植田総裁の会見の書き起こし【2024年4月26日】

前提

この記事は、2024年4月26日における植田総裁の会見を書き起こしした記事です。書き起こしは言葉通りの書き起こしではなく、発言の主旨が変わらない範囲で若干の訂正を加えています。

参照動画

展望レポートの概要

ーー本日の金融政策決定会合の内容について、展望レポートの内容も含め、ご説明をお願いします。

本日の決定会合ですが無担保コールレートオーバーナイト物を、0から0.1%程度で推移するよう促すという、3月に決めた金融市場調節方針を維持するということを全員一致で決定いたしました。

なお、長期国債およびCP社債等の借入については、これもやはり24年3月の決定会合において決定した方針に沿って実施いたします。

次に今日は展望レポートを公表しましたので、最初に、経済物価の現状と先行きについて同レポートに沿って簡単にご説明します。

まず我が国の景気の現状ですが、一部に弱めの動きも見られるが、緩やかに回復していると判断しました。

先行きについては、海外経済が緩やかに成長していくもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられます。

物価ですが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきていますが、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足元は2%台半ばとなっています。

先行きは2024年度に2%台後半となった後、25年度および26年度は、おおむね2%程度で推移すると予想しています。

前回の展望レポートからの比較で見ますと、今年度の見通しが上振れていますが、これはこのところの原油価格上昇の影響等によるものです。

消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想されます。

見通し期間後半には物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移すると考えています。

リスク要因ですが、海外の経済物価動向、資源価格の動向、企業の賃金、価格設定行動など我が国経済物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融為替市場の動向や、その我が国経済物価への影響を十分注視する必要があります。

金融政策運営については、先行きの経済物価金融情勢次第であり、この点を巡る内外の経済金融の不確実性は引き続き高いとみています。

その上で以上のような経済物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになりますが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えています。

日本銀行は2%の物価安定の目標のもとで、その持続的安定的な実現という観点から、経済物価、金融情勢に応じて適切に金融政策を運営いたします。

利上げの判断と為替について

ーー3月にマイナス金利政策の解除を決められ今後は追加利上げの時期が焦点となっております。利上げ判断に影響を与える物価2%目標達成の確度の高まりについては、今後どのような材料などを重視されて点検されるお考えでしょうか。

ーー2点目が為替です。円安基調が続いてます。円安が物価上昇に大きな影響を生じる場合は、金融政策の変更もありうるとご説明されていますが、現状の円安についての影響をどのようにお考えでしょうか。

まず先ほど申し上げた点ですけれども、これからの金融政策運営は、その時々の経済物価金融情勢次第という考え方が基本となります。

短期金利の水準については、毎回の決定会合で、経済物価の見通しやリスクを丁寧に点検した上で、2%の物価安定の目標の持続的安定的な実現という観点から適切に設定してまいります。

これも大体申し上げましたが、先行基調的な物価上昇率が見通しに沿って、2%に向けて上昇していけば、政策金利を引き上げ金融緩和度合いを調整していくことになると考えています。

さらに経済物価見通しやリスクが上振れする場合も、政策変更の理由となると考えています。

この点ですが、基調的な物価上昇率は、何か単一の指標の動きに基づいて、判断評価するものではなくて、各種の物価指標あるいは物価変動の背後にあるマクロ的な経済の姿、需給ギャップや、予想物価上昇率賃金上昇率など経済物価に関する様々な情報を丁寧に見た上で判断していくというふうに考え、これまでも考えてきましたしこれからも考えてまいります。

それから、為替との関係ですけれども金融政策の主な手段は短期金利になったということで、その水準をどういうふうに決定していくかということですが、その考え方については今申し上げた通りです。

為替との関係で申し上げますと、まず金融政策は、為替レートを直接コントロールの対象とするものではありません。

しかし、いつも申し上げてますように、為替レート変動は経済物価に場合によっては影響を及ぼす重要な要因の一つになります。

仮に、申し上げてきましたような基調的な物価上昇率に無視し得ない影響が発生するということであれば、金融政策上の考慮あるいは判断材料となるというふうに考えます。

引き続き為替市場の動向や、その経済物価への影響を十分注視していきたいと思っています。

円安と国債買い入れについて

ーー為替についてお伺いします。今回の展望レポートを踏まえて、現状の基調的な物価上昇率に円安が与えている影響についてどのようにお考えかというところをお願いします。仮に円安に対して金融政策で対応する場合というのは、急激な日米の金利差から考えると、急激な利上げが必要になる場合もあると思うんですけども、その場合の利上げのペースみたいなものはどのようなお考えかというところをお伺いできればと思います。

ーーもう一点は国債の買い入れについてお伺いします。どこかのタイミングで減額されるということをおっしゃっていますけども、それはどのような考え方で進めていつごろを考えてらっしゃるのか、その場合に、要は経済物価への影響っていうものをどの程度考慮されるのか、その点も併せてお願いします。

まず、為替と物価見通しの関係ですけれども、先ほど発表しました政策委員の大勢見通しというところを見ていただきますと、除く生鮮で24年度のインフレ率予想がやや上方修正となっています。

この主な理由は原油高ですけれども、一部円安の影響も各政策委員がそれぞれ見通しを作りますので、その人次第でどれくらい上昇したかというところは違いますけれども若干は含まれているというふうに思います。

ただその他のところには見通しの変更、大きなものが今のところ出ていないということでそれだけでということではないですが、基調的な物価上昇率にここまでの円安が今のところ大きな影響を与えているということではないという判断がここに表れているかなと思います。

ただ全般的に物価情勢が上振れきているといいますか、我々の言葉で言えば見通し達成の確度が上がっているという状況でありますし、さらにここのところ、原油高とグローバルなインフレもインフレ率で見て下がってきたのが若干下げ止まりから、場合によっては反転しており、あるいは見通し達成の確度が少しずつ上がっているということととも関連しますが、企業の賃金価格設定行動も前向きの動きが継続しているというようなことから、基調的な物価上昇率にここまでのコストプッシュ、第2段階のコストプッシュ的な動きと呼べるかもしれませんが、それがはねるリスクもゼロではないと考えていますので、注視して見ていきたいというふうに思っています。

それから国債の買いオペについて国会等でもあるいは前回の会合後の記者会見でも、将来どっかの時点で減額ということを視野に入れているということを申しあげてきました。

その点は今でも同じ考えでありますし残念ながら今具体的にいつの時点でということを申し上げられる段階ではありません。

表現を変えてみますと、3月に金融政策の枠組みを変更して、それが金融市場等でどういうふうに評価されるかというところを今まだ見ている段階ということかなと思います。

もしも将来減額をする場合に一つの考え方としては、金融政策の能動的な手段としては使いたくないな、ということでございます。

ただし、もちろん将来的に買いオペの金額が減っていけば、保有している国債の残高も徐々に減っていくということに繋がりますので、日銀がたくさん国債を持っているということから発生しています長期金利を下げるという方向でのストック効果がやや弱まるという効果は、発生するということになるかと思います。

そういうことも考慮に入れた上で、短期金利の方の調整を適切にやっていくということになるかと思います。

為替と利上げについて

ーー今日決定会合の結果が出てからですね為替は1ドル156円台となっています。3月の時点では総裁、利上げは急がないということをおっしゃっていましたが、為替を含めた環境変化を受けまして、利上げ時期に対する姿勢というのは変わったのかどうか、早期の利上げが必要な段階にきているというふうに見ているかどうかというのを教えていただけますでしょうか。

ーーもう一点ですが、物価にどれぐらい為替が影響を与えるかというところで言いますと、円安ですとか原油高といった第1の力外的要因によるコストプッシュインフレであった場合でも利上げで対応する必要があると考えていらっしゃるのかどうか、この点をお願いいたします。

どちらも究極的にはこれまで、今日お話してきたこととの関連で申し上げれば、基調的な物価上昇率についての見方に影響があるかどうかというところに沿って、特に短期金利引き上げ、これをいつやるかというところは決まってくるということになるかなと思います。

為替変動はインフレ率に影響しますけれども、為替が何円から何円に若干円安になるということの、インフレ率への影響は通常は一時的にとどまるということだと思います。

しかしこれが長期化するっていう場合もゼロではなくて、それは一旦インフレ率に影響が出て、例えば今年であれば、24年のインフレ率に影響が出て、来年の25年の春闘の賃金上昇率に跳ねるようなことになれば、それは影響が長期化する、あるいは第2の力に影響する基調的物価の動きに影響するいうことになるということだと思います。

ちょっと長くなっちゃいますが仮にそういうルートを考えるとして、来年の春闘まで待たないと判断できないのかということかと問われますとそうではなくて、そういう動きが予想できるような状況になれば、それはもっと手前で判断できるということではあるかなとは思います。

ーー先日の会見で円安の進行によって基調的な物価上昇率に無視できない大きさの影響が発生した場合は金融政策の変更もありうると先ほどお話した通りだと思うんですけども、今回金融政策の変更がなかったということは、つまり円安の進行がこれ無視できる影響だというそういう範疇になるというご認識でしょうか。

それはちょっと今までの回答と重なりますけれどもとりあえず、基調的な物価上昇率への大きな影響はないと皆さん判断したということになるかと思います。

ただ申し上げましたように、そこに影響が今後発生するリスクはゼロではないので注意して見ていきたいということでございます。

ーーつまり今回これは基調的な物価上昇率への影響は無視できる範囲だという認識でよろしいでしょうか。

はい。

長期国債の買い入れについて

ーー今回の対外公表文で長期国債の買い入れの方針は3月の金融政策決定会合において決定された方針に沿って実施するということですけども、3月の前の対外公表分ではおおむね同額の長期国債を買い入れする、さらに脚注には足元では同額というのは6兆円ですというふうになってましたが、今後も3月に沿って決定に沿ってということですので、6兆円程度の国債を当面は継続するという理解でよろしいでしょうか。

ーーもう一つ長期国債の買い入れですけども、一方で仮に同額の買い入れを継続するということではそれを減らすというバランスシート上で減らすという意味ではなくて、金融調節で市場局がやっているようなオペレーションで減らしていくという、そういった可能性についてはどう考えなのかという点ですけども、大体5兆弱から7兆という数字が示されてますけども例えば市場動向によっては、5兆円弱ぐらいまで減らしていくということは考えられるのか、もしくは5兆から7兆というレンジはもっと幅を持たせて考えていってもいいのか、その辺を伺えないでしょうか。

前半についてはご指摘の通りでございます。

3月の時点でお示ししたものから変更ありません。

それから後半ですけれども、日々の市場局の調節である程度の幅を持って決定しうるというふうにしていますが、そこはこれまでと同様に内外の市場の動向とか、国債の需給、例えばオペの応札の状況等を見て若干の幅の中で市場局に決めてもらうという程度のことを考えています。

長期的にオペの金額を減らしていくという際には、政策委員会で決定して、きちんとアナウンスをして進めていくということになります。

ーー確認ですけど、同額は6兆円ですけど、市場局側に認めている幅ってのはどのぐらいでしょうか。

具体的には特に決めておりません。

常識的な範囲でという程度でございます。

政策金利について

ーー政策金利の先々の水準なんですけれども、今回の展望レポートの物価見通し見ると26年度までコアですとかコアコアCPIが2%を超えてたり近い数字が並んでます。2%の目標もほぼ達成しているようにも見て取れるんですけれどもこの状況で経済が進んだ場合に、具体的に2年後にはある意味2%を基準に上下どのあたりに政策金利を置こうか、実際に政策金利を置くかというそういう議論をする経済が現実味を帯びているという認識なのでしょうか。

ーーもう一点が金融政策と財政の距離感について伺いたいんですけれども、将来的な国債の購入減額ですとか保有国債の圧縮ということを示唆されている中でプライマリーバランスが黒字化が見通せるような予算組みでない中で、金利が過度に上がるような方向にならないように舵を切ることが可能なのか、もしくはその財政の議論が片付いた後に、本格的な減額圧縮に踏み切るのか、現時点のご認識を伺えればと思います。

前半ですけれども、おっしゃるように、私どもの見通しですとエネルギー等の影響を除いたコアコアの方で見ていただきますと、25年度26年度と2%近い物価上昇率の見通しになっています。

ですのでこれが実現していけば、本当に実現していけば、ほぼ持続的安定的な2%の物価上昇の実現にかなり限りなく近づくということだと思っています。

ですので、特に見通し後半、見通し期間の後半について、この通りの姿になっていくということであれば、そこでは私どもの政策金利もほぼ中立金利の近辺にあるという状態にあるんだろうなという展望は持っています。

ただ、これも何回か申し上げてますように、中立金利の水準についてかなりの不確定性があるので、そこは今後分析を深めつつ、最終的と言っていいか到達するところはどの辺かということについてもう少し知見を深めていきたいとは思っております。

それから、財政政策との関連ですが、これは金融政策との関係という話ですが、抽象的な言い方になりますが、私どもとしては経済物価情勢特に物価見通しに従って、金融政策を運営していくということですので、財政政策の動き、先行き、あるいはそれについての何か変化があるという場合には、それが物価経済見通しにどういう影響を与えるかという点を精査し、その上で金融政策を決めていくという基本姿勢でございます。

為替の物価への影響

ーー為替の円安の基調的物価への影響についてですけれども、先ほど来年の春闘まで必ずしも待つかというとそうではなくて予想できる状況になればもっと手前で判断することもあるとおっしゃいましたけれども、合わせて単一の指標で判断することではないということも併せておっしゃってますが、これもう少し具体的にどういう状況であれば、そのもっと手前で判断するという可能性があるのか、少し具体的に伺えればと思います。

ーー二つ目は長期国債の買入減額ですけれども、これをどういうふうに将来的に考えていくかという点について、昨日今日の今回の決定会合では何か議論があったんでしょうか。

前半ですが、為替が基調的物価上昇率にどう影響するかという点のご質問だったと思うんですけれども、それを確かめるのにどういう指標を見ていくのかっていうご質問だったと思いますが基本的には一般的に基調的物価上昇率の今後、あるいはそれが我々の見通し通りの姿と整合的な動きをしていくかどうかという際のチェックポイントという意味でお話しますと、やはり春闘で強かった賃金が現実に経済全体の賃金にきちんと跳ねていくかどうかという点。

それから、それが上昇していく賃金がサービス価格にどういうふうにはめていくかという点。

さらにそこに円安や原油高に伴う輸入価格の上昇が、サービス価格だけでなくて、全般広い価格水準にどういう影響をしていくかという観点、さらには最初の方で申し上げましたが、企業サイドの賃金価格設定行動が、持続的に前向きになりつつありますけれども、これが今後どういうふうに展開していくか、この辺りを見つつ、今後の基調的な物価上昇率の動きを判断してということになるかと思います。

それから、国債買い入れについて今日の決定会合でどういう議論があったかというご質問だったと思いますが、これは今日の会合では6兆円で続けるということに関して、特に反対は出なかったということでございます。

それがどういう議論があったかということについては、今後、主な意見等で、主要なものについてはお示しできるかと思います。

急速な円安

ーー先ほどの為替の件なんですけれども、そもそも論になって恐縮なんですが、足元のこの急速な円安というのは、一体何に起因していると総裁は分析しておられるのでしょうか。

当然日米の金利差でありますとか投機的な動き、デジタル赤字等々様々な要因が市中では語られておりますけれども総裁ご自身はどのように考えていらっしゃるのかということを教えてください。

ーーもう一点ですが、この円安がさらに進行していく場合はいわゆるその第1の力が減衰せずに盛り返してしまう可能性もあると思います。その場合物価上昇が勢いづく一方で個人消費はさらに冷え込む懸念もあると思うんですがそうした中で先ほどおっしゃっている追加利上げやあるいは量的引き締めといったことが進めていけるのか、あるいはまたそれが適切なのかということについて、ビハインドザカーブとのリスクとの兼ね合いも踏まえて総裁のお考えを教えてください。

まず前半の為替レートの動きの評価ですが、これは申し訳ありませんが、いつも申し上げている通り為替の短期的な動きについてのコメントは差し控えさせていただければと思います。

それから、後半ですけれども確かに円安の動きが続きますと、第1の力のところに影響あるという、どれくらい長く続くかまた別の話ですが、影響があるということはあるかと思います。

その程度によっては、これまでも若干そうでしたが、実質所得に対する下押し圧力を通じて消費に悪影響が及ぶという可能性もゼロではないと思います。

私どもはこのこととは独立に、今後消費が予想されます、まず名目賃金が強含みの方向であるということと、ここまで第1の力が減衰するに伴って、全体のインフレ率が下がってきている、両方から実質賃金ないし実質所得が改善の方向にあるということで消費がもう少し強い動きをして示していくというところについて期待感を持っているわけですが、それが今の話との関係で本当に実現していくかどうかということは、政策運営上も一つの重大なチェックポイントとして考えております。

為替の変動と追加利上げについて

ーー為替についてお伺いさせていただきます。先日のG20で為替の影響が無視できないものになればという話で、ただ一方で先ほど質問でそれほど大きくないというようなご認識だったと思うんですけど、この1ヶ月間でもドル円で言えば4円ぐらいは動いてるかと思うんですけど、どういったところでその無視できないものとか影響が大きいという判断になるのかちょっとやや抽象的な話なのかもしれないけどまずそれを聞かせください。

これは先ほどお話してることと、一部重なりますけれども、これまでお話しできたことと同じような表現で申し上げれば、為替の変動のところは、まず第1の力のところに直接影響するということだと思います。

したがって、そこがまずどれくらいの大きさになるかということは、評価のポイントですし、その上でそれが第2の力基調的な物価上昇率にどう影響していくかというところを見極めるということになるかと思います。

その際に一つのメカニズムとして、これも先ほど申し上げましたが、第1の力が上がることが、まず例えば今年のインフレ率全体の姿にどういう影響を及ぼし、それが第2の力の一つの重要な構成要素であります来年にかけての賃金動向にどういう影響を及ぼしていくかというようなところを見極めていくということになるかと思います。

ーーもう一点ですが追加利上げの条件でまずインフレ率がどう跳ねて来年の春闘とか賃金の動向にどう影響するか見極めるところがポイントみたいな話なんですが、するとやはりもちろん前回3月の会合みたい直前集中回答日とかの時まで待つというパターンもあるけど、逆にもう夏から秋ぐらいにかけてある程度見通せれば、物価の基調とかを判断すれば、追加利上げの環境は整うというようなご認識でよろしいか確認させてください。

冒頭でちょっと申し上げましたけれども、追加利上げ、あるいは今後金融緩和の度合いを調整していくというアクションですけれども、これは別のご質問でございましたが、既に物価見通しが見通し期間の後半にかけても2%前後になっていますので、この見通し通りに沿って現実が動いていけば、それだけで金融緩和度合いの調整の理由になるというふうに考えています。

それがいつの時点でそういう判断ができるかというのは非常に難しいところですけれども、見通しからずれる大きな動きがないと、利上げを判断をしないということではなくて、見通し通りに動いていくということが重なれば、それで政策金利の変更の理由になるということですし、見通しからさらに上方にずれる可能性が、無視できない確率で出てくるという場合には、もちろん更に調整の理由になるというふうに考えています。

ーー賃金と物価の好循環のところで、総裁は前からサービス価格の重要性を言われたかと思うんですけども、今朝4月の東京が発表されて、その中のサービス価格を見ると前年比の幅が3月よりも下がってるんですけど、思ったほどは賃金上昇してそれがサービス価格にシフトしていないような感じもするんですけども、日本で言われるその4月10月に大きい企業の価格改定の面から、今日の数字なんでまだ分析終わってないかもしれませんけれども、その辺のご感想をお願いいたします。

今朝の8時半にデータをもらったばっかりで、精査できていないんですが、確かにサービスのところで上昇率が4月の東京は下がってるわけですが、これは私ども予想していたんですが、東京都の高校教育無償化の影響が非常に大きく出ているということだと思います。

0.5%ぐらいインフレ率を引き下げる影響があるだろうというふうに以前から見ていました。

ただこれは全国の中の東京のシェア分だけっていう評価になりますので、全国CPIに与える影響は、0.1もないかどうかということだと思います。

その上でその他のサービスのところを見てみますと、必ずしも弱い動きばかりではなくて、上昇率が上昇しているところもあるというふうに今見ていて思っております。

ですので特殊要因を除くと、すごく弱くなったというふうには判断しておりません。

中立金利と予想インフレについて

ーー1点目は先ほど見通し通りになれば中立金利の水準に近づいていくということなんですが、あくまで毎回の決定会合で金利を決めるということであると思うんですが、ある程度の中立金利までの道筋を考えるとそれなりのスピードというか、ペースでもって金利を上げていかないと、後々急に金利を上げなければいけなくなるリスクあると思います。毎回の経済物価を見ながらっていうところと、そうした少し長い目で見たあるべき金利の水準に持っていくそこのバランスをどう捉えていらっしゃるのかというのが一点目です。

ーー2点目は予想インフレなんですけれども、短観等を見ますと、企業の中長期の予想インフレはかなり2%にアンカーされてるようにも見えます。一方家計や市場の見通しはまたちょっと違うものかもしれませんが、現時点で予想インフレの動向と先行きについて、どのようにいらっしゃるのかお願いします。

前半は見通し通りに経済が推移したときにどういうスピードで金利を引き上げていくのか、そこに関する判断ということのご質問だと思いますけれども、先ほども申し上げましたが、一つには中立金利の水準についてまだすごい狭い範囲に絞るということが必ずしもできていないので、これは当然、なるべく早い期間にもう少し絞るという作業を続けたいと思います。

それをやるにつけても、少しずつ金利が上がっていく際に、それに対して経済がどういう反応を示すかということに関する情報が非常に重要になります。

どこかの記者会見でお話したと思うんですけれども、過去に30年間、持続的に金利が上がったという経験が、少なくとも名目金利でいいますと日本経済にないわけで、そういうデータの蓄積が不十分でございます。

わからないということばかり申し上げて恐縮ではありますが、そこの不確定性にも配慮しつつ、慎重にということと、あまりゆっくりやってると、ご質問にありましたように、どっかで急激に進めないといけない、それに伴うショックが発生するリスクもあるということのバランスを取るのは非常に重要であるということはよく認識しておりますので、良いバランスの取り方ができるように努力したいと思います。

2点目についてはインフレ率を見ている主体によってかなり水準にばらつきがあります。

したがいまして一つの方法としてはそれを何か加重平均してみるというようなことを私ども、時々しております。

その中でも少し先、中長期のインフレ予想というものを加重平均した姿で見ますと、少しずつ上昇を続けてきていて、1%台半ばくらいにあるのかなというふうに大体判断しています。

物価の先行きについて

ーー1点目が今回の展望レポートで1月の展望レポートで記述していた物価の下方リスクについての文言をなくして上振れの可能性に言及しました。これは上振れリスクの方が今下方リスクより高まったという認識でよいのか、現状認識の理由もあわせてお伺いできればと思います。

ーー二つ目が先ほど言及されました為替の基調インフレに跳ねるリスクなんですけれども、基調インフレに影響を及ぼすそのセカンドラウンドエフェクトが今現状で5%の賃上げないし2%近傍のインフレ率が続く中で、過去の慣例よりもその影響が大きくなるといった認識がありますでしょうか。

まず、展望レポートの物価見通しのリスクですけれども、見通しの概要ページにも書いてございますように、24年度については、上方リスクの方を意識している委員方が多くなっていますけれども、その後については概ねバランスしているということでございます。

それから為替の影響を含めて、基調的物価上昇率の今後ですが、仮に過去のデータを用いて、為替の10%の変動が消費者物価指数にどれくらい影響を与えるかというのを推計したとしますと、ある値が出てくると思いますがそれが今おっしゃったノルムという点から見ますと、0%インフレのノルムが根強いときの期間のデータに基づいた推計ですので、それが変わりつつある現在ではそうした推計結果よりもやや大きめの影響が出てくる、そこだけをとりますとまず第1の力への影響ということだと思いますが可能性はあると思ってますし、そのリスクは認識しつつデータ等を見ていきたいというふうに思っています。

ーー先ほど現状の為替の物価上昇率、基調的な物価上昇率の影響について無視できるかとの問いに対してはいとおっしゃっていたんですけども、具体的にどのレベルになったら無視できないとですねお考えになるのかというのをお聞かせいただきたいです。ゴールデンウィークが明日から始まりますけれども海外などで特にアメリカなんかですねハワイに行った人はもう、外食なんか高くて自炊することが流行っているとか、海外で取材する人や出かけていく人などかなり苦労しているという話も聞きます。これでも影響ないと考えられる理由というのは何なんでしょうか。

これは先ほどもお答えしたことと重なるんですが、まず第1の力に影響があるというところは、はっきりしてるかと思います。

その上で、それがどれくらいの大きさ、どれくらい続きそうかという点を見た上で、第2の力にどれくらい波及していくかというところを見ていくっていうことに尽きるかなと思います。

ーー先ほどから物価見通しはこのまま実現していけばというお話をされていますけれども今回もそれがされてきたということだと思うんですが、その確度が高まっているということですよね。とすると総裁が以前からおっしゃってるその閾値というのはどの程度高まってきているのか、高まっていると考えていいのか利上げまでの距離ですね。もう一つ日銀というのはこれまでちょっと前にもなりますけど円安というのは経済全体にとってはプラスだっていうことを以前は言ってきたわけですけど、今の時点で総裁ご自身はどういうふうにお考えになっているかお願いします。

見通し実現の確度という点から申し上げますと、このところ継続的に上がってきているということだと思います。

その上で、3月の決定会合では、それがあるそれまでの枠組みを停止するというために必要な閾値を超えたという判断で、政策変更したということでございます。

閾値自体はそういうものである種御用済みになったということかと思います。

それから為替の経済への影響ですが、今日のご質問は主にインフレ率その影響ということ、特に直接の影響というところが中心だったわけですが、もちろん総需要サイドにも為替レートの動きが影響するわけでそこにはプラスのものもあるということだと思います。

それを含めて経済全体の動きにどういう影響があるか、そしてさらに結果としてインフレ率、特に中長期的な第2の力の影響も決まってくるということだと思います。

利上げの時期と判断基準について

ーー物価の見通し、先ほどから上振れリスクという話、上振れの要素があるとお話出てましたけど3月にマイナス金利解除した際この場ではどちらかというと、緩和的な金融環境続くとその緩和的なスタンスというのがすごい強調されてたように感じたんですけど、3月の考えていたときよりは、その確度も高まって追加の利上げの時期が近づいているというふうに進展してきているというふうなことなんでしょうか。

3月時点と比べて、現在にかけて入ってきた情報を基準に判断するとどうかということだと思うんですが、ここ1ヶ月強に入ってきたいろいろなデータ情報問等はかなりの程度3月時点でこうなるだろうというふうに予想していたもの姿に近いものをだったというふうに判断しています。

ただその中で原油価格や円安の動きというのは、ややそこから少し上方にずれた動きであって、今のところ先ほど来申し上げているように、第1の力のところに影響を及ぼす動きであるけれども、第2の力への影響の度合いを今後注意深く見ていくということかなと思っております。

ーー逆説的な質問なってしまうかもしれないんですけども、今回の展望レポートで26年度まで1.9%と予測されましたけども、ある意味でより物価目標の達成確度高まったようにも見えて、そういう意味ではそれこそすぐ利上げしてもいいんじゃないかというような判断もなきにしも非ずと言えたのかもしれないんですけども、改めて今中東情勢、円安の物価高、海外経済減速リスクもある中で、今回の利上げの判断を見送ったというようなどういった理由なのかということを改めてお伺いできればと思います。

この見通しの数字を見ますと、概ね2%かあるいは除く生鮮の24年度は2%をかなり超えているわけですけれども、こうした2%前後あるいはそれを超える見通しの中には弱まりつつあるとはいえ、過去の第1の力の波及効果が含まれているというふうに考えています。

ですからそこを取っちゃうとここは少し下の数字になる。

取っちゃったものが基調的な物価上昇率というイメージです。

その基調的物価上昇率はまだ2を下回っているというふうに考えてますので、緩和的な金融環境、現実的には今のところは0から0.1%という短期の水準が適当であるというふうに考えているということです。

ーーこれから短期金利を引き上げるというちょっと細かい話になってしまうんですけど、例えばここのレポートでも出てる中小企業を中心に価格転嫁が容易ではないっていう声が出ているという話であるとか、円安が進む中で、仕入れ価格がしっかりと転嫁していけるのかというのもさらにハードルが上がっていく可能性もあると思うんですけどその点とですね、あとは実質賃金がやっぱりまた下がり続けている中で例えば住宅ローンが上げられれば返済できなくなるリスクも高まってくる。そういうところを考えて、どういうふうにその辺のリスクを見て今後の引き上げの判断にしていくのかというお考えをお聞かせください。

一つは中小企業等でまだコストを価格に転嫁することは必ずしもできていないと見られる点をどう考えるかということですが、ここは大事なポイントですので、引き続き注意深く見ていきたいと思いますけれども、そういう完全にはできていないということをある程度織り込んで見通しを作っています。

ですからそこは完全にみんな織り込めるようにコスト転嫁ができるようになるという状態になれば、見通し対比上振れた物価のパスになるということかなと思います。

それから実質賃金がまだ弱い動きが消費にどういう影響を与えるかとあるいは金利を仮にここから上げていった場合に、住宅ローンの返済金額が上昇して、これまた消費に影響する、その辺は当然今後仮に利上げをするという場合には十分確認しつつ、その決定をしていくということになると思います。

中立金利の到達時期

ーー先ほど物価目標が実現する状況では短期金利は中立金利程度になると、そういうご趣旨の発言をされたわけですけども、今回の展望レポートの見通しに沿って、物価が推移する場合は25年度にも早ければ物価目標が実現できる可能性があると思いますが、見通しに沿って推移する場合は、目標が25年度に実現するような状況では、その頃には中立金利水準に短期金利は達しているというふうにお考えなのか、その辺を教えてください。

いつ基調的な物価上昇率が2%に満足のいく形で届いたかと判断できるかというのは、現状はタイミングを特定するのは難しいかなと思っておりますが、この見通し期間の後半にかけてのどこかではそういう状態になればというふうには思っております。

ーーその見通しが達成したとすれば、もう中立金利に短期金利はなっているという理解でよろしいのでしょうか。

概ねというふうに申し上げたいと思います。

円安について

ーー先ほどの総裁の今の円安は無視できる材料だというのは聞き捨てならないお話ですので改めてこれについて伺いたいんですが、今の足元の急速な円安は財界トップもこぞって、問題視しておりますし、先ほども質問の方いらっしゃいましたけれども、相対的に超円安によって日本人は相対的に貧しくなるという話ですから日銀にとっても決して無視できない話だと思うんですけれども、この1年円は主だった通貨の中で1人負け状態だと思うんですけれども様々な経済指標からは、必ずしも今の1人負け円安は説明しきれないと思うんですけども、この日銀の10年間の金融政策等積み残された負の遺産がもたらしている円安ということは言えないんでしょうか。

繰り返しになりますがまず第1の力的なところには無視できない影響を与えつつあるというふうには考えております。

ただし、金融政策判断上は第2の力あるいは基調的物価上昇率が、現状でも先ほど来申し上げてますように2%をまだ少し下回っているという状況の中で、円安の影響も含めて、利上げをしていくということが本当にプラスかどうかという観点から考えたいというふうに思っております。

ーーこの急速な円安は財務省の為替介入に任せればいいという話ですか。

財務省がどうなさるか、そういう点に関するコメントはちょっと差し控えさせていただければというふうに思います。

利上げの影響

ーー先ほど次の利上げの判断に関連して、近年連続で利上げしたということがないので、その社会に対する影響のデータの蓄積がないということでしょうけれども、総裁がその次に利上げしたときに、どこのセクターのどういう影響というのを特に注意して見られるのか、基本的な考え方を教えていただきたいのと、その分析を終えて追加利上げを検討できる時期について、大まかなイメージがあれば教えてください。

時期については申し上げられませんというか、今特定の考えを持ってるわけではないですけれども、その上で一般論になりますけれども、当然利上げの影響は経済に広範な経済主体に影響がおよびます。

当然資金の借り手企業であったり、住宅ローンの借り手に直接の影響が出ますし、利払い費への影響を通じて消費にも影響があるかもしれません。

それから、そういう様々な借り手の動向、プラス現在保有している有価証券の評価等を通じて金融機関、金融システムへの影響も考えなくてはいけないというふうに、多様な影響を考慮しつつ、利上げを注意深くやるんであれば進めていくということになるかと思います。

ーー基調的な物価の上昇率についてお伺いいたします。これ一概に示すのは難しいということだと思うんですけれども、総合的に判断するということになれば、根拠が曖昧で政策修正のわかりにくさであったりあるいは恣意的な判断に繋がりかねないというふうに考えてます。客観性を高めたり恣意性を排除したりするためにはどういう考えでしょうか。

難しいのは基調的な物価上昇率というのは申し上げるまでもないとは思いますけれども、全体の物価上昇率から一時的な動きを取り除いた部分ということになるかと思います。

ところが何が一時的かっていうことはその時点によってどんどん変わっていくということであるやり方で、あるいはある項目を外すと、一時的な変動を取った残りの部分が出てくるという固定的なやり方がないということが難しさだと思います。

従って総合的な判断という、わかりにくい表現になるわけですが、対応方法としてはいろいろな手法で一時的な変動を除いて作り出した、ある種の加工された物価指数これは複数のやり方があると思いますが、それをお示ししてそれを我々も見るし皆さんにも見ていただく、あるいはもうちょっと技術的には難しいモデル分析を使って、基調的な物価はどうかというところを推計してみて、その動きを見るような複数のやり方を重ねて、何とかどの辺にあるかということを見極めていきたいというふうには考えております。

利上げの判断について

ーー円安資源価格の上昇が輸入物価上昇に繋がった場合、輸入物価上昇から財価格への波及というのは、半年程度かかると総務省は言っているわけなんですけれども、今般の円安の輸入物価上昇への波及これを見極めるにある意味半年程度かかると見られる中で、日銀としては次の利上げは向こう半年間は基本的にないという理解なのか、いやそれよりも前に総裁がおっしゃるような第1の力第2の力に波及する可能性が出てくれば、例えば次の7月の決定会合で経済物価見通しを見直した上で7月会合で利上げする可能性もあるのかこの点をお聞かせください。

輸入物価から国内物価あるいはサービス価格への波及のラグですけれども、それは半年かどうかわからないですけれども、ある程度のラグがあって、しかもそれはそのときの情勢次第で動くんだと思います。

先ほどからちょっと出ていますようにノルムが変わりつつあるところではラグが短くなるかもしれないし、影響の度合いも大きくなるかもしれない。

そういうリスクには配慮して経済を見極めて、あるいは物価動向を見極めていきたいとは思っています。

ただその上で申し上げれば輸入物価の動向そのものを見ますと21年から22年にかけてものすごい上昇したわけですが、それと比べると足元の上昇はそれほどのものではない。

そう言うと怒られるかもしれませんが、まだ当時の急上昇というほどのものではないということも注意しておかないといけないかなとは思います。

ーー基調的な物価上昇率が高まる中で、今回金利の調節を維持したということは金融緩和の度合いはより強まっている強めたということなのでしょうか。

3月から4月にかけて目に見えて基調的な物価上昇率のところがはっきりと高まったというふうには必ずしも考えていないです。

少し申し上げましたが、3月の時点で得られていた情報プラス3月の時点で、その先、4月にかけて出てくる情報もある程度予想して、3月時点で、大体基調的な物価上昇率、あるいはこの辺だということを考慮に入れて、大きな政策変更したということでございます。

そのときに決めた政策金利0から0.1という、オーバーナイトコールレートの水準は現状ではまだ適切な水準であるというふうに考えております。

────────────────────

この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです