FXの初心者ながら、アベノミクス初期の円安トレンドに乗って資産を増やしたやがてゃ氏。トレードではチャートのパターンやファンダメンタルズだけでなく、相場に対する自分の感覚も大切にしているという。そんなやがてゃ氏に詳しいトレード手法や相場の見方などを聞いた。
インタビュー・編集:内田 誠也
執筆:山本 裕司
やがてゃ氏 プロフィール
歴10年のトレーダー。チャートの形やファンダメンタルズを用いた分析を行い、通貨やゴールド、暗号資産を取引。IT企業の副代表やバーの経営なども行っている。
Twitterアカウント:https://twitter.com/Light_Yagami_a
note:https://note.com/bakueki/
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大きなロットでのスキャルピングはコストやリスクが大きい
――最初にスキャルピングから始めて、その後、スイングに移行していった理由を教えてください。
スキャルピングをやっていた期間は1年ぐらいですね。スキャルピングでも勝てていたのですが、スキャルピングはロットが増えてくると取引しづらくなる。
例えば、板取引をするときは、直近の板に出ている枚数を考えないといけないですよね。運用資金が増えると1取引に張るロットも大きくなって板が薄いとさばききれなくなるので。
直近の板の枚数を全部食ってしまうと、価格が上がってしまいますから。自分で価格を動かしてしまう。
ボラティリティが高くて、500ドル、1,000ドルを狙いにいくトレードならあまり気になりませんが、ボラティリティがなくなってくると枚数が増えるとどうしても滑るんで。
自分が損切りしたときにはもちろん手数料もかかってくるんで、損切りコストを照らし合わせたときにこの枚数だときつくなってくるなていうのがあって。
それで時間軸を延ばさざるを得なくなりました。
――順調に勝ち、資金が増えてきたゆえの問題ですね。
MD4やMT5といったツールを使えばロットが多くても問題なく張れるのですが、ハイロットのスキャルピングは、ちょっと怖いんですよ。
急なトレンドの変動に巻き込まれがちなので。
ゼロカットの海外口座を使っていれば、追証までは取られないのでいいかもしれませんが、板取引になってくると急変動に巻き込まれたときに大損する可能性が高まります。
それで、リスク回避やコストの抑制のため、徐々に取引の時間軸が伸びていって、スキャルピングからスイングに移行していったということです。
チャートや指標からトレンドの転換点を狙う
――取引ではどのような指標を見ていますか。
チャートの形がメインですね。スイングで大切なのはトレンドの転換点を狙っていくことなので、相場が転換するところだけを狙っています。
例えば今のドル円相場でいえば(編集者注:取材日は2023年1月上旬)、ずっと円高傾向でドルが下がってきていますが、僕は円安への転換を狙って、ドル円をロングでエントリーするタイミングを図っています。
まだ、もうちょっと時間がかかるとは思っているのですが。
もちろん、FOMCとか雇用統計やCPIといった指標はもちろん全部見ていますし、ヘッドラインのニュースも見ています。今でいえば、ウクライナ情勢のニュースとか。
ほかには欧米の金利や通貨の強弱なども見てます。
――FOMCの結果やCPIといった指標はどのような見方をしてトレードに活かしていますか。
指標が出た後の動きが明らかにわかるときはありますよね。
いわゆる織り込み済みとよく言われているものですが、そうしたときには、指標が発表された後の通常の動きに対して、逆張りすることはよくあります。
バイ・ザ・ルーマー、セル・ザ・ファクトというやつですよね。指標の結果を見て順張りすることももちろんあります。
チャートの動きを見て、自分がエントリーしやすくて損切りが明確に設定できるという状況であるのを確認するのは大前提ですが、指標の結果によって動くということも当然あります。
――メインはチャートで、FOMCの結果や指標の内容も踏まえて戦略を考えているということですね。
スイングトレードは目先の動きを気にしすぎないことが大切です。
FOMCや雇用統計などで突発的な内容の発表があったところで、そのときの動きは一時的なことが多くて、ほとんどの場合、最終的にはトレンド方向に向かいます。
ですから、指標などは気にしないことが多いですね。明らかに相場の転換をうかがわせるようなデータが出たときは別ですが。
――トレンドが上向きか下向きか、といったところはチャートのパターンから分析しているのですか。
上下のどちらに抜けそうという見通しはある程度持ちつつ、レンジを組んでもらってそのレンジがどっちにはめるかっていういイメージですね。
日足で見て高値圏か安値圏内かという判断ができないとエントリーしづらいですね。
暗号資産やブロックチェーンへの期待は全くない
――暗号資産だとFRやOIなどのデータを見て取引している人も多いと思うのですが、暗号資産の取り引きではデータを参考にしますか。
FRやOIなどのデータを見てはいますが、あまり気にしないですね。特に22年ぐらいから、やっと暗号資産が金融市場に組み込まれ始めて、見る必要はほとんどなくなったと思っています。
どこが仕掛けてくるとか、どこが買われ過ぎだ、売られ過ぎだみたいなことを検証するのに、22年の前半はデータの分析も結構機能していたとは思います。
しかし後半になって株と連動するようになってきてからは、他のリスク資産と同じような動きをし始めました。そうなると、あれこれデータを見る必要もないでしょう。
――暗号資産取引で利益を上げていても暗号資産の未来には全く関心がないという人もいますが、そのあたりはどう考えていますか。
僕も暗号資産には特に期待していませんね。
ボラティリティさえあれば取引の対象として興味は湧きますが、今はボラティリティもなくなってしまい、取引対象としての興味も薄れました。(編集者注:取材日は2023年1月上旬)
暗号資産そのものだけでなく、NFTやメタバースなどを支えるものとしてブロックチェーン技術に期待している人もいますが、それについても興味はないですね。
今の段階で、そうした未来に投資しようとは思わないし、暗号資産の価値がゼロになっても構わないです。
もちろん、暗号資産が日常の中で使われたりメタバースが生活の中に入ってきたりしたら、利用して利便性なども実感するんでしょうが、それはそのときになってからだと思っています。
――取引の対象としても興味がなくなったということですか。
そうですね。例えば、ゴールドの値動きが激しいとか、株式市場が過熱しているという状況があれば、暗号資産は全く見ないでしょうね。
今の暗号資産の相場を見ても、草コインは別にして、ビットコイン単体のファンダが出たところで相場は動かないじゃないですか。だから、暗号資産はほとんど見ないですし、クリプト単体のファンダも仕入れないですね。
もし、また半減期などで再びバブルが起きるようであれば見始めるのかもしれませんが、現段階では相場を追うことはありません。
暗号資産の半減期相場もパワーが落ちている
――ビットコインの次の半減期は23年末から24年初頭で、これまでのようなバブルを期待している人もいますが、次の半減期についてはどう見ていますか。
今までの周期的なバブルというのは、もちろん半減期というタイミングとは無縁ではなかったと思うのですが、前提としてこれまでは世界的な金融緩和を行っていた。
ですから、いま欧米が積極的に金融引き締めを行っている中で、これから同じようなバブルが起きるのかどうか。今後、暗号資産相場に、どこからお金が入ってくるのか疑問です。
2024年は少なくともいまよりは上昇していると考えてるので現物を買えばいいと思っているのですが、正直あまり自信はないですね。
――次の半減期で上昇相場になっても、これまでのような高騰は見込めないということでしょうか。
金融緩和を除外しても、半減期のパワーは徐々に緩やかになってきていますよね。上昇のカーブが山なりになって、2トップをつけ始めていますので、そろそろ変動幅も落ち着いてくると見ています。
おそらく、次とその次、バブルの波に乗るチャンスは2030年までだと思います。それ以降は半減期を迎えてもこれまでのような変動は起きないと思います。
そう考えると、バブル相場がやってくるのは、これからの7年間であと2回。そこに賭けてみるなら、そろそろ動き出さなければならない。
目の前に一攫千金の夢がある以上は、やるしかないという気持ちもあります。
ただ、やはり今回の半減期は自信を持てないですね。
――すると、半減期前に株価と連動してビットコインも下がったら勝負のしどころという感じですか。
いったん株が下がって、そこから値を戻しつつあるタイミングで半減期を迎えれば、ビットコインは買われていくと思います。
株価は特にナスダックですよね。ナスダックの株価が上がらないのに、ビットコインだけが上がっていくとは考えづらい。
単に半減期だからというだけでなく、各国の金融政策や株式市場の動きなども見ていかないと判断は難しいですね。
トレードを重ねていく中で、相場観を身に付けていったというやがてゃ氏。次回はこれまでの失敗談や、失敗の中から学んだことについてお聞きします。
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