「日本が利上げできていない、できても限定的であることを考慮すれば、今後もドル円の金利差は大きく縮まらない」貴金属スペシャリスト・池水雄一氏 2/3

貴金属スペシャリストの池水雄一氏に、個人としての投資スタンスなどについて伺いました。

池水雄一氏 プロフィール

1962年生まれ兵庫県出身。1986年上智大学外国語学部英語学科卒業後、住友商事株式会社。1990年クレディ・スイス銀行、1992年三井物産株式会社で貴金属チームを率いる。2006年スタンダードバンクに移籍、2009年同東京支店支店長就任。2019年9月日本貴金属マーケット協会代表理事。趣味はラン&トライアスロン。

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取材実施日

2024年3月13日

インフレ禍の現在では投資をしないことがリスクになりつつあり、今後は現金の価値が減少していく

ーー個人投資家としてのご経歴について教えてください。

私が商社で務めていた頃は、まだ個人の株式投資に対するルールやコンプライアンスのが確立されておらず、商社で勤めつつ、個人で株式の短期売買を行っていました。

しかしスタンダードバンクでは、個別株の取引には事前の許可が必要だったため、入社時すでに利益が出ている株式は全て売却し、利益が出ていないものはそのまま塩漬けにしました。

2006年から2019年頃までのスタンダードバンク在籍中は個人としての投資はほとんど行っていません。

再開したのは、2019年に会社を退職して独立してからですね。

ーースタンダードバンク入社時に塩漬けした株式はその後どうなりましたか。

塩漬けした株式の中には、購入価格の1,800円から2万円を超えたテンバガー株もあり、この経験から長期保有の可能性、有用性に気づきました。

また、失われた30年の日本はデフレ状態だったため、この期間に何もしなかったことが結果的には最良の選択となりました。

特に意識していたわけではありませんが、資産を現金で保有し続けていたため、投資を控えたことに後悔はありません。

最近では、デフレからインフレへと変わってており、この変化に合わせて株式投資を再開しています。

インフレ禍の現在では投資をしないことがリスクになりつつあり、今後は現金の価値が減少していくと考えています。

良いタイミングで投資を再開できたと思っています。

日本で働き、日本円で給料をもらっていれば何もしなければ資産は円で増えていくわけで、この資産配分にはリスクがある

ーースタンダードバンク在籍中にも行っていた投資はありますか。

1995年頃の日本経済は低迷しており、財務状況も悪く、株価も上昇していない中でドルが80円台まで下がっており、このような中では円の強さは正当化できないと考え、ドルを買っていました。

また、日本で働き、日本円で給料をもらっていれば、何もしなければ資産は円で増えていくわけで、この資産配分にリスクがあると考え、アセットアロケーションの観点から、ドルやゴールドを購入し、円以外の資産へ投資するように意識していましたね。

現在も長期保有しているゴールドは過去最高値を更新、ドルも1ドル150円まで上昇しており、結果的に高いパフォーマンスを出しています。

ーーゴールドはいつから保有されているのでしょうか。

ゴールドの価格は2000年代はずっと右肩下がりだったということもあり、当時はゴールドへの投資には否定的でした。

2010年頃からゴールド価格が上昇し始めたことで私の見立ても変わり、ゴールドへの投資を始めたのはこの頃からですね。1グラム3,000円ほどだったと思います。

ゴールドの価格はかつては1グラム800円を割り込んだこともあり、1万円を超える現在の価格と比較すると当時の安さがよくわかりますね。

もっと早く購入しておけばよかったと後悔しています。

▼ゴールド/米ドルの2000年以降のチャート

平均購入価格90円でドルを昔から買っている

ーー2011年から2012年頃はドル円が70円から80円のレンジで推移しています。当時、これほどまでに円が強かったのはなぜでしょうか。また、当時、メディアやエコノミストにはどのように解釈、解説されていたのでしょうか。

具体的な根拠は覚えていませんが、当時、一部のエコノミストは1ドル50円まで円が強まると予測していました。

より円高に振り切る見方が強かった中、私はファンダメンタルズに基づけば金利がほぼゼロの通貨がこれほどまでに強くなるのは異常だと考え、円安を主張していましたし、実際にドルを買っていましたね。

ーー池水さん自身も1ドル80円の頃からドルを買われているのでしょうか。

はい、その頃からドルを買っていますし、実際、私のドルの平均購入価格は90円です。

レバレッジはかけず、外貨預金やMMFで買っていますね。

今後は再び1ドル130円台となれば、追加での購入を考えています。

ーー現在では、円はドル円で150円にまで下落しました。現在のドル円に対してどのように見ていますか。

現在も、今後はより円安に進むと見ています。

投資家セミナーなどで講演する際も、資産を円だけで保有することへのリスクヘッジとして、外貨やゴールドを保有する重要性を強調しています。

日本が利上げできていない、利上げできても限定的な実施になるだろう現状を考慮すれば、今後もドル円の金利差は大きく縮まらない

ーー現在のドル円のレートをどのように見ていますか。

現在、日米の金利差は依然として大きいです。

日銀がマイナス金利政策を終了し、FRBが金利を下げ始めると、円はある程度までは強まると考えていますが、日本の財政、経済状況を踏まえると、基本的には円安トレンドが続くと見ています。

特に興味深かったのは、2023年12月に日経新聞に掲載されていた、国内外の金融機関によるドル円の年末予想です。

参考:24年は2つの円高予想 株価の強気崩れれば急伸も
参考:24年の為替予想、緩やかに円高進む 上値120円台前半か

みずほ銀行など日本の金融機関は1ドル120円程度など円高を予想した一方、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなど外資系金融機関は円安を予想していました。

ーー引き続き円安を予想する投資家は日本の財政状況や日本企業の海外進出、日本への投資不足などを理由に挙げています。一方でドル安を予想する投資家は、米国の財政状況の悪化や将来的な利下げを理由としています。どちらも一定の根拠がありますが、池水さんとしてはどのように見ていますか。

おっしゃる通り、どちらの意見にも一理あります。

FRBの利下げが当初予想されていた2024年3月から6月に延期されたこと、そして現時点で2024年にさらなる利上げがないことは確実です。

今後、利下げによってドルの魅力が低下する可能性はありますが、日本が利上げできていない、もしくは利上げできても非常に限定的な実施になるだろう現状を考慮すれば、今後もドル円金利差は大きく縮まらないと見ています。

そのため、長期的には円よりもドルで運用する方が有利でしょう。

特に、ドルのリスクフリーで5%のリターンというのは投資家にとっては非常に魅力的です。

そういった、ドルに対する引き続き強い見立てがある一方で、ご指摘のとおり、現在は新興国を中心にドル離れの動きが見られています。

中国、ロシア、インドなどがドルを売却し、ゴールドを購入している現在の状況は、ゴールドの価格をさらに上昇させるだけでなく、世界がドル一強体制から多極化へ移行していることを示しています。

そのようなマクロの情勢を踏まえ、ドルが持つ絶対的な基軸通貨としての地位が今後相対的に弱くなる可能性はありますが、今後も基軸通貨である限りは、ドルを保有する意義は大きいでしょう。

また、私は長期保有を前提としており、短期的な為替変動にはあまり注目していません。

1ドルが150円を超える状況では買いを控え、140円以下で金利が4%を超える状況になれば更に買い増してもいいかもしれませんね。

ーー池水さんはドルと円以外では何か通貨を保有していますか。

ドルと円のみですね。

私は外貨投資においてはドルが最も魅力的だと考えていますが、日本の投資家は高金利通貨を好む傾向にあり、メキシコペソや南アフリカランドなどに注目が集まりますよね。

職業上、プラチナ価格に影響を与えるランドには注目していましたが、現在のドルの金利がこれらの通貨と同等になっており、リスクの高いエキゾチック通貨に手を出す必要性を感じていません。

ポートフォリオの5%から10%を貴金属に割り当てることは、健全性の保持や緊急時の保険として有効

ーー株式投資におけるご自身の投資スタンスについて教えてください。

過去に長期間保有した株式が20年後に大きく値上がりした経験が重要な教訓となっており、基本的な投資スタイルは長期保有です。

日本のように金利が低い環境では、キャッシュを保有していても円安やインフレの影響で価値が目減りしてしまいます。

そのため私は貯金の感覚で優良株に株式投資を行っており、具体的には、配当利回りが高く、バリュー株に分類される優良株を中心に投資しています。

三菱商事、三菱UFJ銀行、住友銀行、三井物産などを、まずは配当目的で購入していましたね。

また、外国株にも幅広く投資しています。

GAFAをはじめ、SlackやNTBなどのバリュー株から、ナスダックに上場しているハイテク企業が対象です。

現在の私の株式ポートフォリオの8割以上は米国株と国内株で占められており、残りはeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)やS&P500に投資しています。

そのほか、新NISA制度の導入がきっかけとなり、一昨年からはNISAも活用していますね。

ーー現在のポートフォリオ全体の割合を教えてください。

自宅、別荘、賃貸マンションなどを含む不動産が全体の30%から40%を占めています。

株式は約20%、米ドルは約10%から20%、貴金属は直近で約7%です。

ーー借り入れでレバレッジがかかっているために不動産の割合が大きいのでしょうか。

いいえ、以前は税金対策として借入をして物件を購入していましたが、会社を退職して税金対策の必要がなくなった現在、借入はありません。

不動産は、地価の上昇によって不動産価格が購入時より高くなったほか、家賃収入も継続して入ってきており、年率5%から6%のパフォーマンスとなっています。

結果として非常に良い投資になりました。

ーー貴金属が全体のポートフォリオの7%ほどとのことですが、ゴールド以外も保有されているのでしょうか。

ゴールドだけでなく、プラチナやシルバーも現物で保有しています。

そのほか、ゴールド、シルバー、シルバー、プラチナのETFの積み立ても行っていますね。

株式や債券と異なり、ゴールドなどのコモディティには企業の倒産など発行体のリスクがなく、その価値は世界中で認められています。

そのため、ポートフォリオの5%から10%程度を貴金属に割り当てるというのは、ポートフォリオの健全性や緊急時の保険として有効だと考えています。

投資はただのギャンブルではなく、知識と理解に基づく経済活動でなければならない

ーー40年近くマーケットに携わってきた経験から、投資家やトレーダーが成功するために重要な点や注意点について教えてください。

個人投資家の最大の武器は時間です。

銀行や法人は四半期ごとに成績を出す必要があるため長期保有は難しいですが、個人投資家にはそのような制約がありません。

個人的見解ですが、評価損が出ても、売却しなければ確定損にはなりません。

長期的な視点を持ち、価格が下落したら追加投資するようなスタイルを持てば、精神的な安定を保つことができるでしょう。

短期売買は一日中画面を見続けなければいけないため、個人投資家の方々にはお勧めしません。

私自身も取引に時間を費やすのではなく、情報発信などでマーケットに貢献したいと考えています。

また、理解を深めてから取引に臨むことで、成功の理由も失敗から得る教訓も明確になるため、十分に勉強してから取引に臨むことをお勧めします。

投資はただのギャンブルではなく、知識と理解に基づく経済活動でなければならないと思います。

「どんな時においても、世の中何が起こるかわからない」という意識が根底にある

ーーマーケットの大きなイベントを経験された中で、特に印象に残っているイベントや得られた教訓はありますか。

それぞれに強い思い出がありますが、例えば、アジア通貨危機の際には、それまで全く気にかけていなかった与信が突然厳しくなり、特定の商社との取引を控えるよう指示されました。

リーマンショックも非常に大きな出来事でした。当時、私はスタンダードバンクに移ったばかりで、幸いにも大きな被害はありませんでしたが、多くの海外トレーダーが次々と解雇される様子を目の当たりにしました。

これらの経験から、「どんな時においても、世の中何が起こるかわからない」という意識が根底にあり、何があっても対応できるように保険をかけておくことの重要性を感じました。

このような意味で、ゴールドを少し保有することは保険として最適ではないかと考えています。

これは宣伝ではなく、私の経験から得た教訓ですね。

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全三回の池水氏のインタビュー、最後の三記事目に続きます

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