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空調機・フッ素化学製品を製造販売するグローバル企業・ダイキン工業
以前、BMRさんにインタビューされた際に言及した銘柄であるダイキン工業(東証プライム:6367)が2023年5月9日に、2023年3月期決算を発表しました。
参考:「社会が不安定になっても業績が悪くなりづらい会社に投資する」株式投資家・おせちーず氏 3/4
クボタ(6326)の決算資料の読み方を書いた記事に倣い、ダイキン工業についても決算資料を読み解くことにします。
参考:【決算資料の読み方】世界で闘い続けている信越化学工業(4063) 株式投資家・おせちーず
ダイキン工業は空調機・フッ素化学製品を製造販売するグローバル企業です。
パッケージ型エアコンで空前のヒットを生み出したダイキンの成り立ち
1924年、山田晁氏によって創業されました。
創業時の社名は「大阪金属工業所」で、飛行機用ラジエーターチューブの製作を生業としていました。
1933年からフロンの研究に着手し、1935年にフロンの生産に成功します。
その頃、新規事業として冷凍機の製造を開始します。
その後、海軍の潜水艦用の『ミフジレーター』冷凍機の製造に着手し、1938年に、呉海軍工廠に日本で初めてフロン冷媒を使用した『ミフジレーター』冷凍機を納入しました。
1951年、日本初のパッケージ型エアコン『ミフジレーターエヤコン』を開発します。
従来のエアコンより操作を楽にすることに成功し、ボタン一つでの運転を可能としました。その便利さが評判となり、パッケージ型エアコンは空前のヒット商品になりました。
「エアコンのダイキン」の基礎はこの時築かれました。
1963年、「大阪金属工業株式会社」を「ダイキン工業株式会社」に社名変更しています。
現在、業務用・家庭用エアコン業界では世界最大手の企業です。
個人投資家に身近な製品は、家庭用のエアコンでしょう。
ルームエアコン「うるさらX」シリーズがよく知られています。
ちなみに筆者の自宅にも1台設置しています。
キャラクターの「ぴちょんくん」はよく知られています。
出典:ダイキン工業website ぴちょんくんのプロフィール
ダイキンはさまざまニーズに対応する空気のスペシャリスト集団
ダイキン工業は世界で唯一、冷媒から機器開発、製造・販売、アフターサービスまでを自社で行う総合空調メーカーです。
「温度」 「湿度」「気流」「空気清浄」という、空調の四要素を手掛け、地域や気候、文化ごとに異なるニーズに対応し、「空気のスペシャリスト集団」を名乗っています。
その製品は世界100以上の拠点で生産され、世界170ヵ国以上で販売されています。
海外売上高比率が約8割を占める、グローバル企業です。
株式市場におけるダイキン工業は、東証33業種で「機械」に属し、時価総額は約7兆5千億円で、業種内で最大です。
TOPIX Core30採用銘柄です。
2023年3月期決算短信を読む
【連結経営成績】営業利益率は低下
クボタの記事で、「ちらっと見て終了」と書いた(1)連結経営成績です。
「成績」は既に終わったことの振り返りでしかないので、チラ見で終了ですが、EPSと営業利益率は変化を一応確認します。
EPSは前年比で上昇しましたが、営業利益率は低下しました。海外の多くの生産拠点において、部品不足に直面したことが営業利益率低下の理由の一つであるようです。
【連結財政状態】自己資本比率が50%程度は特筆する必要が無い水準
自己資本比率だけとりあえず確認する「(2)連結財政状態」です。
自己資本比率が50%程度は特筆する必要が無い水準です。
【連結キャッシュ・フローの状況】営業キャッシュ・フローは前年比で900億円程度減少
「(3)連結キャッシュ・フローの状況」で確認する営業キャッシュ・フローは前年比で900億円程度減少しています。
棚卸資産の増加が営業キャッシュ・フローの減少理由と説明されています。
棚卸資産は、企業が販売する目的で一時的に保管している商品・製品・原材料・仕掛品の総称で、在庫に近い概念です。
財務キャッシュフローは、長期借入金の返済が多かったために変化が大きくなりました。
【業績予想】通期でわずかな増収増益
筆者が一番注目する、「業績予想」は通期でわずかな増収増益を見込んでいます。
例年の傾向ですが、多くの企業が期初に出す業績予想は控えめな数字が多いです。
決算発表の翌営業日は、やや失望売りが出たようにも見えますが、その後は対TOPIXでややアウトパフォームしています。
【セグメント情報】地域別のセグメント情報とクロスで開示されている点が素晴らしい
筆者がダイキン工業の決算短信を見て、親切だなと思った点は「セグメント情報」です。
事業別に「セグメント情報」を開示する企業が多い中、地域別のセグメント情報とクロスで開示されている点が素晴らしいと感じました。
どの地域でどの事業がどれぐらい稼げているかがわかります。
2023年3月期に前年度比で大きく売上高が伸びたのは米国です。
また、地域別の有形固定資産や減損、のれん償却も掲載されており、他社との違いが見えます。
減損やのれんはなじみが無い言葉かもしれませんので、後で改めて触れます。
ダイキンは実はM&Aに積極的な企業である
ダイキン工業はM&Aを積極的に実施している企業です。ダイキン工業のwebsiteに掲載されている2011年以降の主なM&Aは以下の通りです。
最近のダイキンのM&A実績
- 2011年 トルコの空調機メーカー「エアフェル社」を買収
- 2012年 米国住宅用空調大手「Goodman社(現Daikin Comfort Technologies North America社)」を買収
- 2013年 インドネシアの業務用空調機器の販売代理店である「TSP社」を買収
- 2015年 大手化学メーカー ソルベイ社から欧州の冷媒事業を買収
- 2016年 イタリアの業務用冷凍・冷蔵機メーカー ザノッティ社を買収、北欧のエアフィルターメーカー ディンエア社を買収
- 2017年 オーストラリアの空調サービス・ソリューション企業 エアマスター社を買収
- 2018年 オーストリアの冷凍・冷蔵ショーケース大手AHT社を買収
M&Aを実施したことによって発生するものが「のれん」です。
企業を買収した場合の、「買収額と買収される企業の時価純資産の差額」のことです。
買収された企業にとっての「ブランド的価値」とも言われます。
M&Aはターゲットとなる企業が持つ収益力がそのインセンティブになります。
見積もられた収益力が高ければ高いほど、「のれん」の金額は上がっていくことになります。
「のれん」の扱いは、会計基準によって異なります。
「のれん」の償却について投資家にわかりやすいよう配慮がある
ダイキン工業が採用している「日本基準」では、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」がその扱いを決めています。
のれんを、無形固定資産に計上し、20年以内のその効果が及ぶ期間にわたり、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。償却とは価値を減らすことです。
日本基準では「のれん」は時間の経過とともに価値が減ると捉えます。償却額は販売費及び一般管理費に表示されます。
ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができます。
ダイキン工業の決算短信では、「のれん」の償却について、投資家にわかりやすいよう配慮があります。
2023年3月期では約380億円ののれん償却が発生しています。
これは「販売費及び一般管理費」に計上される「費用」ですので、M&Aをコンスタントに実施している「日本基準」の会計を採用している企業では、毎年のように発生する費用です。
この費用を考慮しつつ、利益をコンスタントに計上していくのは容易ではありませんが、現時点でのダイキン工業はうまくやっている印象です。
一方、IFRSという会計基準ではこの定期的な償却ルールが現時点ではありません。
「のれん」が相応の価値を持たなくなったと判断されれば、その価値を落とす「減損」処理が行われます。
このルールに関しては議論があり、将来的には変更される可能性があります。
M&Aは事業範囲を拡大する手段の一つです。
米国にはM&Aを業績成長ドライバーにしている企業が少なくありません。
一方で日本ではM&Aをうまく業績に結び付けている企業が残念ながらそう多くありません。
ダイキン工業にはM&A巧者になってほしいです。
出来れば分割してほしい
ダイキン工業の現在の株価は25,000円ぐらいです。100株単位で取引するとなると250万円というなかなかの規模です。
NTTのように25分割とまでは申しません。気軽に取引しやすいように10分割ぐらいしてくれないかなぁというのがささやかな筆者の願いです。
ただ、個人投資家の資金が入らなくても、大型株であるが故プロの資金が入りやすい銘柄であり、分割のインセンティブが起きにくいかなぁと想像しています。
エアコンの市場は今後新興国需要の拡大が見込まれ、まだまだ成長分野だと考えています。
筆者は、単元未満株取引等を利用してコツコツ買っていこうと考えています。
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