何事も他人の失敗から学ぶことは大切です。
他人がコストを払って犯した失敗を自身の学びに変えられれば、それだけで利益を得られたと言っても過言ではありません。
本記事では、仮想通貨・ビットコイン投資の失敗談を紹介し、そこから初心者が学べる失敗しないための秘訣を解説します。
投資初心者やこれから仮想通貨投資を始める人は、紹介する秘訣を意識することで、失敗のリスクを大きく減らせることでしょう。
世間で仮想通貨が危険だと言われる理由
仮想通貨投資では多くの失敗談を聞きます。一方で「億り人」に代表されるように、大きな利益を出して資産を増やす人もいるのは事実です。
それは株式投資でも変わりません。
なのになぜ、世間で仮想通貨は危険な投資商品と言われているのでしょうか。
主に以下の3つが考えられます。
- よく分からない怪しいもの
- 価格変動の激しさ
- 詐欺やハッキングのニュース
それぞれ見てみましょう。
よく分からない怪しいものという仮想通貨に対するイメージ
第一に、「仮想通貨」という名称からくる、怪しげなイメージがあるでしょう。
近年は、正式名称が「暗号資産」に変わりましたが、まだ「仮想通貨」という呼び名のほうが広く浸透しています。
「仮想」通貨と聞いて、「実体のない架空のお金」という詐欺的なイメージを持ち、敬遠している人が大半ではないでしょうか。
実際は、仮想通貨は「インターネット以来の大発明」と言われるブロックチェーンという確かな技術基盤を持っており、決して詐欺的な架空のお金ではないのですが。
しかし、世界で最初の仮想通貨ビットコインが誕生してまだ十数年。
インターネット黎明期に、多くの人が現在の爆発的なネット社会を予見できなかったように、ブロックチェーン・仮想通貨が広く市民権を得るにはまだ少し時間がかかるのかもしれません。
▼なかなか聞けない初期ビットコイナーのインタビュー記事
「当時のビットコインはPCや暗号好きのマニアックな人の世界」2010年参入の初期ビットコイナー 1/7
仮想通貨の価格変動の激しさ
仮想通貨の価格変動の激しさも、危険だと言われる理由のひとつです。
「億り人」を生み出すほど値上がりしたかと思えば、その後の大暴落で大きな損失を出す人が続出。そのインパクトの大きさから、仮想通貨は値動きが激しくて危険、という印象が広まっているのでしょう。
実際、ビットコインはバブルと言われた2017年12月に最高値230万円を付けましたが、2か月後には65万円まで約70%暴落。2018年12月には最高値から約85%下落の36万円を付けました。
最もメジャーな仮想通貨であるビットコインでこの値動きですから、マイナーな仮想通貨では100倍〜1,000倍の高騰や、一瞬で無価値ということも珍しくありません。
この値動きの激しさは投資家に取ってはチャンスである一方、危険な商品と言われる理由のひとつでしょう。
仮想通貨詐欺やハッキングのニュース
バブルや暴落のほかに仮想通貨が世間を賑わすのが、ハッキングや仮想通貨詐欺のニュースです。
2014年のMt.Gox(マウントゴックス)事件や、2018年の大手取引所のハッキング事件などは記憶している方も多いでしょう。また、最近では人気芸人による仮想通貨投資詐欺が大きく報じられています。
参考:マウントゴックス事件、取引所開設の失意の断念について語る。初期ビットコイナー 2/7
このような悪いニュースがメディアに取り上げられることで、仮想通貨=危険というイメージが定着しているものと考えられます。
しかし、これらのハッキング事件は仮想通貨自体の欠陥ではなく、仮想通貨を扱う取引所のセキュリティの甘さによるものです。また、仮想通貨詐欺事件は、仮想通貨で大儲けできると謳って金銭を騙し取るという、古くからある投資詐欺の手口が大半です。
ただし、2万種類以上あると言われる仮想通貨の中には、詐欺を目的としたスキャムコインと呼ばれるものも多く紛れているため、十分注意しましょう。
仮想通貨の失敗談
このように、危険だと言われている仮想通貨投資では、数多くの失敗談も存在しています。
失敗談の中から、初心者が「他山の石」とすべき内容をピックアップしました。
- 一発大儲けを狙った高レバレッジ取引で大損失
- 一発大儲けを狙って草コインに大金を注ぎ込み無価値に
- 価格の上下に一喜一憂し感情で売買して損失
- 仮想通貨の税制を知らずに、多額の税金を滞納
一つずつ見ていきましょう。
一発大儲けを狙った高レバレッジ取引で大損失
仮想通貨投資で大きな損失を出す代表例が、高レバレッジ取引での失敗です。
仮想通貨投資には、自己資金で売買する現物取引と、自己資金を担保に入れ、その数倍のお金や仮想通貨を借りて売買するレバレッジ取引があります。
レバレッジ取引は、売りから入ることもでき、少ない資金で大きな取引が可能です。そのため、相場状況に関わらず大きな利益を得られるチャンスがある反面、想定と逆方向に動けば大きな損失を負うリスクもあります。
現在、国内の取引所では担保の2倍までの取引しかできませんが、海外には100倍を超える取引ができる取引所も存在します。
例えば、価格がポジションと逆方向に10%動くと、2倍なら20%、10倍なら100%(つまり担保全額)、100倍なら1,000%(つまり担保の10倍)の損失が出るということです。
通常は一定の損失で強制決済(ロスカット)されるため担保金額を超える損失は出ませんが、急激に価格が動くとロスカットが正しく機能せず担保額を超えて損失が出ることもあります。
一発大儲けしようと、このような高レバレッジ取引に大金を投じると、資産の大半を失うどころか、最悪の場合多額の借金を背負ってしまうことになるのです。
一発大儲けを狙って草コインに大金を注ぎ込み無価値に
同じく一発大儲けを狙い、マイナーな草コインに投資して大損するケースもよくある失敗のひとつです。
現在、仮想通貨は2万種類を超え、さらに増え続けています。
2万種類もあれば、ビットコインやイーサリアムなどのメジャーな通貨はごく一部で、大半は時価総額も知名度も低い、いわゆる草コインです。
もともと値動きが激しい仮想通貨の中でも、時価総額の小さい草コインはわずかな出来高でも大きく価格が上下するため、一際ハイリスク・ハイリターンと言えます。
有名人やインフルエンサーが推していた、といった理由で得体の知れない草コインに大金を注ぎ込んで無価値になってしまった、という失敗談は後を絶ちません。
価格の上下に一喜一憂し感情で売買して損失
値動きの激しい仮想通貨では、高レバレッジ取引や、草コイン投資などリスクの高い取引をしなくても、損失を膨らませてしまう失敗はよくあります。
値動きが激しいということは、短・中期のトレードで大きく儲けるチャンスとも言い換えられます。
しかし、初心者が仮想通貨投資の知識や自分の投資スタイル・ルールを持たずに、丸腰でトレードを望むのはリスクしかないと言って良いでしょう。
- 値上がりしているのを見て、「もっと上がるだろう」と思い高値掴みしてしまう
- 保有通貨が値下がりしても、「すぐに盛り返すだろう」と思って損切りできず損失が膨らむ
- 価格が下がり続けると底が見えずに怖くなって、底値で売却してしまう
このような良くある失敗談は、明確なルールを決めずにトレードを始め、感情で売り買いしているために起こるもので、プロ投資家の養分になる典型例です。
たまに利益が出ることはあっても、長期的に見れば損失が積み重なって、資産を失ってしまうことでしょう。
▼思い込みによる失敗談と学びの参考記事
トレードの失敗を活かして開発した、過熱感を可視化する「突っ込みインジケーター」とは 2/4
仮想通貨の税制を知らずに、多額の税金を滞納
最後は視点を変えて、取引の損失ではなく、利益をあげたあとの対処を誤ったことによる失敗を紹介しましょう。
それは、「税金」です。
株式の売買益の税率は一律20.315%なのに対して、仮想通貨の利益は給与などと合算され、所得に応じた累進課税で最大55%(所得税45%+住民税10%)の税率が課されます。
また、課税の対象となる利益確定のタイミングにも注意が必要です。
まず、以下の2つのケースはわかりやすいでしょう。
- 仮想通貨を売却して利益を得たとき
- マイニングやステーキングで仮想通貨を取得したとき
しかし次の2つは、知らないと気づきづらいケースです。
- 仮想通貨を別の通貨に交換したとき
- 仮想通貨で商品を購入したとき
つまり、元の通貨を一旦円に変えてから次の取引をしたと解釈して、利益が出ていたら課税されるということです。
過去には、アルトコインのICOで大儲けした人が、課税タイミングを知らずに全額を別の仮想通貨に交換し、その後に大暴落して多額の税金だけが残ったという事例があります。
仮想通貨は大儲けしたときにも注意が必要ということです。
失敗談から学ぶ失敗しない秘訣
ここまで失敗談を紹介してきました。そこから何を学び、どのように行動すれば良いでしょうか。
初心者が失敗しないための秘訣を4つ解説します。
- 初心者は余剰資金でコツコツ現物投資
- 時価総額が大きい信頼性の高い仮想通貨に投資
- 自分の投資スタイル・ルールを確立しよう
- 利益が出たら納税分を確保|長期保有で税制改正を待つ手も
初心者は余剰資金でコツコツ現物投資
初心者は、短期間で大儲けしようと思わないことです。
レバレッジ取引は少ない資金で大きな利益を出せる可能性がありますが、知識やスキルのない初心者が手を出して勝ち続けられるものではありません。
初心者は大きく利益を上げることよりも、大きな損失を出さないことが重要です。短期間で資産を失って投資を続けられなくなっては、その後の大きなチャンスを逃すことになるかも知れません。
下のチャート(ログスケール)を見ても分かるとおり、ビットコインの価格は上昇と下落を繰り返しながらも、長期的には右肩上がりに伸びています。
現物取引で価格が下がった時に買ったり、積立投資したりすることで、長期的には利益が出る可能性が高いと言えるでしょう。
安易にレバレッジ取引に手を出すことなく、余剰資金でコツコツ現物投資することが大切です。
▼ビットコインの長期保有についての参考記事
なぜビットコインのガチホは難しいのか? – 投資・トレード メディア
時価総額が大きい信頼性の高い仮想通貨に投資
初心者は、大儲けしようと時価総額の小さい草コインに手を出すのも控えたほうが良いでしょう。
100倍や1,000倍になる可能性は魅力的ですが、そのような仮想通貨は2万種類の中のごくわずかです。詐欺コインも多く、大半のコインはいずれ無価値になって消える運命でしょう。
ビットコインの価格が長期的に右肩上がりなように、時価総額が大きく、信頼性の高い仮想通貨でも将来性のあるものは今後も大きく成長する可能性は十分にあります。
執筆時点の時価総額TOP10の仮想通貨は次のとおりです。
ただし、時価総額が大きいからと言って絶対に安全というわけではありません。今年5月には、一時時価総額TOP10に入っていたLUNA/USTという仮想通貨が、アルゴリズムの崩壊によって数日のうちに99.9%以上暴落しました。
仕組みがあまりに複雑で理解できない仮想通貨も手を出さないのが無難かもしれません。
自分の投資スタイル・ルールを確立しよう
特に短期トレードをする場合には、自身の投資スタイルやルールを確立することが大切です。
「なんとなく上がりそう/下がりそう」「インフルエンサーがそろそろ上がると言っていた」など感覚や人の意見に頼って取引していると、一時的に利益が出ることはあっても、継続するのは難しいでしょう。
もともと自身の考えがなければ、失敗から学び次に活かすこともできません。
トレード手法やテクニカル分析を勉強し、エントリーポイントや損切り基準などを決めて、感情に流されず取引することが大切です。
そして、データを蓄積し、自分なりに勝てるとき、負けるときの傾向を掴んで自身の投資スタイルをブラッシュアップしていくことで、成長していけるでしょう。
短期トレードは、一発大儲けという印象を持つ人が多いかも知れませんが、実は薄い利益をコツコツ積み上げていく地道な戦略なのです。
▼トレードスタイルやルールを確立することの大切さの参考記事
「トレードで大事なことは負けない取引まで待てること」中島翔氏が考えるトレードで勝つために大切なこと 2/3
▼トレードの失敗の振り返り方の参考記事
利益が出たら納税分を確保|長期保有で税制改正を待つ手も
仮想通貨投資でうまく利益を上げられたなら、最後に税金で失敗しないようにしましょう。
失敗談で述べた通り、日本の仮想通貨の税率は累進課税です。
大きな利益を上げた場合、税金のことを考えずに全額を別の仮想通貨に投資したり、消費したりすると納税時に痛い目に遭うことになります。
必ず納税分を確保した上で、次のアクションに移すことをおすすめします。
他の仮想通貨で含み損を抱えている場合には、売却して損失を確定させることで損益通算して税負担を軽減することも可能です。
なお最近では、仮想通貨を発行する企業の法人税見直しなど、徐々に仮想通貨税制を改善する動きが出ています。
将来的には、仮想通貨の売買益も株式と同じ分離課税になるかもしれません。長期投資の場合は、仮想通貨の将来への期待とあわせて、気長に税制改正を待つのもひとつの手でしょう。
まとめ:基本に忠実に、長い目で着実に
仮想通貨は価格変動が激しく、バブルによる高騰と暴落を定期的に繰り返してきました。
「億り人」のエピソードを聞くと、「自分も一発大儲けを!」と考えてしまいがちですが、投資対象の本質や投資の基礎知識を身につけずに始めても失敗する可能性が高いでしょう。
これは仮想通貨に限った話ではありません。他の投資家の失敗を「他山の石」として、基本に忠実に、長い目で着実に投資することが失敗しない秘訣です。