日本国内のIEOブームは業界にとってプラスか? 1/2

前提

この記事は、ビットコイナー反省会の動画を書き起こし・要約した記事です。掲載はビットコイナー反省会様に許可をいただいております。書き起こしについて快くご許可をいただきました運営様にこの場を借りて改めてお礼申し上げます。

ビットコイナー反省会とは

ビットコインを中心に、仮想通貨、ブロックチェーン関係の専門的なトピックを黎明期から多分日本では最も深く議論しているチャンネルです。 日本国内の黎明期からビットコイン、ブロックチェーン業界の豪華ゲストを呼びつつ、楽しく、真面目に話しています。

ホスト

Koji Higashi。ビットコインのポテンシャルに魅了され、2014年からフルタイムで関連事業に取り組む。日本のビットコイン業界の草分け的存在の一人。ビットコイン、ブロックチェーン業界においてプロダクトマネジャー、コンテンツクリエイター、マーケターなど多角的に活動しており、国内外で認知されている。Twitterアカウント: https://twitter.com/Coin_and_Peace

参照動画

日本で発行して海外の人に買ってもらうほうが国益になるのでプラス

ーーではいきましょう。日本国内のIEOブームは業界にとってプラスか。ではプラス側イエス側から議論お願いします。ブロック男とBCGチームですね。

ヨーロピアン氏 イエスはプラス、ノーはマイナスという意味ですか。

ーーそうですね。ネットで見るネット全体で見るとマイナスがノーですね

ヨーロピアン氏 日本国内でIEOやることがプラスかという話だと思うのですが、資金調達の方法が増えるというWeb3の文脈の一つとしてプラスだと考えています。

これまで国内で取り扱っているトークンは海外のどこの国のエンティティに属していないもの、国外から出てきたものの方が多かった。

多かったというか、ほとんどそれしかなかったというのは分かっていて、その中には海外でICOが行われて、国内に持ち込まれたトークンというのも含まれている。

なので見え方からすると海外の発行体に日本人の資金が取られているという考え方になるんですよ。

どちらが国益にかなうかなという考え方で言うと、日本で発行して海外の人に買ってほしいですよね。

お金の流れのインアウト、どちらがいいかでそちらの方が日本に税金も落ちるし、日本の人たちのその資金になるので、雇用、消費につながっていくという考え方もある。

その文脈で言うとどんどん国内で資金調達できるようなトークンを発行して、海外に打って出て海外投資家にお金を入れてほしいという思いがあるので、ようやくその逆の流れができたかという見方で僕はプラスになると思ってます。

資金調達の方法が増えるのでプラス

ーー今までは日本人のお金が海外のプロジェクトに流れていっちゃってたのが、それは良くないので逆の流れができるのはいいことだということですね。

ヨーロピアン氏 中国産のトークンはたくさんあったと思います。

ーーBCGからお願いします

上野氏 「国内における」という枕詞をつけてみて思うのですが、IEOブームがプラスになるかどうかという話についてはどう考えてもプラスにしかならない、という結論になります。

単純に資金調達の方法が増えるので間違いなくプラスです。

クリプトの業界においては、世界を狙うという大義を持った方が面白いとは思うのですが、クリプトのユースケースがどんどん増えていくにつれて、今後は特に国内に閉じたエコシステムを展開するような事業がどんどん出てくると思うんですよ。

その時に法律を変えれば、というのはあるかもしれませんが、今の法制度のもとだとIEO以外でのトークン調達は非常にやりにくいんですよね。

例えば国内の事業者が適格投資家にプライベートで売る場合も仮想通貨交換業に当たるんですよ。

仮想通貨交換業者のライセンスがないとおりません。

加えて日本国内におけるLPS法ですね。

いわゆる投資事業有限責任組合制度では法律上トークンが保有できないことになってるんですよ。

保有できるものの中に暗号資産が入ってない。

そういうことを考えると国内で事業展開したい場合にトークン調達が可能な制度はIEOに限定されるんですよね。

IEOしかない現状において、IEOがブームになるという事はもうプラスでしかない。

別にIEOできるからと言って、グローバルなビジネスを目指すんだったらIEOとか別に選択しなくていいんで。

単純にプラスしかないです。

だからもうマイナスであることがありえない、と僕は思っています。

日本のIEOのプロセス、アジリティ、審査基準を照らし合わせると海外で戦えるような状況にはないのでは

ーー強い主張ですね。では反対意見をお願いします。

なまはげ氏 ヨーロピアさんの言うことも、上野さんが言うことも本当に全くその通りだと思います。

お二方が言うように、資金調達の方法が増える。めちゃくちゃいいことです。

海外の投資家からのお金が入ってくる。めちゃくちゃいいことです。

もうこの2つできたら超いいです。

だけど大事なこと忘れてるんですよ。ここは日本です。

何が言いたいかというと、現状の日本のIEOのプロセスだったり、アジリティだったり、そもそも審査基準を照らし合わせると、海外で戦えるような状況にはないのではないでしょうか。

現状もそうですし、今並んでいる銘柄もそうなんですけれども、海外で戦えるような、もしくは海外のトップランナーであるところのプロジェクトが到底入ってこられないような審査プロセス、審査基準、業務プロセスになってしまっているなと。

このままだったらどうなるかというと、海外で絶対に戦えないような小粒な国内でお金を集めるしかできないようなプロジェクトがしょっぱいIEOをして、日本人が日本のしょぼい国内プロジェクトに投資する。

まあすごいなんかなんて言ったらいいですかね。

小さな賭博場が出来上がって終わりなんですよ。

この状況は日本人が日本のプロジェクトにカモにされるだけであって、結果として日本の中で日本人が適当に金を集められればいいやという、いわゆるガラパゴス化が起きてしまって、投資家もバカではないのでそういう状況が続くと分かりますよね。

結局、仮想通貨は危険、IEOは危険、という風になると思うんですよ。

そうすると一般の人は、ただでさえ今すごくいいイメージを持たれているとは言いづらいクリプトにもっと悪いイメージを持たれてしまう。

仮想通貨なんて詐欺だよ。こんなIEOなんか海外で売るとか言って海外で投資家入ってくるとか言ってるけども、海外で全然売れてないじゃないか。

こんなもん詐欺だよってなって、みんなどんどん離れていっちゃうと思うんですね。

これはもうIEO自体が悪いというわけではなくて、そうしたプロセスだったりだとか決め事、きちんと決め事をする。

この決め事をちゃんとやっていかないといけないわけで、そうした動きなしにIEOをやった資金調達の方法が増えた、それでおしまい、幸せというのはこれはかなり稚拙な議論じゃないかなと思います。

あとそもそも海外の投資家が今入って来られない体制にありますよね。

確かに海外の投資家が入れたらそれはうれしいし、日本のプロジェクトにとっても海外に出ていく上でプラスになると思うのですが、今の現状だとそもそも机上の空論だよねという話かと思います。

なので資金調達の選択肢が増えるというプラス要素から全てのマイナス要素を引くとマイナスになるということです。

ーーいろいろありましたが、結局実際には海外からお金集められることにはならないと。制度的な問題とか需要というかプロジェクトの質の問題とかですかね。

なまはげ氏 要は劣化マザーズみたいな感じになると思います。株で言うところの劣化マザーズみたいな感覚になるんじゃないかな。

日本だけが進んでいってもガラパゴスになるだけ

ーーでは他の人お願いします。

teatwo氏 私達もなまはげチームと同じでマイナスになると思います。

その理由はガラパゴスになるだけだということで考えてます。

順を追って説明します。まず大局の捉え方が違うなと思っています。

これ1個前の質問とも同じですが、これまでのバブルは前回2021年のWeb3バブルだとしましょう。その前は2017年のICOバブルだったとしましょう。

いつでも株式を模倣した証券ハックによって花開いたお金がたくさん流れてバブルと呼ばれるような数字が形成されたのですが、またこれが来るとはあんまり考えていません。

その理由はレギュレートが進んで、事業者側も従来通り機動力を持った早期上場ができるようなそういう強いインセンティブを持ったメカニズムが取れなくなりますし、投資家側にも知識が拡がっています。

理解が進んできて、例えばPlay to Earnがいかにポンジスキームを模倣したものであるかとか、IEOで早期上場、EXITできますけども、そこには必ずシード投資家みたいなのがいて、IEOで上場したタイミングがすでに彼らにとってのEXITになっている。

そうしたからくりがすでに広まってきています。

この流れで証券を模した形でバブルになるという風には考えていません。

そこに対して日本だけが進んでいってもガラパゴスになるだけでしょう。

次のサイクルでは私たちも上げ相場が来るとは思っています。上昇トレンドが来ると思っています。

アメリカを特に見てますがビットコインを使ったリアルなビジネスで、例えばストライクがアフリカに国際送金していますが、他にも給与支払いや決済などで続々と事業者のチャレンジが始まっています。

私の考えではメタバースは通貨でビットコインだけあればいいのではないかと思ってます。

ワールドの中の交易でもワールドをまたいだ交易でも、ビットコインというハードマネーがあることによって、デジタルアイテムの生産の動機があり、交換してお金をゲットそれか価値の保存ができる。

これだけでデジタルアイテムの交易とか盛んになるはずなんですよね。

今ライトニングネットワークが盛んになってますが、WEB統合が進んでいます。

ECショップでも普通にそのビットコインが使えるようになってくる。

こういうチャレンジが始まってくると、ビットコインを使った事業者は、例えば従来の株式市場の枠組みの会社でも全然成り立つようになっていて、次のサイクルで盛り上がってくるのは、いよいよそのマネーのインターネットプロトコルだと思います。

これが花開くことによって様々なビジネスがWeb2と垣根がなく、すでに大きくなっているインターネット市場、Web市場にそのままそのプラスで乗っかってくるような形で進んでいくんじゃないかなというような大局感を持っています。

この中で日本だけがIEOブームとか今更周回遅れですね。4年遅れぐらいで始めたとしても、ガラパゴスで取り残されたわけじゃないかという風に考えています。

IEOで取引所は儲かるが、取引所が儲かっても業界にとってはプラスではない

ーー海外も含めた大局感に対して、方向性が全然違うし、遅れているから、今更これをやってもまあ結局海外には追いつけないし、あまり意味がないんじゃないかみたいな意訳しますけど。そんな感じですかね。

加藤氏 自分もなまはげが言ってた劣化版マザーズになるだろうという説を支持します。

というのも、これまでなされてきたIEO、例えばIEOブームになってIEOがめちゃめちゃ増えたらどうなるだろうということを考えるとですね、やはりICOを日本でできない、IEO自体がすごく難しいと思います。

法的問題は、上野さんがおっしゃった通りのことです。

IEOは制度上プラットフォーム側で審査があるじゃないですか。

その審査を投資対象としてのお墨付きみたいに捉える向きがあると思っていて、実例としては例えばFC琉球コインというのが最近あったと思うんですけど。

売り出しを買った人たちが実際に取引が始まってから、売却制限があることに不満を抱いて、返金騒動が起きました。そして騒動の後、実際に補填されてるんですよね。

でもFC琉球コインの建付けはファントークンですね。

ファントークンであれば、最初に売却制限があってもおかしくないですよね。

おかしくないのにどうしてそうなったかと言うと、その人たちはファントークンとして買っているのではなくて、投機対象、仕手株として買っているという状況があるのだと思います。

Valuを思い返してみてもそうなのですが、審査とかなくて、余計ひどかったというのはもちろんあると思うんですけど。

結局そういうマネーゲームの遊び場になって、取引所は儲かると思うんですよね。

ただその取引所が儲かることをもって、業界にとってプラスというわけではないと思います。

ーー取引所とあと発行者ですね。

加藤氏 発行者と取引所が儲かることをもって、業界にプラスではなくて、結局ユーザーのお金を発行者とか他のユーザーに横流しして、取引所とかが仲介料をもらうみたいな構造でしかないので、それ自体を持って業界にプラスと言い切るのは違うんじゃないかなと思います。

ーーその例としてFC琉球みたいな。

加藤氏 ちなみに琉球コインは結構価格ももうめちゃめちゃ低迷してるし、あとJ3に降格になりました。

ーーJ3に降格した。それは面白いですね。

加藤氏 IEOの時から降格の可能性が高い順位にはいたのですが、実際降格しちゃったという。

このイベントとは関係ない話ですけど。

なまはげ氏 売却できないみたいなことで揉めてる最中で、FC琉球公式Twitterがキャッチボールをしている選手の動画を上げていました。

それに対してFC琉球コイン買った人がなんでお前らキャッチボールしてるんだ、という全く関係ないリプを送ってるのを見るのはものすごく好きでした。

加藤氏 結局ファントークンとして上場した体でも、買う層は取引したいから買ってるという要素があって、それが必ずしもプラスではないのではないかという論です。

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