相場のメカニズム研究でたどり着いた「地震予知と相場の急落予知は似ている」 3/4

会社員をしながら仮想通貨のトレードを行っている兼業トレーダーのショウ氏。ショウ氏は、市場の売買注文の偏りや過熱感を手がかりにトレードを行い、利益を上げている。2021年11月にはプログラミングの知識を生かして、相場での過熱感を判断するためのツール「突っ込みインジケーター」を開発し、トレーダーの注目を集めている。そんなショウ氏に現在の仮想通貨のトレンドについての見方や、これまでに読んでためになった本を聞いた。

ショウ氏 プロフィール
国内メーカー会社員。理系の大学院を卒業後に就職。会社では主に新規製品開発のプロジェクトマネジメントに従事。トレード歴は10年以上、直近はビットコインをトレード。プログラミング知識を活かして開発した「突っ込みインジケーター」を開発、一般にも販売し自身のトレードにも活用している。Twitterアカウントは https://twitter.com/SkycloudSpring
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

インタビュー内容

  • 最近の仮想通貨のトレンドをどう見ていますか。
  • 現物は持たないのですか?株などの長期保有とか。
  • 「よく分からない」という仮想通貨でトレードをされるのは、なぜですか。
  • その中でトレード対象としてビットコインを選んだ理由は何かあるのですか。
  • お勧めの本はありますか。

いまだに評価の軸が定まらない仮想通貨

――最近の仮想通貨のトレンドをどう見ていますか。
難しいですよね。新型コロナ禍に対する世界各国の金融緩和などの経済対策でコロナバブルが起きたと言われていますが、結局、金余りが起きているということですよね。

過去のリーマン・ショックなどを見ても分かるように、金融システムが損傷するとアメリカをはじめ世界中が痛い目に遭う。

だから、今回は新型コロナウィルスの感染拡大によって金融システムが損傷して、再び不況に陥ったりしないよう、先進国が協調して対策を取ったわけですけど、対策が過剰になってしまっている部分があると、僕は思っています。

――必要以上の金融緩和で、世界中がカネ余り状態になっていると。
最近までは新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、各国が経済活動自体に制約をかけ、経済が停滞していました。

だから、カネ余りでも需給バランスがとれていて問題はなかったのですが、ワクチンの接種も広がったことで感染拡大も治まり、社会が通常に戻りつつある中、需要が急拡大したにもかかわらず供給が追いつかない。

さらにカネ余りからインフレが急激に広がり始めたため、各国の中央銀行が急いで金を回収し始めているというのが現状だと思っています。

ですから、僕は市場も基本的に逆回転し始めているというのがトレンドのベースにあって、おそらく多分ビットコインだと、いずれ100万円切るところにまで値を戻していくのではないかと考えています。

実際、もうかなり下落してきていますけど、ただ、100万円を切るところまでいくかどうかは一つのポイントだと思います。

2022年7月時点でのBTCの5年チャート。2021年の12月から大きく価格を下げている。引用元:tradingview.com

なぜなら、ビットコインとか、イーサリアムとか、社会インフラの役割を担ってきている部分がありますよね。ビットコインを組み込んだETFや投資信託もありますし、イーサリアムならNFTとか、そうしたところに組み込まれつつあることが、社会にどの程度影響を及ぼすのかを見極めなければならない。そこが、今後、大きく下落するかどうかのポイントだと思います。

数年前までは、仮想通貨といえば、一部の人の投資や投機のアイテムという位置づけが大きかったと思います。しかし、仮想通貨の役割が本当に広がっているのであれば、以前の水準まで戻らない可能性もある。

そこがどうなるのかな、というところを見極めたいですね。

――現物は持たないのですか?株などの長期保有とか。

株はいくつか持っていますね。最近ちょっと資金が増えたので、長期目的で少し持ったりもしています。ただ、ビットコインの現物は持っていないですね。

ビットコインは短期トレード目的というイメージで、長期的な信頼性に対してはまだ少し懐疑的です。懐疑的というか、よく分からないっていうのが、正直な気持ちですかね。

一時期、ビットコインがデジタルゴールドなどと呼ばれて、「インフレのときこそビットコインだ」みたいな言われ方をしていましたが、今のインフレの中で、どんどん下落していますよね。

そうして意見が分かれるということは、通貨的な役回りをするのか、資産的な役回りをするのか、もしくはそれ以外の役回りをするのか、ビットコインに対しての期待の部分がまだ定まっていないのだと思います。

確かに一部では、「仮想通貨は法定通貨に代わるものだ」「エルサルバドルなど一部の国では法定通貨にする動きもある」と言う人がいて、通貨としての価値を見出している人たちもいます。

一方で、実際に投資信託に組み込んで売り出す金融会社もあったり、株式や債権、投資信託や商品などの金融資産としての価値を見出している人たちもいます。さらに、イーサリアムのようにNFTのベースになって、通貨や金融資産とは少し違った価値として認識している人たちもいます。

このように、通貨なのか、金融資産なのか、またその他の役割をするのかという評価がバラバラで定まっていない。それでは、社会情勢がこう動いたからビットコインの価値はこうなるっていう判断ができないと思います。

だから、長期的な先行きを予測するための判断の軸を持てない。長期で持つのは怖い、と思います。

さまざまなデータを生かせる仮想通貨トレード

――ビットコインについて根本的なことを考えているのですね。

通貨は国の金融政策によって、ある程度見通せますよね。今、日本円がすごく安くなっていますが、それは日本の金融政策と海外の金融政策との差が、そのまま表れていると考えれば、しばらく円安は続きそうだという判断ができます。

でも、仮想通貨には、そうした判断基準となるわかりやすい軸がない。だから、中長期の判断はできないというのが僕の考えです。

この先さらに落ちていくのか、それとも一回底を打った後、再び上昇していくのか。聞かれても、正直なところ分からないですね。

――「よく分からない」という仮想通貨でトレードをされるのは、なぜですか。

短期の取引で考えれば、仮想通貨の相場はいろいろなデータが参考にできます。しかし、為替だとテクニカルしかありません。ファンダメンタルズも参考になると思うのですが、ファンダメンタルズって、結局分からない。だから、為替で短期トレードをするのは難しいのかな、と思っています。

しかし、仮想通貨の場合だとテクニカルだけでなく、「買い」がパンパンに膨れ上がっているから、そろそろ下落する可能性が高いなとか、そういう短期的な見立てが立てやすいというところですね。

――その中でトレード対象としてビットコインを選んだ理由は何かあるのですか。
そこは、あまり深い理由はなくて、僕の頭がそんなに良くないので、何種類もの仮想通貨を追えないということですかね。

「分散投資のほうがいい」とも言われますが、全部追えないので、片方がプラスで、こっちがマイナスみたいになると、メンタル的に耐えられないかもしれません。

例えば、ビットコインは「売り」で、イーサリアムは「買い」みたいなことも、時と場合によってはしなければならなくなる。

そうしたときに、両方が連動し始めると、どちらかが逆走することになるので、果たしてクローズしたほうがいいのか、もしくは持ち続けたほうがいいのか、考えが整理できなくなってしまうんです。複雑な話を整理して考える能力がないということですかね。

実際には、複数の仮想通貨をトレードしたこともありますが、短期的にはなんとかなっても、中長期ではやっぱりうまくいきませんでした。やはり向いてないということなのでしょう(笑)。

地震予知や気象予報は相場予測に似ている

――本を読んだことで、トレードに対する考え方が変わったということでしたが。
行動ファイナンス理論の「ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて」という本を読んで、市場メカニズムについて考えるようになったと話しましたが、あとは「経済物理学(エコノフィジックス)の発見」という本も大変参考になりました。

読んだことがなければ、ぜひ読んでいただきたいですね。一読すると、相場に対する見方が変わるんじゃないかと思います。おすすめの本ですね。

マーケットの魔術師」も面白いですよね。どちらかというと、トレードをする際のメンタルを学べる感じがしますよね。

――ほかにお勧めの本はありますか。
変っていると言われるかもしれませんが、地震予知など地震に関する本とか、気象予報に関する本も好きで、相場を考えるうえで参考にしています。「地震前兆現象を科学する」という本は特に参考になりましたね。

地震予知と、相場の急落の予知は、似ているところがあると思うんです。僕のトレード手法の考え方に通じるところがありますね。ただ、その考え方をそのまま指標にしてトレードに生かせるかというと、それは難しいのですが。

天気予報なども似ていて、例えば1時間後の相場を当てることはそれなりにできても、3日後の相場を当てるのは難しい。それと同じで、天気予報も翌日の天気を当てる確率は高いけれど、1週間後の天気を当てようとすると確率はかなり低くなる。

そういうところが似ているので、相場を見るときの感覚を養うため、地震予知や天気予報の技術的、科学的な解説本を好んで読みます。

――それは、そうした分野に興味があって、本を読んだら参考になった、ということですか。
もともとは経済物理学の本の中に、相場の分析は地震の研究に似ているところがあるといったことが書いてあったんです。そのとき「そういえばそうだな」と思って、地震予知について自分なりに研究してみようと思ったのがきっかけです。

突っ込みインジケーターも、統計的な考え方で設計しているところがありまして、参考に統計学の本を読んだのですが、やはり、その中に天気予報も統計の一種だということが書いてありました。確かに天気予報とトレード予測って通ずるところがあるなと思って、天気予報の本も読むようになったというわけです。

ショウ氏のKindleの本棚。金融系の書籍を中心に統計や地震前兆現象の書籍など多様な書籍が並ぶ。

――勉強熱心というか、すごいですね。
半分趣味みたいなものですけど。でも、興味のあることを勉強しつつ、トレードを楽しみながらやるということも大切だと思います。勝つか負けるか、増えるか減るかだけでは、精神的にもたないかもしれません。

相場のメカニズムは超複雑で、100%予測することは無理だというのが大前提ですが、やはり相場が動くには理由があるわけです。いくつかのメカニズムが重なって、相場は動いているはずで、そのメカニズムを知るには、自然現象が参考になるかもしれないと思っています。

そうした少し違う角度から相場を考えることは、案外、長く続けるためのポイントの一つなのかもしれません。

まあ、勉強熱心というよりも、負けず嫌いなのでしょうね。負けたままで終わらせたくない、という性分で、勝つまでは諦めないというところはありますね。

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