暗号資産に特化した税務を行うホワイトテック会計事務所・菊地氏 インタビュー 1/2

暗号資産の投資やトレードを始めて利益が出たものの、どうやって税金を申告すればいいのか、分からないという経験をした人も多いだろう。

過去には、どうしたらよいのか分からず放置していたために国税局の調査が入り、多額の追徴課税を受けたというケースもある。

そうしたときは、税理士に相談するのが確実だが、暗号資産をめぐっては課税ルールが定まっていない部分もあり、どの税理士に相談しても良いというわけではない。

そこで、暗号資産の申告に詳しく、自分自身も暗号資産のマイニングやトレードの経験があるというホワイトテック会計事務所代表の菊地貴加志氏に、暗号資産の税務申告のポイントや自身のトレードの経験などについて聞いた。

ホワイトテック会計事務所代表・菊地 貴加志氏 プロフィール
税理士・公認会計士
大学卒業後、有限責任監査法人トーマツに入社。建設業・製造業・小売業を中心に上場企業の会計監査、上場支援業務、内部統制構築支援業務に従事。
その後、2018年に暗号資産税務に特化したホワイトテック会計事務所を開業。多くの暗号資産投資家、ブロックチェーン企業の会計税務支援を行っている。その他、暗号資産交換業者の監査に従事。JCTI仮想通貨税務研究会所属。自身も暗号資産の投資やマイニング、ステーキング、レンディングを活用している。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司

暗号資産は2017年に友人に勧められ、XRPとOMGを購入したことからスタート

――経歴を教えてください。

2012年に公認会計士の試験に合格して、監査法人トーマツに入所しました。そこで、上場企業や公益法人の会計監査や内部統制構築支援などの業務に従事しました。

最初から、いずれは独立するつもりでしたので、独立に必要な実務経験を積んだ後に2017年に退職し、その後、ホワイトテック会計事務所を開業しました。

――投資には興味があったのですか。

監査法人は、当然のことながらインサイダー情報には敏感で、投資は厳しく規制されています。

自分がかかわった企業の株はもちろん買えませんし、今は直接かかわっていなくても、買収や合併もありえる。だから、株式投資はなかなかできません。

投資にはずっと興味があったのですが、監査法人にいる間はできなくて、独立したら投資を始めたいと思っていました。

ちょうど、トーマツをやめる直前くらいだったと思うんですが、以前、トーマツで同期だった友人の竹ヶ原という会計士と再会したんです。

彼はいまコインチェックで常務執行役員なども務めている人間なのですが、彼とは仲が良くて、友人の結婚式で会って暗号資産について聞かされました。

それが暗号資産に興味を持ったきっかけですね。

その彼に暗号資産を勧められたのが2017年8月頃。それでトーマツを辞めた直後に、買いましたね。

――最初に何を買ったんですか。

最初はXRPと、タイの企業が開発したOMGですね。OMGは日本人が開発に関わっているということで、東南アジアで人気があった。9月に買って、年末にかけて値上がりしたので数百万円くらいの利益を出すことができました。

彼に暗号資産を強く勧められたわけではないのですが、彼が暗号資産について熱く語っていたんです。

当時はまだ「暗号資産って、どこか胡散臭い」というのが社会的な雰囲気で、私もそのくらいの認識しかなかったのですが、信頼している友人がそれだけ熱心なら、と思って買うことにしました。

よく、そこで買わずにいて、後から「あのとき買っておけばよかった」って言う人がいるじゃないですか。そういうのは嫌なんです。

そこで、知人に海外の取引所が手数料が安いということを教えられ、bittrexという海外取引所で口座を開設しました。

――XRPやOMGを選んだ理由はあるのですか

OMGは開発している企業の代表が日本人であったこと、実際にタイの日常で利用されていることを聞き、信頼して購入しました。

XRPについては、当時、XRPを熱心に推す人たちをリップラーて言っていましたよね。そんな流れにのって、買ったという感じですね。

あんまり深くは考えていなかったような気がします。

――今も売買をしているのですか。

今は頻繁に売り買いをすることはなくて、ビットコインとADAがメインで、イーサリアムが少し。

ADAは専用ウォレットに入れておけば、ステーキングに参加できる暗号資産で将来性を期待しています。2019年ぐらいに買いました。

きっかけは、尊敬している知人の投資家に勧められたことですね。「今ならひと桁の価格で買えるから、今年しかチャンスはないよ」と言われて、それで買いました。

ちょうど、その時が底だったみたいで、1枚数円で購入することができました。2021年には百数十円にまで急騰しました。

株の世界でテンバガーになったら奇跡的なのに、暗号資産はそれ以上に高騰することもあるのが魅力だと思います。そこから下がってしまいましたが、将来に期待しています。

現在はトレードというより長期保有が目的で、出口戦略はまだまだ先ですね。

マイニング代行やステーキング、HashHubレンディングやSTEPNなど幅広く暗号資産に携わる

――マイニングの経験もあるとお聞きしました。

これは2018年の9月頃ですね。マイニングの運用代行会社を運営している知人がございまして、そちらに依頼したのがきっかけです。

マイニング業者って、「儲かる」と言いながら、実際には儲かっていないところが多かったりするんです。でも、信頼できる知人に依頼できたのがラッキーでした。

おかげ様でそれなりに利益を生み出すことができました。

――それは、マイニングマシンを買ったということですか。

法人でマイニングマシンを購入して、知人の会社に運用を代行してもらったということです。マシンは中国にありまして、マイニングの報酬は直接自社のウォレットに入ってきます。

マイニング報酬の受け取り方って、業者にはいくつかやり方があって、よくあるのが、業者にマイニング報酬が入ってマージンを抜いてから、クライアントに支払う形です。

でも、その知人の会社はマイニング報酬をそのまま顧客に支払っていて、クリーンなやり方でした。

――今もマイニングは続いているのですか。

中国が21年夏頃から、マイニングを全面禁止すると言い出して、9月に正式にマイニング禁止されてしまったんです。

以前から中国政府は暗号資産に対して厳しい姿勢で心配していた矢先に禁止されてしまいました。マイニング機器は知人の会社に任せて売却しました。

引き取ったところで、日本までの輸送代はかさむし、日本の高い電気料金では、採算を取るのが難しいですからね。投資額を十分回収できていたので、仕方がないだろうということで。

――ほかにも暗号資産関連の運用をしているのですか

ADAをステーキングしているほかは、HashHubのサービスを利用して、USDCのレンディングなどもやっています。

あとは、STEPNもやりました。

B国で儲かると盛り上がっているときに100万円で靴を買ったんですが、あっという間に暴落して、20万円で損切りしました。10日間で80万円の損失ですね。

STEPNについては、その頃、お客様からSTEPNに関する相談も多くて、自分でもやってみないと分からないという部分もありましたので、一応やってみたのですが……。

暗号資産の投資については、お客さんから教わることも多いですね。「このサービスはいいよ」とか。いつもうまくいくわけではありませんが、そういうところは暗号資産に特化しているメリットですかね。

経験がものを言う暗号資産の税務

――暗号資産に対応している税理士事務所は多いのですか

暗号資産に特化した税理士事務所は、最近は増えてきました。21年に暗号資産がバブルを迎えたこともあるので。暗号資産で儲ける人が増えると、それにつれて暗号資産を扱う税理士も増えるんですよ。

ただ、事務所によって特色もあって、DeFiやGameFiが得意なところとか、得意分野が分かれている感じです。

――すると、菊地さんの事務所の特色はどういったところになるのですか。

今は暗号資産を扱っている事務所が増えていると言いましたが、もともとは数が少なかったんです。

私たちが始めた2017年の頃は、暗号資産が値上がりしていたこともあって、多くの税理士事務所が暗号資産を扱い始めたんですね。でも、その後の暴落でやめてしまった事務所も多く、当時から続けている事務所は意外に少なかったりもします。

▼ホワイトテック会計事務所の公式サイトでは暗号資産の税務に関する解説も行われている

暗号資産に関する税法は未整備な部分も多く、税務当局と見解が分かれることもある。そうなると、実務では経験を重ねてきたことによるノウハウも重要になります。

暗号資産の税務調査に対応した経験がある税理士もそれほど多くいません。その点、私たちは2017年からやってきて、様々な経験を積んでいますから、依頼者に安心していただけると思っています。

あとは、申告書を作成する際の損益計算のほとんどを、自社でやっているということですね。

税理士事務所に代わって計算をしてくれる計算代行会社というのがあって、そこに計算を依頼している税理士事務所も多いんです。

だから「暗号資産に対応しています」とうたっていても、実際の計算は代行会社に任せているというところも少なくありません。

――最初から、ご自身で計算されていたんですか。

そうですね。開業した2017年当初からです。

最初は私自身が計算していて、損益計算の確立したノウハウがない中で手探りの状態からのスタートでした。

理想はいくらでもいえるのですが、実際の取引結果をいざ計算してみると、そう簡単にはきれいに計算できない。まずは、いくら利益が出たのかを確定させるのが最初の仕事でしたね。

――そもそも、暗号資産の税務をやることになったきっかけはなんだったのですか。

独立して事務所を構えた後、2017年の12月くらいですが、暗号資産の市場が盛り上がって、対応できる税理士が少ないという話になったんですよ。

私も独立したばかりなので、お客さんを集めたいし、自分も暗号資産をやっているので知識はあるということで引き受け始めたということです。

当時は、全国から問い合わせがありました。「これまで3人の税理士に断られました」という人もいましたね。本当に困っている人が多かったので、助けになりたいという気持ちもありました。

当時は、税理士事務所の中でも、お客さんを大量に集めたものの、計算や書類の作成に手間取ったり、計算間違いがあったりしてトラブルになったという話は多く聞きました。

そんな中で、大変な時期をなんとか乗り越えて、暗号資産特化の税理士事務所としてやってこれたのは幸運でした。

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ホワイトテック会計事務所様はBurry Market Researchの税務顧問も担当いただいております。ご興味のある方はぜひお問合せください。

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次回は税務申告の際のポイントや法人化を考える際の注意点などについて聞きます。インタビューの後編はこちらから。

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