「個人投資家がファンド・オブ・ファンズを利用する明確なメリットは小さい」ファンドマネージャー・前田氏 1/3

ファンドマネージャーの前田氏(仮名)に、ファンド・オブ・ファンズの仕組みについて伺いました。

ファンドマネージャー 前田(仮名)氏 プロフィール

国内外の運用会社において20年超のキャリアを持ち、日本株ファンドをはじめあらゆるマルチアセットクラスの運用経験を持つ。

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マルチでない一種類の外国株ファンドでもファンド・オブ・ファンズで運用されることが多い

ーーファンド・オブ・ファンズの仕組みについて教えてください。

まず前提として、ファンドにはマザーファンド形式とファンド・オブ・ファンズ形式の2つがあります。

まずマザーファンド形式ですが、これは主に日本株の投資信託において、マザーファンドと呼ばれる一つの大きな母体の下に複数の口座がぶら下がり、そこでそれぞれ投資をしている形態を指します。

参照:「マザーファンド」「ベビーファンド」って何?|ふくろう教授の投資信託ゼミナール

一方のファンド・オブ・ファンズ形式は、複数のファンドを統合して一つのファンドとして運用する形態です。

参照:複数の投信を組み入れて運用するファンド・オブ・ファンズとは何か? | 最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい | ダイヤモンド・オンライン

多くの投資家が、ファンド・オブ・ファンズを株式や債券などの異なるアセットクラスが組み合わさったマルチアセットとしてイメージするかもしれませんが、実際はマルチでない一種類の外国株ファンドでもファンド・オブ・ファンズで運用されることが多いです。

ーー前田さんが携わるファンド・オブ・ファンズでは全体としてどのようなポートフォリオなのでしょうか。

前提として、ファンド・オブ・ファンズは複数のファンドを組み合わせて運用するため、2つ以上のファンドで構成する必要があります。

日本で展開されているファンド・オブ・ファンズでは、ポートフォリオの9割が一つの外国株ファンドで構成され、残りの1割は流動性確保のための外貨や日本円債のファンドで保有されるものが主流です。

外国株ファンドを設立する際にはファンド・オブ・ファンズを選択することが一般的

ーーポートフォリオの9割が一つの外国株ファンドなのですね。ファンド・オブ・ファンズはもっと多彩なファンドでポートフォリオを組むものだと思っていましたので印象が違いました。

これはファンドの成り立ちが影響しますので、組成の背景から説明します。

我々のファンドの販売の窓口となる証券会社や銀行などの販売会社側に、一般のお客様から「インド株ファンドを設立してほしい」という要望があるとします。

すると運用会社である我々のセールス担当がその依頼を受注し、運用担当者が社内でインド株を運用しているファンドを探します。

例えば海外拠点においてインド株を運用している場合はその担当者と連絡を取り、日本でそのファンドに投資するファンド・オブ・ファンズを作ります。

このように、「インド株ファンドを設立してほしい」という要望からスタートしているので、複数のファンドに投資するのではなく、ポートフォリオの9割が一つのファンド、1割が日本円債となるようなファンドの組み方になっています。

ーー事業者から見たファンド・オブ・ファンズの方が好ましいポイントはどこにあるのでしょうか。

ファンド・オブ・ファンズであれば、既存のファンドに追加の資金が投入されるだけで、新たなファンドの設立や管理コストが不要です。したがって、運用会社にとって非常に好ましい選択肢だと言えます。

ファンド・オブ・ファンズのポートフォリオにおいて、インド株が9割以上を占めていれば、それはれっきとしたインド株投資ファンドとして扱われます。このようなファンドを日本で販売することにはお互いメリットがあるため、外国株ファンドを設立する際にはファンド・オブ・ファンズを選択することが一般的です。

外国株式市場では現地の会社との連携が不可欠

ーーファンド・オブ・ファンズにおいて、前田さんの業務はどのようなものでしょうか。

私の主な業務はスキームの構築です。先ほどの例で言えば、海外拠点の担当者と連絡を取り、販売会社からの要望や投資家の投資希望に基づいたファンドの構築や交渉を行います。また、日本国内でファンド・オブ・ファンズの枠組みの設計も担当しています。

一旦枠組みが確立されると、日々のキャッシュフローの監視も行います。入金、送金、解約などでトランザクションが発生した際、適切なキャッシュバランスを維持するために必要に応じてファンドを売却して資金を調達することもあります。

ーー投資先のファンドが適切に運用されているか、または他のファンドに切り替えるかといった、ファンドの評価や見直しは行われるのでしょうか。

可能性はありますが、商品の約款で定められているためインド株のファンド以外に切り替えることはありません。約款の範囲内でほかのインド株ファンドであれば可能性はあります。

ーー実際に、約款の範囲内で投資先のファンドが切り替えられることはありますか。

すべての商品が約款にどのファンドへ投資するかを記載しており、これを変更するには多くの手続きが必要となるので実際にはほとんどありえませんね。

例えば規制当局への届け出や投資家の承認を取得するための投票などコストが大きすぎるので。どうしても投資先のファンドを変えたいのであれば新しいファンドを立ち上げる方が効率的だと判断されることが多いです。

個人投資家にとって、ファンド・オブ・ファンズを利用する明確なメリットは少ない

ーー個人投資家が日本のファンド・オブ・ファンズを利用する場合のメリットやデメリットを教えてください。

多くのファンド・オブ・ファンズは税金の軽減や事務コストの削減など、主に事業者の利益を追求するためのもので、エンドユーザーに直接的なメリットはないでしょう。

ーー先ほど具体例に挙がった、インド株のファンドに直接投資することは可能なのでしょうか。

現時点では、インド株には外国人投資家が直接投資できず、個人投資家が投資する際にはファンドを経由することが一般的です。

この観点から見れば、ファンド・オブ・ファンズを利用することで、個人投資家がアクセスできるようになるメリットはあります。

一方で米国株など、日本の個人投資家が直接アクセスできる市場については、ファンド・オブ・ファンズを利用する明確なメリットは少ないかもしれません。

手数料の話で最も重要なのはどのアセットクラスに投資するか

ーーファンド・オブ・ファンズのファンドへ投資する際、特筆する注意点はないと考えて良いのでしょうか。

前提として、外国株を購入する際、多くはファンド・オブ・ファンズ形式をとっています。これは主に事業者側の都合によるもので、スキームの違いは一般の投資家には影響しないことから、特筆する注意点はないと考えています。

また、ファンドがどの形式であるかは、目論見書や約款を確認しない限り明確には分かりません。

ーー複数のファンドを重ねることで、手数料が二重にかかるのではないかという懸念があります。

例えばファンド・オブ・ファンズ形式の米国株式ファンドの手数料が1.8%かかる場合、外国株式ファンドと円債ファンドの全ての手数料がこの1.8%に含まれています。同様に、マザーファンド形式でも1.8%の手数料に全ての費用が含まれています。

したがって、ファンド・オブ・ファンズが高い、またはマザーファンドが安いということはありません。

手数料の水準は、投資対象のアセットクラスによって異なります。例えば、債券ファンドや人の手間がかからないパッシブファンドは、手数料が低い一方、アクティブファンドはリサーチなどに手間がかかるため、手数料が高い傾向にあります。

そのほか、ファンドの手数料はアクティブまたはパッシブ、株式または債券などの投資対象によって変わります。中でもエマージング市場への投資はアクセスが難しいため、手数料が高く設定されることがあります。

したがって、ファンド・オブ・ファンズ形式のファンドがマザーファンド形式のファンドよりも手数料が高くなるということはなく、どちらかというとファンドの手数料はどのアセットクラスに投資するかによって決まるのです。

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前田氏の全3記事のインタビュー、2記事目に続きます。

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