株はそうした予期せぬ個別事象で暴落する可能性がある。そういう点で、株は少し怖い。

ただ、少ない元手から資産を増やそうと思えば、国債は利率が低く難しいので、株を選ぶことになるのだと思います。

仮想通貨については、今、一旦は落ち着いていますよね。ビットコインも2万ドル付近で推移しています。今後も、落ち込んでいく場面もあるのでしょうが、基本的には市場として、どんどん拡大していくのだろうと見ています。

――なぜ仮想通貨の市場はもっと拡大していくと思いますか。

ロシアとウクライナの紛争もあって世界情勢が不安定になり、物価高騰から考えても通貨に対する信用が下がっています。いま、円安ドル高の傾向にはありますが、通貨への信用は全体的に下がってると思います。そうなると、多くの人が、お金を避難させるために投資を考えるようになります。その投資対象として、仮想通貨は十分認められるようになったと思います。

今までも投資の対象ではありましたが、株のようなリスクアセットとして認識されていました。しかし、これからは、比較的安全な投資先として、外国通貨やFXのような値動きに近づいてくるような気がします。

もう一つ理由を挙げると、仮想通貨はいつの間にか、どんどん生活に近いところまで普及してきています。誤送金問題で注目を浴びたオンラインカジノでは、仮想通貨で決済できるそうで、こちらは犯罪に近い部分があるので問題ですが、海外ではコンビニで使える国も増えてきています。

以前に比べて、仮想通貨がだんだん生活に入ってきているという実感が得られるようになってきているので、それにつれてトレードの幅も広がっていくのではないでしょうか。

――大手金融機関は仮想通貨に対して、どういうスタンスなのですか。
個人のトレーダーがどう見ていたか、という話をすると、証券会社のトレーダーって、基本的に扱っているものが違っても、会社では一緒の場所に固まって座っているんです。株や債券問わず部署ごとに、現物を扱っている人も、貸借をやっている人も一緒に座っていることが多いはずです。だから、マーケットのいろいろな話が聞ける。

そんな中で、2016年から17年ぐらいだった思います。ちょうど、ビットコインが急激に上昇し始め、相場が大いに盛り上がっていた頃ですね。あるとき上司が「こんなの危なくて手を出せねえな」と言っていました。中には買った人もいましたけど、「怖い投資対象」というのが共通の認識で、ギャンブル的に買ってみようか、という人がいるという状態でした。

けれど、2018年から20年ぐらいになると、「ビットコイン、今、買ってる?」「買ってますよ」みたいな会話が日常的になってきて、ほかの投資対象と同じ選択肢の一つとして考えているような人が、半分はいたような気がします。

その後は、仮想通貨の市場の動きと株式市場の動きの関連性に注目する人も現れてきて、株取引の判断材料として、仮想通貨の指標も見ている人もいました。

だから、トレーダーの間でも、ここ5、6年の間で見る目も変わってきて、しだいに浸透してきたという感じです。業界内でも、大手投資銀行が「デスク」と呼ばれる取引部署設けたときは、かなりの驚きが広がって、他の証券会社やトレーダーの間でも一気に広まったという印象です。

今は、一部の大手証券会社は仮想通貨の商品開発などにも取り組んでいるのではないでしょうか。日本でも、銀行が仮想通貨取引へ本格的に参入するという話を聞いたことがあります。金融機関が乗り出してくると、いよいよ本物で、買いが厚くなってくるため、多少下げる局面があっても、これまでのように一気に暴落するということも減ってくるでしょう。

ーー金融機関が仮想通貨に参入する場合、どのような取引になるのでしょうか。
金融機関が自分たちのデスクでポジションを取るようになれば、もう債券や株と同じように考えていいのではないでしょうか。どこかから仮想通貨を借りてくるとか、貸してほしいと言われるとか、貸借取引も広がっていくでしょうし、担保としての役割も果たすようになるかもしれません。そういうふうに幅広く使われるようになると思います。

ただ、今は金融機関も自分達でポジションを取るだけというところが多くて、ようやく金融商品に仮想通貨を組み込んだり、仮想通貨を担保に融資したりするところが出始めたくらいです。でも、いずれはどこの金融機関でも、仮想通貨を売買したり、交換したりできるようになり、仮想通貨を担保にしてお金や債券、株などを借りてくるというビジネスが一般的になっていくんでしょうね。

大口投資家が作る流れを読み、それに従う

――KさんのトレードはFXが中心とのことですが、FXの特徴についてどう思いますか。
株に比べると、FXの方がトレードしやすいと思います。株も指数で取引するのはいいのですが、個別銘柄の場合は、先程言ったように、社内の個別のトラブルで値を下げることがあって、外部の人は予期できません。株は、よく分からない理由で上がったり下がったりする印象があります。

FXも地震や政変などで、大きく値が変動することはありますし、実際、日本でも東日本大震災などで乱高下しましたが、それでも、まだ株よりは先行きを読みやすいと思います。

――仮想通貨や株の取引はされないんですか。
仮想通貨は動きが激しいので、ボラティリティが大き過ぎて危ないと思ってやってきませんでした。でも、これからは変動幅も落ち着いてくると思うので、投資対象として考えてもいいでしょう。むしろ、仮想通貨は有望とも言えるかもしれません。短期取引はリスクもありますが、長いスパンで持つことを考えるのなら、今から始めてもいいような気がします。

株は今後の相場が読みにくくて、現状はあまり触れたくないという気分ですね。

ーーFXはどのような考え方で臨むといいのでしょう。
為替の動きがどのようにして生まれるかを考えるといいと思います。長期的に見れば、為替はお互いの国の経済力や経済政策を反映して決まっていくわけですが、短期的には、それだけではない。

例えば、世界的な大手証券会社なら、円が数千億円余っているとか、逆に数千億円足りないという状況が、日常的に起こります。すると、余っているだけではもったいないから、それで何かを買ったり、別の通貨に交換したりするし、足りなければ、何かを売って円を調達したり、社内で融通しあったりします。社内で融通するというのは、具体的には、ニューヨークでドルが足りない状況のときに、東京で余っている円でドルを買ってニューヨークに回すというようなことです。

つまり、FXの市場では、こうした大手が自分達のトレードのために、何千億、何兆円という通貨を売買していて、それが短期的な為替レートに影響を及ぼしています。結局は、そうした大口の投資家が市場を動かしているわけで、大投資家には逆らえない。だから、「長いものには巻かれよ」ではありませんが、大きな流れにうまく乗るという考え方がFXトレードのうえでは大切だと思います。

――そうした大口の投資家の動きは、どのようにして読むのですか。

純粋に、たまたま円が余っていたり、円が足りなかったりということで動くのですが、そうなりやすい状況というのもあります。

FOMCの発表を見るにしても、自分がどう思うかではなくて、みんながどう見てるかということを考えるのが大事です。これは、トレーダーや長く投資をやっている人なら、自然と身についていると思うのですが、あまり言語化されていない。「市場のコンセンサス」という言い方をしますが、要するに大きい投資家がどう動いて流れを作るかということなんです。そのコンセンサスを理解して、それに従うということですね。

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