「テクニカル分析は単独では使えない」行動ファイナンス理論から学ぶトレードの考え方 1/4

会社員をしながら仮想通貨のトレードを行っている兼業トレーダーのショウ氏 。ショウ氏は、十数年ほど前からFXや株取引を趣味程度に行っていたが、コロナ禍でリモート勤務が増えたのを機に、本格的に仮想通貨のトレードを始めた。2021年11月にはプログラミングの知識を生かして天井買いや底値売りなどの行き過ぎた新規売買(いわゆる突っ込み売買)の状況を判断するためのツール「突っ込みインジケーター」を開発。トレーダーの注目を集めている。そんなショウ氏にトレードを始めたきっかけや考え方などを聞いた。

ショウ氏 プロフィール
国内大手企業勤務。理系の大学院を卒業後に就職。会社では主に新規製品開発関連の業務に従事。トレード歴は10年以上、直近はビットコインをトレード。プログラミング知識を活かして開発した「突っ込みインジケーター」を開発、一般にも販売し自身のトレードにも活用している。Twitterアカウントは https://twitter.com/SkycloudSpring
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

興味半分で始めたもののほとんど勝てず

――経歴やトレード歴を教えていただけますか。

本業は金融とは全く関係の無い国内大手企業の会社員です。理系の大学院を卒業した後に就職して、ここ数年は新規製品開発関連の仕事をやっています。

投資やトレードに関心を持ち始めたのは、入社3年目くらいの頃ですね。別に金融に興味があった訳ではなく、「お金を増やせないかな」と思ったのがきっかけです。株やFXを試しに始めてみました。

――最初はどうでしたか。

さっぱり増えませんでしたね。FXでコツコツと利益を重ねて、ドカンと損をするみたいな感じが多くて、1年くらいでやめてしまいました。

それから2、3年後に再び始めて、3、4年くらい断続的にやっていたのですが、また、しばらくやめて、という具合です。2017年頃に1回ビットコインもやったことがありますが、半年くらいでやめてしまいました。

この頃は、流行っているから、自分もやってみようという感覚でした。だから、何も考えずに感覚だけで取引をしていて、振り返ってみると、バカなことをしていたと思います。

本格的に、相場を分析してトレードを始めたのは2020年ごろからで、ほんの最近のことです。

――断続的にやっていた頃は、何を手がかりにトレードをしていたのですか。

雇用統計などのファンダメンタルやテクニカルの指標は見ていました。雇用統計などで事前予想とは違った結果が出た時に値動きがあったら、それについていくという感じで。

どうして上がったり下がったりしているのか分からずにトレンドについていったら、突然、反転して損をするという、初心者にありがちな失敗を重ねていました。

――損をしたらやめて、しばらくしたら始めるということを繰り返していた?

そうですね、損をしたら「やっぱり難しいな」と思って、一旦やめて、2、3カ月して資金ができたら再開するという感じでダラダラと続けていました。それに、本業があるので、仕事が忙しくなるとトレードをやっている余裕もなくなって、しばらく休むということもありました。

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新型コロナ禍を機に本格的なトレードを開始

――2年ほど前から本格的に始めたのも、仕事に余裕ができたからですか。

そうです。やっぱり新型コロナの影響で、仕事もリモートワークになったので、余裕ができました。毎日通勤していた頃は、行き帰りだけでヘトヘトになってしまうこともありましたが、仕事を終えた後も気力と体力が残っている感じで。

そこで、余裕もできたので、きちんと勉強してトレードに取り組もうと思いました。

――長い間、断続的にトレードを続けてきたのは、やはり好きだったから。

嫌いじゃないんでしょうね。どちらかと言えば、面白いというか、魅力を感じていたんだと思います。でも、それよりも収入を増やしたいという気持ちですね。

サラリーマンとして一生懸命遅くまで働いても、急激に給料が増えるわけではない。ものすごい成果を出して、売り上げを伸ばしたり業績改善に貢献したりしても、ボーナスがいつもより10万、20万円多いぐらいのリターンしかありません。残業しても手当は1時間あたり数千円です。

でも、トレードだと、しっかり勉強や分析したりした成果がそのまま利益に直結します。そこに面白さや魅力を感じました

――勉強しようと思って、まず何から始めたのですか。

トレーダーのTwitterを追ったり、いろいろと調べたりしていく中で、botの存在を知りました。

僕は学生時代にプログラミングを勉強していたので、これなら作れるんじゃないかとbotづくりを始めました。botをつくるために、ようやくデータや指標の見方も今までよりは真面目に勉強し始めましたね。

botづくりは独学でしたが、プログラミングは分かるので、何をしたら良いのか、イメージは直ぐに浮かんできました。

後は、取引所のAPIで約定履歴や出来高などのデータを取って、借りたサーバーにそうしたデータを全て入れて分析したりして、そんなことを1年ほどやっていました。

――それで勝てるようになったのですか。

全然駄目でしたね。

一応、テクニカル指標を活用しようと「中長期の移動平均線がデッドクロスしたら売って」とか「ゴールデンクロスしたら買って」みたいなものを作って、うまくいかないと、フィルターを掛けてみたりして。

移動平均線の角度が急になったらキャンセルするとか、緩やかなときには一応エントリーを継続するとか、そんなフィルターみたいなものもいろいろ試したのですがうまくいかない。

そこで「テクニカルの指標だけ見ても駄目なんだ」と考えるようになりました。だから、僕は今でもテクニカル分析だけでトレードすることはありません。

――テクニカルだけでは駄目だと気づいたのが転換点だった。

いくらデータを集めて分析したところで、何で相場が動くかという根本のメカニズムを理解しなければ無駄だと考えました。そこで、仮想通貨特有の指標の意味を一つずつ調べて、それが何を意味するのか、相場は何によって動くのか、といったことを勉強し始めました。

振り返ってみると、そこでようやくスタートラインに立ったという感じですよね。

botを作るときに、たとえば移動平均線から何%乖離したら、反転を狙ってエントリーすると決めたとします。

そこで、移動平均線から下に5%乖離したところで買いを入れると設定して、実際にやってみてうまくいかなかったら6%、7%と別の数字を試してみるのですが、結局、それで一時的に勝てたとしても5%とか6%、7%という数字について、「なぜ」ということを説明できないんです

うまくいかないから数字を変えているだけで、それで一時的に機能したとしても、たまたまうまくいったというだけです。

相場ですから、数字に正解はないのですが、少なくとも自分なりのロジックで、その数字や相場の動きについて説明できなくてはならない。そう考えたのが、僕にとっての転換点でした。

チャートの向こう側には無数のトレーダー

――試行錯誤の上で、市場のメカニズムにたどりついたのですね。

行動ファイナンス理論の本を読んだときに、まさに目からウロコ、という感じでハッとさせられました。「ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて」という本でしたが、「相場の動きは正規分布にならない」ということが書いてあったんです。

僕は今まで、相場の値動きは統計を取れば正規分布になると思っていた。そもそも統計手法というのは、モノゴトの挙動が正規分布になることを前提にした考え方です。

つまり、値動が正規分布に従った挙動していれば、分布の中央から離れていくにつれてそのような値動きが発生する確率は低くなっていく。大きく離れると、確率的にはほとんど考えなくていい、ということになるのですが、実際の相場では正規分布から外れた値動きがしばしば起こる。

まさに、そこで初心者はコツコツ積み上げた利益をドカンと失うわけです。

だとしたら、テクニカル分析は単独では使えない。そこに気づきました。

正規分布では3-5σでは0に近い数字となっているが、べき分布では3-5σでも一定の数字が存在している。引用元:「べき分布」で考える株式投資

――テクニカル分析の数字は役に立たない?

例えば、「中長期の移動平均線がデッドクロスもしくはゴールデンクロスしたら、短期トレンドの転換点だ」とか言われたりしますけど、デッドクロスやゴールデンクロス自体がトレンド転換の要因になっているわけではなく、なんらかの理由で売りたい人や買いたい人が多くなっていたりして売買行動が変わってきていて、それが結果としてデッドクロスやゴールデンクロスとしてチャートに表れている。

要はチャートの向こう側には無数のトレーダーがいて、その人たちがトレンドを作る。結局、トレードの相手はチャートではなく人間。お互いに自分が勝とうとチャートを通して騙し合いをしているんです。

だから、数字や指標だけ見ていると、いつまでも敵であるトレーダーに出し抜かれてしまう。

――すると、何を見て判断をするのですか。

売買の偏りとか歪み、市場の過熱感とかです。いろいろな方法で判断することができると思いますが、例えば面白い方法としては何人かのインフルエンサーのTwitterをフォローして、市場の過熱感を読むというやり方でした。

4桁や5桁の多くのフォロワーを持つインフルエンサーが相場について発信すると、そのフォロワーがそれにつられて売り買いをしていることが反応からわかる時がありますが、そこで相場が突然反転するということがあります。

上手い人はその波に乗って稼いで、反転直前にポジションを閉じるのでしょうが、ミラートレ―ドなどで何も考えずについていっているだけの人は逃げ切れずに大損をしてしまう。

そういう兆候を見つけて逆張りをするというやり方を一時期、よくやっていました。

ショウ氏のツイート。相場に対する独自の意見を投稿している。

――それで勝てたのですか。

うまくいくときも、失敗することもありました。そこは騙し合いなので。しかし、データなどと付き合わせて見てみると、明らかに突っ込み相場になっているなとわかる時があって、そのような時にはしばらくした後に勢いをつけて反転することがありますね。

こういうときは、テクニカル的には絶好の売買の場面だったりするわけです。テクニカルしか見ていない人は、「まだまだいける」と突っ込んでいくので、一旦反転すると、ロスカットを巻き込んでどんどん加速していきます。今の僕のトレードは、そうした歪みや偏りを見て、逆張りをするという手法が多いですね。

そうやって勝てるようになってきたのは、2021年の5月くらいからですね。

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