伊藤忠と株式投資を経て、不動産投資と農業に従事する不動産投資家インタビュー 1/4

高校生の頃から株式投資を始め、30代半ばとなった今は地方都市で農業をするかたわら、不動産投資を行っている夏目氏。今は新型コロナの影響で厳しい状況が続いているが、一時期は年40%のリターンを得ていた。

株式投資や不動産投資は実際に現場に足を運び、自分の目で確かめることが大切だという夏目氏に、投資を始めたきっかけや株式投資に関する考え方を聞いた。

インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

夏目氏(仮名) プロフィール

大学を卒業後、伊藤忠に入社。その後大手百貨店、食品メーカーを経て現在は不動産投資及び農業に従事。10代から株式投資を開始し、最大で1,000万ほどを運用。その資金を元手に不動産投資を開始。現在は地方にてスナックビルを3棟、7階建てのマンション1棟、区分マンションを保有。

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ライブドア堀江氏を見て投資に興味

――投資を始めたのはいつ頃ですか。

高校生のころです。

当時、ライブドアの代表だった堀江貴文さんがニュースでも大きく取り上げられていました。

近鉄バファローズの買収交渉とか、フジテレビの敵対的買収騒動などを見ていて、株式投資に興味を思ったのがきっかけで、家族と投資について話すようになったんです。

父も父方の祖母も投資をしていて、祖母は毎日ラジオで株式市況を聞きながら、広告チラシの裏に株価をメモしているような人で、筋金入りの投資家です。そんな影響もあったのかもしれません。

ある日、父が経営者向けのセミナーで日本電産の永守重信社長(現・会長)の講演会に参加してきました。

講演会に参加した父は永守さんを絶賛し、私が日本電産の株式に興味を持ったところ父から発破をかけられ実際に買ってみることになりました。

当時は、未成年は証券会社で口座を開設できず父の名義を利用させていただきました。資金については祖母からお金を借りました。

買った後、すぐに上がりましたね。2カ月くらいで利益確定して売ってしまいましたけど、そのまま持っていればよかったですよね。

――その後は、どのような株を買っていたのですか。

国内企業の株を買っていましたが、上がったり下がったりで、それほど大きな利益は出ませんでした。大学時代はFXや外国株投信などもしました。大学を卒業するまでの成績はトントンくらいでしたね。

株で買っていたのは、飲食株で丸亀製麺などを展開しているトリドールや、かごの屋や磯丸水産のクリエイト・レストランツでした。オペレーションに競争力があり、積極的に事業展開していて、業績は当面下がることはないだろうと見ていました。

買いのタイミングとしては、短期的に株式の需給のバランスで下がるタイミングを狙って買っていました。機関投資家の決算時期で夏前に株価が下がることが多くそこで買ったりとか。

それで買って、値上がりしたら売って利益を出すという感じでした。

伊藤忠を経て、会社員を辞めて不動産の収入と農業で生活

――大学を卒業した後は商社に就職したのですね。

伊藤忠に入って、食品原料の輸入の部署に配属されました。

取引先から数カ月先までのオファーを受けて、海外の業者から買い付けるというのが仕事で、1本の電話で2,000万円、3,000万円の取引をしていました。

取引先から事前に最高買い付け価格を預かり、その範囲内でオーダー通りの肉を買い付けます。事前に預かっていた買い付け価格より安く買い付けできれば、その差分が会社の収益になる。

3%くらいの鞘が抜けることが多かったですね。投資のアービトラージに似ているかもしれません。

そこに2年半いた後は食品メーカーの担当になって、メーカーの商品を企業に売り込む仕事をしていたのですが、1年後に百貨店に転職し、バイヤーや商品企画の仕事をしました。

そこには3年ほどいたのですが、取引先の食品会社から「営業担当者として来てくれないか」という話をいただいて転職しました。

――食品会社で働いた後、セミリタイアされたんですね。

3社目で働き始めて3年目に会社が大手に買収されて、営業部門が買収企業に統合されることになったんです。

大手企業側で採用してもらえるという話もあったのですが、「もう会社勤めはいいや」という感じで退職することにしました。

当時は既に不動産投資をしていて、FIREと呼べるほどではありませんが最低限の収入は確保できていましたし、たまたま、勤めていた会社が妻の出身地から近くて、妻の伝手で農業の手伝いもできそうだったということで、決断しました。

それでいまは地元の伝手で始めたイチゴ栽培と不動産収入で細々と生活しています。不動産収入は新型コロナの影響で激減していますし、農業は肥料や石油の価格高騰などで大変です。

株式は売買よりもリサーチ時間のほうが楽しい

――就職した後も株式投資は続けていたのですか。

食肉輸入の部署のときは、海外の取り引きが中心なので、時差の関係もあって、かなり忙しかったんです。ですから、ほとんど株を売買する余裕はありませんでした。

株を再開したのは異動してからで、百貨店に転職してからは時間もできて本格的に再開しました。百貨店は昼間の仕事なので、夜は時間があって勉強もかなりしました。

勉強する時間は1日2,3時間程度でしょうか。勉強は苦にならなくて、むしろ楽しかったです。

株を売買するよりも、どんな銘柄がいいだろうかと勉強している時間のほうが楽しいくらいです。実際に買ってしまうと値動きが気になって、つらい時間のほうが多いですね。

ーーどのような株式を売買していたのでしょうか。

買っていたのは、商社や銀行、小売業などでした。商社は実際に働いていたので、同業者の実情などもある程度わかります。元気で勢いがある商社の株などを買いました。

基本的にはファンダメンタルズを見て売買する銘柄を決めています。

経営方針がしっかりしていて財務も健全なところは、一時的に株価が落ち込んでも、いずれは値を戻して上昇していく。安くなったときに買って、高くなれば売るというオーソドックスなパターンです。

銀行や小売業界の再編に注目

――銀行株を買った理由はなんですか。

2010年頃ですが、ネットバンキングが急速に普及してきた時期で、「今の銀行はいくつかのグループに再編されていくだろう」という記事を読みました。

一定確からしい主張であると思い、本当に再編していくとしたらどのように再編していくのかを考えました。

それでおそらく地方銀行は地域ごとに大きな地銀を中心にまとまっていくのではないかという仮説を立てました。

たとえば九州なら、福岡を中心に周辺の県の銀行を巻き込んだ再編になっていくはずで、福岡以外の県で吸収される側になりそうな銀行の株を買えば、買収前に株価は上がっていくのではないかと。

会社の買収は最終的にTOB(公開株式買付)で10-20%のプレミアムをつけて買い取られることが多いですからね。

実際、経営統合や吸収合併があって、結構利益が出ました。東北や中国地方などの株を買いましたが、特に九州は結構予想があたりました。

――それは安いうちに買っておいて、経営統合などが発表されたタイミングで売るということですか。

そうです。地銀の中でも経営基盤が弱そうなところを選んで買って、後は売る時期を待つというやりかたです。

経営統合などが近づいてくると、事前に情報が漏れているのか、じわじわと株価が上がることがあります。それで、ある程度上がったら利益確定をするというやり方です。

買ってから1,2年塩漬けにしていた銀行株が急に上昇し始めるということもありました。

ふくおかフィナンシャルグループ傘下の銀行に経営統合された十八銀行や、徳島銀行と経営統合した香川銀行などはうまくいきました。最近ではSBIホールディングスがTOBで子会社化した新生銀行ですね。

もちろん、経営統合やTOBの発表などが実際にあったら株価が急上昇して「売り抜けるのをもう少し待てばよかった」と思うこともあるのですが、そんなうまく情報をつかんだりタイミングを狙うのは至難の技なので。

管理体制や人事教育が行き届いていない会社は経営的に弱い

――再編を狙うというのは、銀行株だけですか。

あとは、小売り業界ですね。商社で食品を扱っていましたし、百貨店や食品メーカーでも働いていたので、小売業界もだいたい実情は分かるんです。

特に、食品メーカーで全国を営業で回っていましたから、会社の管理体制や人事教育の方針なども分かります。やはり管理体制や人事教育が行き届いていない会社は経営的に弱いですね。

例えば、なんらかの商品を提案した際に、二つ返事でOKし購入の意思決定をするような会社はあまり魅力的とは言えません。

「お宅のライバル会社にはこんな商品があって、これくらいの価格だけど、お宅はまだまだだね」などと取引一つとってもシビアな反応を示すところは、やはり株価も強い。

具体でいうと、九州を中心にドラッグストア「ディスカウントドラッグ コスモス」を展開しているコスモス薬品は当時強いなと感じました。

私は、逆に経営が弱そうな会社の株を買っていたのですが、イオングループのマックスバリューなどによる買収や経営統合でかなり恩恵を受けました。

――経営基盤の強さというのは、バイヤーや営業などの仕事の中で情報を得るのですか。

百貨店のバイヤーは、年中全国を回っているんです。ですから、地元のスーパーやドラッグストア、地方銀行には嫌というほど足を運びました。その中で情報を得ることもありましたね。

銀行は一般の窓口に足を運んでも、あまり役に立つ情報はありませんでしたね。半分趣味で出張先の地銀で口座開設の申請をしてみたりしてましたが、特にその中で学べるものはありませんでした。

私はテクニカル分析ではなく、ファンダメンタルズを重視していますので、実際の業績を調べるだけでなく、実際に自分の目で見ることを大切にしています。現場に足を運ぶことは、投資でも大切なことだと思います。

経営統合やTOBなど業界再編の動きを利用して資産を増やした夏目氏。次回は不動産投資を始めた経緯や実績などについてお聞きします。

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