タイに居住し、タイや日本以外の法人で事業を営むのは難しいことではないのか? ビットコインマイナー弁護士・小峰氏 / Cygnos・三原氏 2/4

投資家、富裕層向けに海外移住、海外法人設立のサービスを提供するOWL Investmentsの小峰氏とCygnosの三原氏に、海外での法人設立や非居住者認定のリスクなどについてお話を伺いました。

お二人はCygnos主催、講師を小峰氏で「クリプト移住セミナー」を実施している経緯があり、今回一緒にお話を伺いました。

インタビュイー プロフィール

小峰 孝史氏

米系法律事務所Sidley Austinの東京オフィス・香港オフィスに勤務、TMI総合法律事務所所属時に香港駐在。2018年より現職。主として日本の富裕層向けに香港やその他の海外の税制上のメリットを生かす投資スキーム作り・移住をサポートしている。
Twitter:https://twitter.com/tkomine921 会社:https://owl-investments.com/

三原 弘之氏

2014年、ビットバンク株式会社へ社員第一号として参画し、執行役員COOとして国内最大級の仮想通貨取引所へ成長させる。現在は海外クリプトヘッジファンドの戦略へ分散投資する日本初のファンド、Cygnos Crypto Fund を運営。Twitter:https://twitter.com/h3hara Cygnos:https://fund.cygn.com/ https://oversea.cygn.com/

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香港、マレーシア、フィリピンへの移住について

ーー香港やマレーシアへの移住について教えてください。

小峰:香港はお金があればそれなりにいい暮らしができますが、単純に暗号資産の億り人というだけでは全くおすすめできないですね。

税制はいいのですが、物価が高すぎます。コンドミニアムもシンガポールと比べても高く、東京との比較であれば3倍はします。

億り人が単に節税で移住するのは割に合わないと感じます。

ーーフィリピンやマレーシアはいかがでしょうか。

小峰:フィリピンにお住まいのお客様もいますが、治安が良くないため特に家族連れで移住するのは向かないだろうと思っています。

マレーシアは良いのではないでしょうか。弊社のお客様でもマレーシア在住の方がいらっしゃいます。少しハードルが上がりましたがMM2Hも取れます。

個人的にマレーシアかタイかというと、私はタイの方が好きです。

タイは、日本人在住者が多くバンコクだけで5万人以上も住んでいるので、日本食レストラン、日本の商品を売っているスーパーマーケット、日本人向けの塾、病院の日本人向け窓口。生活に必要なありとあらゆるものが揃っています。とくに、この数年でドンキが出店したのは大きいですね。

タイのDonki Mall。小峰氏提供。
サミティベート病院の日本人向け窓口。小峰氏提供。

参考:日本人の移住者急増 マレーシアのロングステイビザ「MM2H」とは?

三原:マレーシアは暗号資産の税金がタイより少し高くなかったですか。

小峰:弊社のお客様の場合、マレーシアに住んでいる方は暗号資産の移住ではなく、資産家ファミリーの方なんです。

ただ、暗号資産で得た利益について納税義務は無いとも聞いています。

タイでの法人設立について

ーータイでは100%外資の法人は作れないとお聞きました。

小峰:基本的にそのとおりです。香港やシンガポールでは100%外資で会社が作れるので、そういった観点ではこれらの国々がいいでしょう。

そもそも、億り人でタイに会社を作って事業をしようという方はあまりいないと考えています。やるとしてもオンラインだけで完結する仕事であれば、その会社はどこの法人でもよく、タイで法人を作る必要はないと思います。

なのでタイで法人が作りにくくてもあまり困らないと考えています。

ーー日本の法人で既に事業を開始している場合は日本法人で事業をしながらタイに移住することになるのでしょうか。

小峰:それも可能ですが、日本法人である必然性があるのかどうかが問題ですね。

お店が日本にあって、日本法人でなければいけないという場合はそうでしょう。ただオンラインだけで完結するサービスを提供している場合は、日本法人である必然性はあまりないと考えています。

三原:非居住者の論点も出そうです。日本法人で儲かっていると。

ーータイに住んでいて、タイや日本以外の法人で事業を営むというのは特別難しいことではないのでしょうか。

小峰:ビジネスの中身によって変わりますが、難しくはないです。

例えばアフィリエイター、YouTuberなど、タイや日本の法人でやる必要はないですよね。

ディテールの論点にあまり入るとよくないですが、オンラインで日本居住者に向けて物販をする場合、日本の消費税がかかるのかなど細かい論点はあるんです。

細かい論点はあるけれども、トータルで見れば海外に移住してやった方がお得かなとは考えています。

ーータイに100%外資の会社を作れないという話だけ聞いて、そこで挫折した人が多い気がしますので、いまの話はとても参考になりました。

小峰:タイはルールが曖昧なところが多いので断言はできませんが、タイランドエリートで移住した場合、タイ国内では仕事をしてはいけないことになっているので、「タイ国内で仕事をしている」と言えない範囲内であれば、良いのではないかと思います。

三原:暗号資産の事業者として移住する場合に、タイが選ばれていないのはそういう理由です。居住者認定されたときのリスクが大きすぎるので。

だからドバイやシンガポールなどルールが明確な国にみんな行きます。

タイ専門の税理士の人と先日話したところ、ルール上は出来なくもないみたいですが、実際にやったという先駆者がいないというのも理由の一つな気がします。誰か一人がやれば続く可能性もあります。

小峰:マレーシアにもそういうところがあります。マレーシアのMM2Hも明確に事業をやっていい、ということにはなってないんですよね。

私がお手伝いした中でも、ラブアン法人を作ってラブアン法人でビザを取っている人はいます。そういう会社を作って、会社でのビザの方が安心だろうっていう感じでやってる人はいます。

参考:ラブアン法人の税制(法人税・個人所得税・源泉所得税・印紙税等)【2018-2019年最新】

居住者認定されるケースや課税について

ーー日本の居住者認定されるとどのような問題が生じるのでしょうか。

小峰:例えば、本人は2023年1月から海外に移住したつもりであったとしても、日本の税務署や国税局の基準では2023年3月まで日本居住者であると認定されたとすると、その3か月で生じた利益に対して日本の税金が課税されてしまいます。

ーー居住者と認定されないためにやれることはあるのでしょうか。

小峰:前提として、シンガポールで会社を持って事業をやっている人であれば日本非居住だと言いやすいでしょう。

ただ、それと比較すると、タイ、マレーシアのMM2Hなど、事業に取り組んでいるわけではなくただリタイアしているだけの方というのは、住んでいる国、タイやマレーシアとの関連性が弱いです。

しかし、日本に家がない、日本の仕事もないとなれば、タイ居住者、日本非居住者というのは、問題ないだろうと考えています。100%とは言い切れませんが。

ーー日本に家がある、ないというのは非居住者認定に関して影響がありますか。

小峰:そういうことはありますが、どこまで安全策を取るのかというのはいろいろあって難しいところがあります。

過去のお客様でも、企業のオーナー様で、お客様の事情で徹底的に日本居住と思われる痕跡を消したケースもあります。日本に戻ってもホテル住まいだけ、など。

そういう例はあります。

ーー日本側でどのタイミングで非居住者認定されたかというのは、本人ではわからないのでしょうか。

小峰:特定の移住者がいつまで日本居住、日本非居住なのか、という日本の税務署や国税局の判定に関しては、移住直後には検証できません。

なぜなら、日本の居住、非居住の基準はすごくアバウトだからです。

有名な武富士事件は、親が子供に贈与する際に、その子供が日本居住または非居住だったのかが争われて最高裁までいった事件です。争いになるぐらい基準が曖昧ということです。

参考:相続税法上の住所概念の解釈が問題となった最高裁判例(「武富士事件」)

ーー小峰さんのお客様で日本非居住と判定されたケースはありますか。

小峰:弊社のお客様が一時帰国した際に、国税局の人が押しかけてきたことがありました。

私が急遽呼ばれて、税理士の方と時系列について話をし、最終的には、国税局としては日本非居住で見ていると回答をいただきました。

稀ですがこういったケースはあります。

ーーいま国税局に注目されている投資家層などはあるのでしょうか。

小峰:最も注目されているのは、日本に住んでいて、ビットコインなどをトレードしている人です。

カルダノなど、マルチ的な手法で投資家を集めたプロジェクトはトップやトップに近い層にアクセスできれば連絡網が手に入り、誰がいくらで買ったかの情報がすぐにわかる。そういうところにも注目している印象があります。

一方、海外に移住した後に利益確定した人に関しては、国税局としても本当に税金が取れるのかはまだ模索中だと思います。

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インタビューの3記事目では、移住のフローや海外の住宅事情などについてお話を伺います。

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