「投資先や時間軸を分散させなかったことが一番の失敗」不動産投資家・夏目氏 3/4

業界再編を予想して買収されそうな会社の株を買い、M&Aで株価が上昇するのを待つという手法で資産を増やす一方、不動産投資も手掛ける夏目氏。新型コロナ禍によって収入は落ちているが、巻き返しに向けて新たな物件の購入も検討しているという。そんな、夏目氏に成功談や失敗談、現在のマーケットの見方などを聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

夏目氏(仮名) プロフィール

大学を卒業後、伊藤忠に入社。その後大手百貨店、食品メーカーを経て現在は不動産投資及び農業に従事。10代から株式投資を開始し、最大で1,000万ほどを運用。その資金を元手に不動産投資を開始。現在は地方にてスナックビルを3棟、7階建てのマンション1棟、区分マンションを保有。

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いい物件を紹介してもらうために不動産業者との関係性は重要

――これまでの投資の中で、印象的な成功談を教えてください。

成功談と言えるものはあまりないですね。自慢できることと言えば、最初に日本電産の株を選んだことですかね。

社長の講演内容を父から聞いて、株を買った。どのような理念ややり方で会社を経営しているかで投資先を選ぶことも大切だと思います。

流通会社の株を選ぶときも、社員教育や普段の取引先との対応などを参考にしましたが、経営の強さはそうしたところに現れると思います。

――不動産投資ではどうでしょう。

これは儲かったという話ではないんですが、信頼できる不動産業者を見つけられたことですね。

私は最初、投資する物件をインターネットで探していたんです。でも、本当にいい物件はそこには載っていない。

そこで、実際に現地に足を運んで、地元の不動産業者にたくさん会いました。自分はこんな人間で、こんな理由で物件を探しているんだということを説明した。

そうしているうちに、地元の主みたいな不動産屋さんと知り合えたんです。夫婦と息子でやっているような小さな不動産屋ですけど、そういうところにいい情報は集まってくる。

そんな人と懇意になれれば、これはいい物件だからあいつに話を流してみよう、と思ってもらえます。そうすれば、ネットや情報誌には絶対に載らないいい物件を入手できることになる。

そういう人と知り合えたのは、不動産投資を得るうえでよかったと思います。

――良い情報を得るためのネットワークが重要なんですね。

逆に言うと、そういう情報ルートを持たずに、表にでてくる情報だけではなかなかうまくいきません。

私に不動産投資を教えてくれた人もいろんな人に同じような話をしていて、やはりやってみたいという人がいるのですが、うまくいく人ばかりではない。

失敗した人についての話も聞かされますが、東京から地元の不動産業者に電話してろくに調べもせず契約を済ませるような人はうまくいかないようです。

人間関係を築いて相手に信頼されることが大切なんですね。

実際、不動産業者との付き合いは仲介してもらって終わりじゃないですよね。入居者の紹介や物件の管理などお願いしなければならないことはたくさんあります。

ですから、不動産業者との関係を疎かにすると、不動産投資は失敗することが多いのではないかと思います。

投資先や投資の時間軸は分散させておく必要があった

――失敗談はありますか。

それは、なんといっても新型コロナ禍の前に、飲食店向けのビルを買ったことでしょう。最初に買ったのは2017年12月で、それから翌年の3月と4月に購入しました。

当時はまだ、新型コロナなんて予想もできない時期でしたから、最初は順調にテナントも増えて40%のリターンだなんて、浮かれていました。

たとえ指南役がいたとしても、これはいけなかったですよね。

それまで株式投資で稼いでいた元手の資金のほぼすべてを飲食店ビルにつぎ込んだ。それもスナックビルです。

投資先や投資の時間軸は分散させておく必要があったし、せめてアパートやオフィスビルなど飲食店以外の入居者を見込める物件も入れるべきでした。

悪いことに、当時は金融機関もけっこうお金を貸してくれたんですよ。お金が借りられなかったら、購入もあきらめていたんでしょうが。

――どうしてスナックビルばかりを購入しのたですか。

前述の不動産投資をやっている指南役的な人から、古いビルを買ってオーナーになれば儲かるという話を聞いて盛り上がったんです。

その人はスナックビルだけでなく、中華料理店や焼き肉屋などの飲食店が入るビルも持っていました。とにかく古いビルを安く買って、テナントに貸すというやり方です。

そのときに、その中で一番利回りのいいのは何かという話になって、それは間違いなくスナックビルだという話だったんです。それで私も、じゃあ、それをやるわ、ということで立て続けに3棟も購入してしまいました。

――そして新型コロナの影響をもろに受けてしまった。

そうですね。ビルのオーナーにとって一番いいのは、空室が無くて、どの入居者も長く使い続けてくれることなんです。退去や入居があると余計な出費もかかりますから。

それが、新型コロナの外出自粛で次々と退去したり、入ってもすぐに退去、などとなってしまったのですから大変です。

利上げをしなければ円安は進み輸入価格がさらに上昇するが、スタグフレーション禍で日本は利上げができるのか

――株式投資や不動産投資を行う環境として、現在の経済をどう見ていますか。

不動産投資でいえば、客商売のテナントに貸すのは、しばらく厳しいでしょうね。スナックビルのほうは、景気の回復をしばらく待たなければならないでしょう。

だから、今度は倉庫が狙い目だと思っているんですよ。法人に安定して長く使ってもらえるし、宅配事業が急激に落ちこむことはないでしょうし。

――株式はどうですか。

日本経済の先行きが不透明なので、株式投資は怖いと思います。

今、円安で輸出企業の業績はよくなるだろうと言われていますけど、期待できるのは半導体の製造装置くらいではないかと思います。かつて強かった外需関連企業が復活できるのかというと、難しいのではないでしょうか。

かといって、内需は円安や世界的なインフレで輸入品の価格が上がっているのでインフレも強まり厳しいでしょう。

政府目標の2%のインフレ率を達成したときに、給与所得が増えていないスタグフレーションなのに利上げができるのか。でも、利上げをしないと円安は進んで、輸入価格がさらに上昇して行く。

どこを見ても非常に厳しい状況です。そういった意味で日本国内の株式への投資はネガティブに見ています。

日本は大不況時代に突入する恐れも

――日本経済の先行きはかなり悲観的ですか。

スーパーや百貨店など、小売業界の人とは今も付き合いがあるのですが、原材料から仕入れ値、店頭販売価格まで、上昇が止まりませんね。

2024年の小売業界の決算はかなり悪化すると思います。

日本は大不況の時代に突入するんじゃないかと思っています。

ーー2024年から小売業界の決算は悪化するとの予想ですが、2023年はそれほど悪化しないのでしょうか。

2022年はそこまで消費支出下がってないですし、価格転嫁できない一次産業の生産者、二次産業の加工品メーカーが泣いてる状況だと感じています。

2023年中に既に予定されている乳価格改定からスタートして、これまで値上げのタイミングを逃していた一次・二次側が値上げのトレンドに乗って上げてくると実感があります。

小売で大量消費する電気ガスなども基本的に長期契約で、2019年までに巻いてる現行契約がおそらく3-5年縛りなのでこれから納入単価アップに入るだろうと。

そして国内景気は悪くなる。消費はしんどくなる。

なので、2023年中の数値が顕在化してくる翌年の決算から厳しいだろうという見込みです。

――そんなときに、株の空売りをしてみようとは思わないのですか。

思いますね。でも、レバレッジかけて空売りをして、大失敗したことがあるんです。

下手に手を出すものではないと思って、2度とやらないと決めたんです。追証まで取られて、本当に怖いと思いました。

儲かりそうだと安易に手を出してはいけませんよね。ちゃんと仕組みを理解したうえで、やらないと。

株価が下がるときは売りからはいればいい、と簡単に考える人もいますが、軽い気持ちで空売りするのはやめたほうがいいです。

円安やインフレで農業も厳しい状況が続く

――農業の立場から見ても、日本経済は厳しいですか。

円安で、国際競争力が出てくると言う人もいますが、そう簡単ではないですよね。

農業にしても畜産にしても、肥料や飼料の値段が上がって、今の値段を維持するのは難しい状況です。私はイチゴ栽培ですが、石油価格の高騰でビニールハウスの暖房費が大変です。

牛乳などは生産者を保護するために、国が補助金なども出していますが、今の状況が続くと生産者は大変ですよ。国もいつまで生産者を守り続けられるか、酪農家は不安でしょう。

いま牛乳は1リットル230円、安いものは190円くらいで売ってるんですが、3年前までは150円ぐらいだったんです。

どのスーパー行っても高くても170円ぐらいだったんですよ。つまり50円上がってるんですね。たぶんこれから300円くらいまで上がります。

編集者注:乳価改定に伴う牛乳の販売価格引き上げについて

編集者注:令和4年度用途別原料乳価格等について

輸入小麦も政府が一括して買い付ける仕組みで、価格を安定させようと2022年は17.3%の価格引き上げでしたが、いつまでも政府が耐えられるとは思えません。

また、世界人口はまだ増加しますが、小麦の全世界的な供給力には限りがあり、需要のほうが強いトレンドです。

総合的に見て下がる要因が見つからないです。

編集者注:輸入小麦の政府売渡価格の緊急措置について:農林水産省

編集者注:2022年4月からの小麦の価格について | 日清製粉グループ

――農産物は価格転嫁が難しいですよね。

農産物は主に競りで価格が決まりますから、自分たちで値段をつけられません。

それに、小麦や牛乳の値段が上がると、ケーキ屋さんも影響を受けますね。生地や生クリームなどのコストが高くなってしまいます。

小麦の値段は政府の政策案件なのでゆるやかな上昇に留まっていますが、パンやパスタもいずれ上がりますね。

――米国経済はどう見ていますか。

今、急ピッチで利上げをしていますが、これはやはり新型コロナ対策で、かなり金融緩和が進んだ反動でしょうね。

インフレをコントロールできるかどうか、難しい局面だと思います。

日本は利上げが難しそうなので、ドルも少し利下げしてくれれば、円安も少しは収まるのでしょうが、それは米国内の経済次第ですからね。しばらくむずかしいのではないでしょうか。

――しばらく円安が続くのであれば、ドルを持っておくのも一つの手ですね

そうですね。資金があれば、ドルにも振り分けるのですが。しかし、私の資産は「スナックビル建て」ですから(笑)。スナックビルの価値が上がらないことには、動きようがありません。

本業のイチゴ栽培のかたわら、投資に取り組んでいる夏目氏。次回は、投資に向いているタイプや投資を目指す人へのメッセージなどをお聞きします。

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