暗号資産トレーダーのりゅうりゅう氏に、過去の印象的な取引について伺いました。
りゅうりゅう氏 プロフィール
便利屋を営みながら暗号資産の取引を行うトレーダー。株で破産、借金経験あり。
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取材実施日
2024年3月15日
「何もできないなら、何でもやってやろう」と考え便利屋を始める
ーーご経歴について教えてください。
東京在住の40代、自営業をしながら暗号資産のトレードを行っています。
出身は四国ですが、19歳のときにプロのミュージシャンを目指し上京しました。
最初はアルバイトをしながら音楽活動を続けていましたが、25歳のときに夢を諦め営業系の仕事に就職。
その後広告業界の営業職へ転職し、約十年間務めました。
一人で黙々と電話をかける営業スタイルが性に合ったのか、20代後半では年収が約1,000万円になりましたが、次第に個人情報の規制などで業界の先細りを感じるようになりました。
また、このまま会社員で人生が終わるのも面白くないという思いも抱き始め、34歳で独立し、便利屋を開業しました。
投資はテレアポの営業を行っていた2009年ごろ、30歳のときに株式投資から始めましたね。
ーーなぜ便利屋という仕事を選んだのですか。
独立しようと考えていたときに、数年前に見たテレビのニュース番組の特集で、ある便利屋が取り上げられていたことを、ふと思い出したのです。
便利屋というのは、別名「何でも屋」で、私は学歴も資格もなく取り柄といえば、営業ができること、体力があることだけで、普段から悲観的ではなく現実として「自分は何もできない人間だな」と思っていました。
そこで、「何もできないなら、何でもやってやろう」ということで便利屋を始めることにしたんです。
おかげさまで最初の数年間はかなり忙しくほとんど休日がありませんでした。
ただ、頑張ったかいがあって、売上も好調で今では長年一緒に働いてくれているアルバイト2、3名に現場を任せ、私はほぼサイドFIREの状態です。
ーー便利屋にはどんな依頼が来るのでしょうか。
一番多いご依頼は、家の中での荷物の移動や家具の組み立て、ゴミ屋敷の片付けなどガテン系の仕事ですが、何でも屋なので色々あります。
夜逃げの手伝いをしたこともありますね。
実際のゴミ屋敷は、テレビで放映される家よりひどく、床から天井の高さ80%分までゴミをため込んだ家を片付けたときには、全て終えるまで2日間かかりました。
三井住友建設の株式の周期性を活用し元手300万円を1,000万円に
ーー投資のご経験は2009年からとお聞きしましたが、きっかけについて教えてください。
当時はリーマンショック後の時期で、私の親族が株取引を行っていたため、そのトレードの様子を見せてもらう機会がありました。
親族は株式投資の配当金など毎月4万円以上の利益を得ていたため、私自身も儲けたいという気持ちから、日本株を買い始めました。
ただ、当時は投資に関する知識が全くなく、リーマンショックがあったということすら、あとから知ったほどでしたね。
ーー最初はどのような取引でしたか。
300万円を元手に株の現物を購入したのですが、価格が下落したら売り、上昇したら買うといった取引を繰り返した結果、半年で100万円ほど失ってしまいました。
そのような取引を1年半ほど続けながらも、四季報や株式投資に関する本を読んだり長期チャートを見たりと勉強も始めましたね。
負け続きのなか、あるとき三井住友建設の株が2年に1度の周期で価格が上昇することに気がつき、2011年にも上昇の可能性があると予測しました。
2010年の時点では価格はまだ下落傾向だったため、そこで現物を買い集め、さらに価格が上昇し始めたところで信用取引でさらに買い増ししました。
そして、2011年3月に予想が的中し、価格が2倍に上昇。
すべて売却し利確しましたが、これにより元手を300万円弱から1,000万円以上まで増やせました。
ーーその後はどのような取引をしたのでしょうか。
信用取引に魅了され、株の空売りのデイトレードにハマりました。
証拠金1,500万円で最大5000万円弱までレバレッジをかけるようになり、今思えば完全にギャンブルをしていましたね。
ーー全資金の3倍までレバレッジをかけていたということでしょうか。
はい、それに加えて空売りのナンピンを始めてしまい、高いレバレッジと掛け合わせたことで僅かな価格の下落でも個人としては大きな利益が出るようになりました。
そこで「最高じゃん」と一生勝てるような気分になり、毎日、価格が上昇している小型株や中型株を空売りし利確するというのを繰り返していました。
ーーその時はなにを参考に取引していましたか。
ファンダメンタルズは見ていなくて、移動線の乖離率と上昇率、PERとPBRも多少見ていましたが、どちらかといえばチャートの形を重視していました。
澤藤電機を空売り後に8日連続でストップ高、資産を失い借金を抱える
ーーレバレッジをかけた空売りがうまくいって個人としては大きな利益が出たとのことですが、その後について教えてください。
しばらくの間、一日10から30万円の利益が出ていましたが、あるとき状況が一変しました。
澤藤電機の株価が一気に上昇したのを見ていつも通り空売りをかけたところ、なんとそこから8日間、ストップ高が続きました。
三井住友建設の取引やその後の空売りの取引で資産は2,000万円弱まで増えていたのですが、その利益を失うどころか借金を抱えることになってしまいました。
▼澤藤電機の2016年から2018年のチャート。
参考:澤藤電機がストップ高、岐阜大と低コストの水素製造装置を開発|会社四季報オンライン
ーーストップ高になると取引はどうなるのでしょうか。
ストップ高になるとナンピンどころか売買もできなくなります。
東京証券取引所の場が終わる15時には少しだけ売買が成立するのですが、株を買う人の方が圧倒的に多い場合、ほとんどの人は売れません。
それで全体の9割以上の市場参加者が売れない状態になり、それが8日以上続いたという、私にとってはかなり悲惨な相場となりました。
ちなみに暗号資産はストップ高、ストップ安がなく、いつでも売買ができる点においては安心感がありますね。
ーーそれでりゅうりゅうさんの取引、資産としてはどうなったのでしょうか。
当時の私は500万円を証拠金にレバレッジをかけて1,500万円ほどのポジションでその銘柄に空売りしていて、結果的に証券会社に対して800万円の借金を抱えることになりました。
当然、一括では返金できないので弁護士を通じて分割返済に変更する交渉を行い、返金することになりました。
800万円は大金ではありますが、便利屋の仕事では売上がそれなりにあったのと、返金できない金額ではなかったのが不幸中の幸いでした。
最終的に、5年弱で返済しました。
ーー当時はどのような心境でしたか。
食事も喉を通らず、不眠の状態がしばらく続き精神的に不安定な状況が続きました。
仕事は変わらず順調で、オンとオフの切り替えはできていましたが、帰宅した途端、急に落ち込んでしまい、死にたいと思うことすらあって生活は荒れていましたね。
数日前まで資産がどんどん増えていく日々だったのに、ある日を境に突然借金を抱えてしまうという、振れ幅の大きさに精神が壊れてしまい、今振り返ると鬱状態だったと思います。
2017年にICOを知り、暗号資産のトレードを始める
ーーその後について教えてください。
借金をコツコツ返済しながら株式の取引を行い、少額ながらFXも始めました。
懲りずに空売りも行っていましたが、大きな利益は出なかったですね。
そんな中、2017年の下旬に知人が暗号資産でICOを行なったことで初めて暗号資産という存在に触れ、ビットコインやイーサリアムに今までにない新しい通貨の可能性を感じました。
特に、ビットコインの非中央集権の概念には強く惹かれ、暗号資産のトレードも少しずつですが始めました。
知人が展開したICOにも参加しましたが、現在はそのトークンは存在していません。
今から思えば、当時のICOはほぼ詐欺で、まともなトークンはなかったですね。
ーー取引は最初からうまくいったのでしょうか。
単純にトレードが下手だったということもありますが、当時は1日に20、30%ほど価格が動くなどボラティリティも大きく、損をする方が多かったですね。
特に、ビットコインやXEMを暴落直前の2018年1月に高値で買ってしまい、しばらく塩漬けになってしまいました。
XEMを底値で買い、アップデートの直前に売却し数千万円のリターンを得る
ーー暗号資産の取引で印象的なうまくいった取引について教えてください。
2020年5月、6月にXEMをほぼ底値で買ったあと、2021年3月に高値で売却したことで数千万円の資産を持つことができました。
これが投資家としても転機となり、強く印象に残っています。
ーーなぜ2020年5月、6月にXEMを買ったのでしょうか。
2021年にXEMが大型アップデートされ、新しい通貨ができるという情報を知ったからですね。
アップデートまで価格が上昇し続ける可能性がある一方、2020年の時点ではXEMの価格は4、5円で底を這うようなチャートだった。
これ以上の下落は考えにくく、ビットコインの価格の上昇やアップデートのファンダメンタルズに伴いXEMも値上がりするだろうと考え、資産の80%をXEMにつぎ込み、保有し続け、2021年3月17日の大型アップデート直前に価格が80円辺りまで上がり、その辺りで利確しました。
結局、XEMの最高値はアップデート直前の3月5日で90円ほどでしたが、アップデート後は価格が下落し、最適なタイミングで売り買いができたと思います。
参考:XEM(ネム)、2021年を振り返って~価格はイベント次第なのか?~ – DMMビットコイン(2021/12/27)
▼2020年から2021年のXEM/USDTのチャート
ーー2020年5月頃から2021年3月までと長い期間XEMを保有していましたが、途中でビットコインに変えようとは考えなかったのでしょうか。
「アップデートの直前で売却する」と決めていたのでビットコインに変えようとは考えなかったですね。
当時はすでに便利屋を始めており、生活費以外の余剰資金は全てトレードに充てていたのですが、以前ほどの資産はなかったため、資金効率の観点で価格の上昇率が高いアルトコイントレードを優先すべきだと考えていたというのもあるので。
ーー2021年までの投資経験から、アップデート直前に売却するのが良いだろうという判断だったのでしょうか。
XEMに限らず、イーサリアムなど他のトークンでもアップデート直前まで価格が上昇するということはよくあったので。
特にXEMは日本で人気があり、時価総額も当時20位以内と一定の存在感もあり、お金も強く集まるのではと思いました。
アップデート直前で売却してからは、XEMはもう購入していませんし、特に情報も調べていません。
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全二回のりゅうりゅう氏のインタビュー、後編に続きます。
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