先日BMRさんに掲載されたびっとぶりっとさんの記事で「GMOフィナンシャルホールディングス」(東証スタンダード:7177、以下:GMOFH)に言及されていました。
参考:「資産を築くなら事業よりも投資のほうが手堅く再現性が高い」個人投資家・びっとぶりっと氏 3/3
GMOFHの傘下にあるGMOあおぞらネット銀行の真のポテンシャルを評価して保有されているとのことで、筆者も興味を惹かれました。
そこで今回は筆者なりに把握したことを書かせていただこうと思います。
GMOFHの基礎情報
- 銘柄コード:7177
- 上場市場:東証スタンダード
- 上場年月:2015年4月
- 時価総額:約872億円 2023/7/14現在)
- 決算期:12月末
- 東証33業種分類:証券・商品取引先物業
- 主な事業:個人投資家向け金融サービス会社、FX取引高の最大手。証券/FX事業、暗号資産事業を営む。傘下にGMOクリック証券、GMOコインなど
社名から容易に想像できますが、GMOインターネットグループ(東証プライム:9449)が発行済株式数の約63%を保有している大株主です。
筆者は大型株投資が多いので、GMOFHの時価総額規模であれば基本的には投資対象に入りません。
そういう意味では、びっとぶりっとさんには今までの筆者とは違う視点での銘柄分析をさせていただける機会を得たように思います。
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GMOFDは年4回の配当を実施
GMOFDに関して特筆すべきことは年4回配当を出していることです。
3の倍数月ごとに配当を出しています。
2023年12月期の予想配当利回りが4%台後半(2023/7/14現在)ですので、高配当利回り株といっていいでしょう。
5年の株価チャートを確認します。
スタンダード市場銘柄をTOPIXと比較するのはナンセンスかもしれませんが、参考のために入れました。
残念ながら芳しくない株価の動きです。
2022年後半の株価下落はびっとぶりっとさんが記事で言及している「GMOあおぞらネット銀行という子会社による特別損失計上」が原因でしょう。
2022年10月25日に発表されています。
以下、「特損計上」と表現します。
GMOFHとGMOあおぞらネット銀行の関係
「特損計上」に触れる前に、GMOFHとGMOあおぞらネット銀行の関係を明らかにしておきます。
GMOあおぞらネット銀行の前身は日債銀信託銀行です。
「日債銀」は「日本債券信用銀行」の略です。
かつて日本に存在した長期信用銀行3行の一つでした。
1998年12月に金融庁検査における実質2,700億円の債務超過が認定され、金融再生法により、特別公的管理下・一時国有化が決定されています。
その後投資グループにより売却され、2001年に「あおぞら銀行」と行名を変更しています。
日債銀信託銀行は日債銀の子会社として1994年に開業しました。
前述した経緯に伴いあおぞら信託銀行となりました。
2016年6月、あおぞら銀行による公的資金の完済を契機に、GMOインターネットとの共同運営によるインターネット専業銀行事業への参入に向け資本業務提携が行われました。
2018年6月にGMOあおぞらネット銀行に社名変更し、同年7月からインターネット銀行事業を開始しています。
一方で信託業務については2018年10月に、あおぞら銀行に移管しました。
2023年6月末時点で、GMOFHはGMOあおぞらネット銀行の議決権の7.43%を保有しています。
GMOあおぞらネット銀行のビジネス
GMOあおぞらネット銀行は住宅ローン融資も投資信託等の金融商品販売もしていません。
一方、「かんたん組込型金融サービス」と呼ぶ「組込型金融(エンベデッド・ファイナンス)」の提供で差別化を図っています。その代表的なものが「銀行API」です。
他行と違い「銀行API」の多くを無償で提供することで、利用者の利便性を図り、銀行としての収益につなげることが目的と考えられます。

2021 年発表の中長期経営計画で掲げた戦略は3つでした。
・スモール&スタートアップ向け銀行No.1
・組込型金融 No.1
・テックファーストな銀行 No.1
しかし、業績は芳しくありません。
事業計画は2023 年3月期の黒字化を見据えていましたが、2016年度から2022年度まで7期連続で最終赤字決算になっています。
直近3期の状況は以下の通りです。
出典:GMO あおぞらネット銀行株式会社の種類株式取得に関するお知らせ
GMOあおぞらネット銀行の誤算
GMOあおぞらネット銀行の経営には一つ誤算がありました。
多くの銀行の収益の柱は融資から得られる貸出金利息です。
一方、GMOあおぞらネット銀行は振込等から得られる手数料収入です。

しかし、2021年10月から銀行間送金を処理する「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の手数料が大幅に引き下げられました。
銀行間手数料の引き下げを受けて、各銀行が利用者に請求する振込手数料の値下げが相次ぎました。
GMOあおぞらネット銀行も振込手数料の値下げを余儀なくされ、収益が想定より落ち込む結果になったのです。
2022年9月末、特別損失計上のわけ

特別損失の計上に関するお知らせ(GMOFH IR情報より)
GMOあおぞらネット銀行は2022年10月25日に経営計画の見直しとともに株主割当増資を発表し、株主のあおぞら銀行、GMOインターネットグループ、GMOFHが引き受けました。
GMOFHは既に出資していたGMOあおぞらネット銀行株式の実質価額が著しく減少していたことにより、減損処理を実施したことによる投資有価証券評価損 963 百万円を計上しています。
これが2022年10月25日に特別損失計上を公表した理由です。
結果、GMOFHは2022年12月第3四半期決算で、前期比大幅な減益となりました。
種類株式の取得
びっとぶりっとさんは、GMOFHがGMOあおぞらネット銀行について「将来、決められた価格で株を購入する契約」があることに言及していました。
それについては2023年6月19日に適時開示が出されています。
GMO インターネットグループとGMOFHが GMOあおぞらネット銀行について主要株主認可を取得した日、あるいはインターネット銀行事業の正式開始日から5年が経過した日等のいずれか早く到来する日に、あおぞら銀行が保有する種類株式を取得する契約が存在していたからです。
出典:GMO あおぞらネット銀行株式会社の種類株式取得に関するお知らせ
インターネット銀行事業の正式開始日から5年が経過したことで、種類株式取得に至りました。
とはいえ、普通株式に転換後議決権を得る種類株式ですので、取得時点では議決権の割合を変更するものではありません。
出典:GMO あおぞらネット銀行株式会社の種類株式取得に関するお知らせ
GMOあおぞらネット銀行のポテンシャルを買う?
びっとぷりっとさんがおっしゃるように、GMOあおぞらネット銀行は現状非上場企業です。
GMOあおぞらネット銀行のポテンシャルを買って、GMOFH株を持っているとおっしゃっていました。
この目的での投資が実を結ぶとしたら、GMOあおぞらネット銀行がIPOすることでしょうか。
それまでに2023年6月に取得した種類株式を普通株に転換していれば、GMOFHはGMOあおぞらネット銀行のIPOによって利益を得られるでしょう。
それ以前に、GMOあおぞらネット銀行自身が黒字決算にする必要があるようには感じます。
ポテンシャルがわかりやすい形になるにはまだ少し時間がかかるかなと感じました。
おせちーずはGMOFHを買う予定はない
筆者はGMOFHを買う予定はありません。
最初の方で申し上げた通り、大型株投資が多いので、現時点のGMOFHの時価総額規模であれば基本的には投資対象に入りません。
中小型株を全く手掛けないわけではないですが、すごくニッチ市場に強いと思えるようなビジネスを営んでいるといった、何か際立つものがある場合のみです。
残念ながら現時点ではGMOFHにそのようなものを感じません。
また、現時点でスタンダード市場銘柄であるGMOFHがプライム市場上場銘柄になるためには流通株式比率を上昇させる必要があると考えられ、その際には大株主が売出す可能性が高いです。
それは流通株が増えるという理由で、株価下落の原因になりやすいため、そのようなコーポレートアクションがあれば、プライム市場上場をもくろんでいるのかなと解釈して、買いを検討するかもしれないです。
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びっとぶりっと氏のGMOあおぞらネット銀行に関するインタビュー記事はこちら
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おせちーず氏のそのほか銘柄解説はこちら。