トレードの失敗を活かして開発した、過熱感を可視化する「突っ込みインジケーター」とは 2/4

会社員をしながら仮想通貨のトレードを行っている兼業トレーダーのショウ氏。本格的にトレードを始めたのは2年ほど前からだが、市場に参加しているトレーダーの意識や行動も読みながら、利益を積み上げている。2021年11月に開発した、相場での過熱度を判断するツール「突っ込みインジケーター」も注目を集めている。そんなショウ氏に過去の印象的なトレードや、「突っ込みインジケーター」の開発にまつわる話などを聞いた。

ショウ氏 プロフィール
国内メーカー会社員。理系の大学院を卒業後に就職。会社では主に新規製品開発のプロジェクトマネジメントに従事。トレード歴は10年以上、直近はビットコインをトレード。プログラミング知識を活かして開発した「突っ込みインジケーター」を開発、一般にも販売し自身のトレードにも活用している。Twitterアカウントは https://twitter.com/SkycloudSpring
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

スキャルピングに有効なフットプリント

――勝ったトレードの中で印象的なエピソードはありますか。
本格的に始めてから間もないので、失敗談は多いのですが……。最近、フットプリントチャートを見ながらの取引も始めてみたのですが、結構短期取引で利益を上げています。

一晩で証拠金を2倍に増やしたこともありますし、上手くフットプリントを使いこなせると期待できそうだという手応えはあります。
スキャルピングをやるのなら、フットプリントは必須のデータだと思いますね。1週間くらいで証拠金を3倍にしたこともありますし。

フットプリント取引チャートの説明図。引用元:フットプリントチャートとは何ですか? –取引チュートリアル

――スキャルピングはよくやるのですか。
あまり好きではありませんね。結構、神経をすり減らしますから。兼業トレーダーにとってスキャルピングはしんどいんじゃないかというのが僕の考えです。

仕事がそれほど忙しくないなど時間的に余裕があるときじゃないと、ちょっとできないかな、という気がします。集中して相場の動きを見ないといけないので、かなりのストレスがかかりますよね。

――逆に失敗談はありますか。
印象に残っている失敗といえば、21年の秋くらいですかね。その年のゴールデンウィークくらいからビットコインが急激に下落し始め、7月初めにかけて30,000ドル前後にまで落ち込んだ後、7月下旬から11月にかけて急上昇したという局面でした。

――はい。最終的に67,000ドルくらいにまで上昇しましたね。
僕は、あの局面を少しリバウンドした後、また下落し始めるんじゃないかと思って見ていたんです。だから、40,000ドルくらいからかなりショートポジションを積み始めて。4-50,000ドルぐらいにまで上がったら、また下落するだろうという見通しだったんです。

結局、そうならずに結構な額のポジションをショートで持ってしまい、ほとんど溶かしてしまいました。あのときは完全に相場を見誤りました。今でも強烈に覚えていますね。

2021年3-12月のBTCのチャート。5-7月中旬にかけて大きく下げた後、7月下旬より11月にかけて大きくリバインドしている。引用元:tradingview.com

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思い込みから相場の判断を誤る

――どうして、また下落すると思ったんですか。
春の下落によって、相場が逆回転し始めたと思いこんでしまったんですね。当時の相場を、過熱しすぎていると感じていました。

株や商品相場も、世界的な金融緩和、量的緩和によるジャブジャブのカネ余り状態によって急激に上がり始めたけれど、それを是正する反動が起きたら、そのまま下がっていくんだろうな、と見てしまっていたということですね。

――そうした相場観が全く外れていた。
21年秋の上昇の裏には、米国市場でビットコイン連動型ETFが承認されるという動きがあったんですよ。21年にカナダでビットコインETFが承認されて、次は米国でも承認されるのではないかと期待が高まっていた。そして、9月に米国メディアが「承認される見通しだ」と報じて、ビットコインが上昇し始めたんです。

実際、10月に承認されたのですが、僕は、こうした情報をほとんどキャッチできていなかった。しかも、それを知った後も「別にそこまでインパクトはないだろう」と判断しちゃったんです。


だけど、ビットコインETFはそれまで米国当局に何度も却下されていて、ようやく承認される見通しになった。それは業界にとって大きなニュースだったわけです。それなのに、僕は思い込みによって客観的に判断できなかった。思い込みは駄目だと学びました。

当時のニュース:ビットコイン最高値更新、先物ETF好発進で楽観論強まる(2021年10月20日 bloomberg)

――かなり落ち込みましたか。
本格的に始めた後、そこまで順調に来ていて、調子を乗っていたところがあったので。それなりに積み上げてきた考え方や手法を全て崩されたような気がして、かなり落ち込みました。

今までもそうだったから、どっかで落ち始めるから、と根拠のない見通しを持って、「ショートを持っておけばいいだろう」みたいな安易なところがありました。

そうではなく「なぜ上がってるのか」ともう少し深く考えていれば、「これはヤバそうだな」という判断ができたはずです。それができなかった。

――大きな失敗をしたときはトレードを休んだりするのですか。
2021年秋は1カ月か、2カ月くらい休みましたね。かなり落ち込んだので、ちょっと頭を冷やした方がいいと思って。仕事が忙しくなったというのもあるのですが。

やはり、今まではうまくいっていたのに、そのときは全く通じなかったということで、「一回頭を冷やして立て直さないと駄目だろう」という気持ちが大きかったですね。

失敗の検証をしないまま、同じ手法、スタイルでやっても同じことの繰り返しになるだろうとも思いました。

――そこを焦って取り返そうとしないところに経験の差を感じます。

いやあ、「ものすごく痛い目に遭ったので、せめて何かを学ばないと」という気持ちはありましたね。それと、この失敗が「突っ込みインジケーター」を作り始めるきっかけとなりました。

――失敗がインジケーターの開発につながった。

データを総合的に見ているつもりでも、自分の感覚だけで判断していると、バイアスがどうしてもかかってしまうので、客観的な指標があったほうがいいだろうと思って、インジケーターの開発に取り組みました。

おそらく、あのときに失敗せずに、なんとか切り抜けていれば、突っ込みインジケーターはできていなかったのでしょうね。そういった意味では、長期的に見ると失敗にも意味があったと思います。

トレーディングビューで利用可能な、過熱感を可視化するインジケーターを開発

――突っ込みインジケーターとは、具体的にどのようなものなのですか。

最初は、突っ込み買いや突っ込み売り、要するに買われ過ぎ、売られ過ぎの局面を検出できるインジケーターがあればいいなと思ったんですね。

そこは出来高や移動平均との乖離、FRやOI、Liquidationsとか、そういった指標やデータを総合的に見て判断すべきなのでしょうが、兼業トレーダーはずっと全ての指標を見続けるのは厳しいと思います。

そこで、例えば外出していても総合的に判断して可視化してくれるツールを作れないか、といったことは以前から考えていました。

突っ込みインジケーター利用画面1

僕はトレーディングビューというチャートツールも使っているのですが、このツールは基本的にロウソクの値(4本値)と出来高しか見られない。

最近は一部の取引所のOIなども見られるようになったのですが、清算の発生状況やFRなども見えなかったりするので、取引所間の価格の歪みのようなものを見つけて、相場の突っ込み度、過熱感を可視化できないかなと思ったのが始まりです。

――今は販売されていますが、もともとは自分で使うために開発した。
そうです。自分向けに作って、今も自分で使っています。基本的には市場で発生するミスプライス的なものを検出するツールです。たとえば、突っ込み売りの傾向が出ていたら、そろそろ反転するだろうと考えて、そこを取りに行くという感じで使います。

本来は様々な指標を総合的に見て判断しなければならないのだけれど、いつも見ていられる環境にはないので、シンプルに見える化したインジケーターで簡単に判断できるようにしてしまおうというのがコンセプトですね。

――ゼロからご自身でプログラミングして作ったのですか。
トレーディングビューにPineスクリプトという機能がありまして、要はトレーディングビューで見られるデータを処理したりして、独自のインジケーターを表示できるスクリプトです。それを使って作りました。

購入いただいた方にはコードの内容も公開していますので、トレーディングビューに実装するだけでなく、どのようなことを見ているのかも全てわかります。

トレーディングビューは、見られるデータが少ないのですが、複数の取引所のデータを安価で見られるのがメリットだと思います。月額数千円の利用料で、複数の取引所を比較して価格の歪みなどを見つけられる。そこをうまく利用して、インジケーターで可視化しているという感じです。

突っ込みインジケーター利用画面2

――公開は2021年11月で半年ほど前ですね。具体的にはどうやって使うのですか。
基本的には相場の歪み度を見るので、指標の解釈はトレーダーそれぞれに委ねられているという形です。

例えば、単純に0から100までの指標で、100のほうに振れたら「買い」で、0のほうが「売り」というような単純なものではなく、取引所間の価格を比較して、統計的な歪みを表示しています。

ですから、そのときどきの相場環境によって解釈は異なるわけで、今の相場環境であれば、こういう指標が出たときには上がりやすいとか、下がりやすいとかの傾向を各自で読んでいくということになります。

もちろん、表示の仕方による見やすさや、使いやすさ、得られる情報の種類といった、小さなアップデートは続けていますが、こうした基本的なコンセプトは今後も変わらないと思います。

――どちらかといえば中級者以上向けのツールになるのですか。
僕のツイートを読んだ初心者の方にも買っていただいていますが、初心者の方は使いこなすのが難しいかもしれません。

今まで負けていた人が、インジケーターを使えば勝てるようになるというわけではなく、ある程度、自分なりのスタンスや考えを持ってトレードをしている人が、インジケーターの指標を見て、自分のトレードの精度を高めていくという使い方になると思います。

――インジケーターを購入した人からの反応はいかがですか。
結構、好評ですね。決して安くない価格をつけているんですが、これを買って勝てるようになったとDMをくださる方や、アンケート結果では購入された1/3の方が、突っ込みインジケーターでさらに勝てるようになったようです。

今後は、歪み方にもいろいろな歪み方があるので、どの情報を見やすく表示させるかといったところを整理してアップデートしたいと考えています。もう一つは、インジケーターの考え方をbotに落とし込んで、自動で取引できるようにするという構想もあります。

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