Nayuta Inc.などに投資するLN専業VCであるFulgur Venturesに、LNのプロダクトや普及について伺いました。
※当該インタビューはFulgur Venturesを代表し、Oleg Mikhalsky氏に回答いただいております。
編集・翻訳:teatwo , Burry Market Research編集部
Fulgur Ventures プロフィール
技術知識に加え、スタートアップ企業をゼロから支援し、急成長する新興企業にまで拡大させてきた実績と長期に渡る経験を持つ、ライトニングネットワークに特化したベンチャーキャピタル。Nayutaなどに投資。企業サイト:Fulgur Ventures , フルグル合同会社
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Nayutaへの投資について
ーーNayutaへの投資の背景、当時のNayutaや栗元氏についての印象、そして現在の同社に対する期待について教えてください。
私たちとNayutaとの交流は2019年に始まりました。
共通の知り合いを通じて、日本にも才能あふれるチームがLNに取り組んでいることを初めて知りました。
当時、栗元氏から初めて、電力市場やM2M決済にLNの技術を応用する可能性を学びました。
それは当時非常に先見的なことでしたが、同時にチームの特定の業界に対する知識と、特定のLNの実装がどのように応用できるかに基づいており、非常に実用的で私たちの注意を引きました。
後に出会った他のチームも、Nayutaのチームがユニークな専門知識を持っていると高く評価していることを私たちに教えてくれました。
私たちは、長期的に見て、このチームがLNの領域で大きな革新をもたらすことができると確信しました。
ーーLN専業VCとして、ほかのVCと視点や考え方がどのように異なるか教えてください。
私たちは2017年の後半にLNについて学び始めました。
当時はまだまだ実験的な段階でしたが、時間が経つにつれ、LNとビットコインについて、多くの業界と私たちの社会全体に長期的に影響を及ぼす革新的な技術であるという見解を形成しました。
これらのビジョンが実現するまでには長い時間、もしかしたら数十年はかかるかもしれません。
そのため、ほかのビットコインやLNに特化したVCと同様に、私たちも長期的な視点を持ち、伝統的なVCのKPIに縛られずに意思決定できるように最適化しています。
LNはその誕生以来、常に進化を続けており、そのエコシステムの内部や外部から学ぶことは尽きません。
したがって、私たちは非常に少ない前提の中で、見解や知識の改善を絶え間なく繰り返す旅をしていると言ってよいでしょう。
常に他者と対話し、知識を磨き続ける、言うなればカイゼンの旅です。
LNにより中間者なしでより効果的に価値交換できるようになる可能性を信じている
ーービットコインのL2が盛り上がっていますが、盛り上がりに対して、まだ認知されていない魅力的なプロダクトや進捗があれば教えてください。
不確実性が高いことについて話すのは難しいですが、全般的には、LNにより中間者なしでより効果的に価値交換できるようになる可能性を信じています。
たとえば、国境を越えた決済やデジタルコンテンツのマイクロペイメントなどです。
YouTubeやTikTok、Spotifyなどのプラットフォームを通じたコンテンツの配信と収益化には、小規模なコンテンツ制作者が大物インフルエンサーと同等に収益化するのを妨げるボトルネックや障壁があります。
PNKFRG、Wavlake、Vida、Alby、Fountain.fmなどのプラットフォーム※は、これらの障壁を取り除くことが可能です。
また、それだけでなく、従来のFacebookやInstagram、Googleなどのプラットフォームで広告主から支払われるような価値ではなく、ユーザーから実際に支払われる価値に基づいた新たなコンテンツの発掘を可能にします。
いかにしてこれらを実現できるかを見極めるための試行錯誤の道のりはまだ長いですし、こういったプラットフォームや似たような開発は現行のプラットフォームに比べて未知の部分が大きいです。
※私たちはPNKFRG、Alby、Fountain.fmに投資しています
ーーTaro、RGBは今後どのように活用、普及していくと予想されますか。
ビットコインネットワーク上のアセットという概念は新しいものではありませんが、LNにより価値のある資産をほぼ即時に、非常に低いコストで移転する機能によって躍進が起こる可能性はあります。
ステーブルコインなどの代替可能な資産は、開発されれば支払いの便利さを増し、ユーザーエクスペリエンスを改善し、将来的には一般ユーザーにも使いやすくなる可能性があります。
国境を越えた支払い、デジタル商品やサービスの支払い、または少額支払いなど、既存の支払いシステムの非効率性を改善できる分野はたくさんあります。
そして、LN上のステーブルコインは、市場のニーズにとてもよく応えることができるでしょう。
伝統的な支払いインフラがすべての人々に届いていない発展途上国での普及を促進する
ーー決済や送金など、ビットコインやLNの利用がマスアダプションするためにはなにが必要だと考えていますか。
一つには、Phoenix、Breez、またはBlockstream Greenlightのようなノンカストディアルのウォレットや支払いソリューション※1は、平均的なユーザーが使えるユーザーエクスペリエンスと組み合わせると、LNの利便性を向上させます。
特に伝統的な支払いインフラがすべての人々に届いていない発展途上国での普及を促進できます。
これは信頼性のあるオンランプ/オフランプのインフラと組み合わせて最も良い結果をもたらすかもしれません。また循環経済として発展するエコシステムでも機能するでしょう。
一方で、Lightspark※2、River、Zebedee※3のようなサービスプロバイダーは、他の企業が新しいタイプのアプリケーション、例えばプレイヤー間で瞬時に少額のLN決済ができるゲームなどを構築できるようにします。
※1:私たちは後者2つに投資しています
※2:元FacebookでLibraプロジェクトのエグゼクティブであるDavid Marcusが設立
※3:私たちの投資先です
ーービットコインについて「本質的な価値がわからないので取引しない」という投資家もいますが、どのように考えていますか。
ビットコインはいろいろな要素を含む現象で、私たちはビットコインに焦点を当てて、他の一部の領域はあえて投資のテーマから外しています。
技術と資産クラスの基本的な理解は投資プロセスの重要な部分です。
投資家のタイプによって異なるかもしれませんが、私たちはリサーチに多くの時間とリソースを費やしており、すべての人に自分自身でリサーチを行うこと、情報を比較して結論を出すために複数の独立した情報源を使うことを推奨しています。
実際、カードでの支払いに対してビットコインの報酬を受け取る、ゲームやポッドキャストプレーヤーでLNの少額支払いするなど、ビットコインの理解に向けた旅を始めるために低リスクな方法でビットコインのエコシステムを体験できます。
これらはあまり時間やリソースを取らずに体験できるでしょう。
また、私たちのリサーチが他の人々にとっても興味深いものであると考え、日本でのビットコインとライトニングの理解を助けるために、ビットコインを啓蒙するためのオンラインリソースであるロストイン・ビットコインも支援しています。
参照:ロストイン・ビットコイン | 迷宮ビットコインの歩き方
周期性に伴うリスクの潜在的なインパクトを織り込み、特定の期間において対策を講じることはもっと意識されるべき
ーービットコイン以外で注目している領域やプロダクトがあれば教えてください。
ビットコインとLNは、インターネットを基盤とした金融インフラを含む分散型金融インフラを可能にします。
ピアツーピアの技術を通じて分散型インターネットを可能にするという分野は、私たちが試みて理解しようとしている非常に興味深い領域です。
ーーいま暗号資産のマーケットで織り込まれていないだろうリスクにはどのようなものがありますか。
一般的に、暗号資産は、技術の成熟度、市場の採用、規制、価格の変動性などによって変化するリスクが高いエコシステムです。
過去の経験から、暗号資産の市場には周期性があるということが見えてきました。
この周期性に伴うリスクの潜在的なインパクトを織り込み、特定の期間において対策を講じることはもっと意識されるべき点だと考えています。
その期間とは、暗号資産のサイクルの一部であったり、スタートアップの特定の成長段階、資金調達プロセスといったものに関係していると見ています。
ーースタートアップに投資する際に注意している特別なポイントを教えてください。
創設者とその同僚たち、チームです。
彼らの学習能力や敏捷性と正確な実行力を持っているかどうか。
これらに加え、彼らが深く理解している技術の基本と、その技術が彼らが活動しようとしている市場で競合優位なビジネスモデルを実現する方法を深く理解しているかです。
ーー現状のマーケット全般をどのように見ていますか。
時間とともに蓄積されてきた無数のマクロ経済的な不均衡はマーケットの不安定性を高め、サプライチェーンの混乱や銀行システムの崩壊、アセットクラスをまたがる調整局面など体系全体に影響を及ぼすショッキングなイベントが起こる確率を高めています。
こういった要素を鑑み、私たちは成功するVCの投資というのは、長い目で見た展望と関連するマーケットや産業に革新を起こす技術に対する根本的な分析に基づかなくてはならないということをつくづく感じています。
公正な競争はすべてのプレイヤーにより良い機会を生み出し、エコシステム全体がバランスすることに貢献する
ーードルの基軸通貨としての地位が危ぶまれていますが、どのように見ていますか。
私たちはこの質問に答えるのに最適な立場にあるとは言えないかもしれませんが、非常に長い期間を通じて集権化と分散化のパターンが交互に続くという視点を採用することが可能であれば、そのような変化がより現実的になるときにそのパターン間の競争が増加すると考えることができます。
しかし、将来起こるこういった競争の結果として、一種の均衡状態になるのか、大きな変化が起こるのか、はたまた現状の延長になるのかは何とも言えません。
ビットコインの金融的側面と金との比較、そしてその両方がフィアットシステムと基軸通貨の分散化に対して果たす可能性は、今日の金融環境を前の世紀のものとは異なるものにする興味深いトピックです。
最終的には、公正な競争はすべてのプレイヤーにより良い機会を生み出し、エコシステム全体がバランスすることに貢献するでしょう。
ーー読者へメッセージをお願いします。
不安定な環境の中でも前進し続けるためには、ファンダメンタルでの長期的な将来性を信じるベンチャーテーゼ(投資理念)に一貫していることが重要です。
しかしそれだけではなく、自分たちの知識の限界を常に見直し、知識のギャップを埋め、日々変わる状況に対応することも助けになるでしょう。
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