外食産業3社の銘柄考察 株式投資家・おせちーず 前編

おせちーず氏 プロフィール

投資歴約31年の女性株式投資家。新卒でシステムエンジニアとして従事し、その後証券アナリストを経て、現在は企業に勤めながら大学で非常勤講師にも従事。『個別株でインデックス以下のローリスク・ローリターン』を追求した株式投資を行っている。
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すかいらーくなど3社を比較

BMRさんから、「外食産業」についての複数の銘柄考察をお願いしたいと依頼を受けました。

「外食産業」はどんな消費者にも身近な銘柄です。

とはいえ、上場している外食サービス企業は規模も業態もさまざまです。

かけ離れている業態を比較する意味を見出せなかったので、同業態を比較したいと対象を絞り込んだ結果、

  • すかいらーくHD(東プ、3197)
  • サイゼリヤ(東プ、7581)
  • ロイヤルHD(東プ、8179)

というファミリーレストラン系3社を比較することになりました。

前提としての外食産業を取り巻く環境

まずは事業環境に簡単に触れます。

2020年春の新型コロナウィルス感染拡大から5類への移行まで約3年間、時に、休業、営業時間短縮を余儀なくされた業界です。消費者に身近な業界ですからご存知の方が多いでしょう。

来客が無ければ売り上げが上がらない業界ですから、営業の制限は素直に業績に反映されました。

そうなると、パートタイマー従業員の削減や、店舗数の削減といった「生き残るため」の施策が打たれます。2023年に入ってから、客足は戻りつつあります。

しかし、外食産業の試練は別の形で既に訪れていました。

人手不足と原材料費の高騰です。実は、飲食業は新型コロナウィルス感染拡大前から慢性的に人手不足な業種でした。

出典:人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)

帝国データバンクの調査によると、2022年10月時点で人手不足を感じている企業の割合は飲食店が最も多く、76.3%でした。

飲食店では、コロナ禍の営業規制や休業によりアルバイトを解雇またはシフトを減らさざるを得ず、営業を再開しても離れてしまった人員が戻って来ませんでした。

さらにコロナ前と比べて、以下のような理由で応募が集まりづらくなっています。

・感染リスクを心配し、飲食店でのバイトを敬遠される

・飲食業界のコロナ打撃を目撃し、業界の行き先に不安を覚えている

出典:人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)

「飲食店ドットコム」が2022年に実施した調査によると、飲食店の9割は原材料費の高騰の影響を受けていると回答しています。

出典:飲食店ドットコム 「原材料の価格高騰」に関するアンケート調査

原材料費高騰は、食材の多くを輸入に依存する日本において、円安が大きくマイナス寄与していることでしょう。

外食産業は原材料を調達して加工して提供しているので川上、川下とカテゴリーで言えば、川下産業です。川下産業は、最終顧客へ提供する際に価格転嫁ができないと、何かが犠牲になる業態です。

外食産業時価総額ランキング

3社の比較の前に、上場外食産業のイメージをつかんでいただくために、時価総額上位10社を示しました。

ゼンショーHD(東プ:7550)の株価は1年で2倍近く上昇しています。また、外食産業と言っても、扱う商品や業態は様々だなということが改めてわかります。

この記事で比較対象にしているロイヤルHDは15位です。

ちなみに筆者はすかいらーくHD、トリドールHD、吉野家HDをもう何年かにわたって保有しています。どれも最初は株主優待目当てでした。今は資産としてもそれなりに育っています。

銘柄コード企業名時価総額(百万円)主なブランド
7550ゼンショーHD1,006,298すきや、なか卯
2702日本マクドナルドHD759,201マクドナルド
3197すかいらーくHD465,128ガスト、バーミヤン
3397トリドールHD324,343丸亀製麺
3563FOOD & LIFE COMPANIES291,797スシロー
7581サイゼリヤ253,520サイゼリヤ
3387クリエイト・レストランツ・ホールディングス243,033磯丸水産、かごの屋
7616コロワイド209,872甘太郎、牛角
9861吉野家HD183,404吉野家、はなまるうどん
7630壱番屋173,996CoCo壱番屋
7412アトム172,654ステーキ宮、寧々家
出典:各社website等より筆者作成 2023/9末現在

3社の人となり

では、今回比較する3社を比較してみましょう。

すかいらーくHDサイゼリヤロイヤルHD
ブランドガスト、バーミヤン、ジョナサン、しゃぶ葉、夢庵、ステーキガスト、グラッチェガーデンズ、藍屋、むさしの森珈琲、から好しなどサイゼリヤロイヤルホスト、てんや、シェーキーズ、シズラー、リッチモンドホテルなど
店舗数2,973(2023年2Q)1,547(2022年4Q)673(2023年2Q)
決算期12月8月12月
売上高(直近本決算、単位:百万円)303,705144,275104,015
株主優待制度ありありあり
株主優待を得るために必要な最低株数100株100株100株
出典:各社website等より筆者作成

店舗数から容易に想像できますがすかいらーくHDはファミレスの最大手です。

投資歴が浅い方はご存じないかもしれませんが、1984年に「すかいらーく」として上場し、2006年にMBOで株式を非公開化しています。その後株式は投資ファンドが所有し、2014年10月に再上場しています。

サイゼリヤは低価格を売りにしているイタリアンレストランチェーンです。収益の約3割を中国で得ています。

ロイヤルHDは、外食産業に分類されますが、収益の約2割をホテル事業から得ています。また、世界30社の航空会社に機内食を提供しています。

3社とも、株主優待制度があります。おそらくそれが一つの理由ですが、個人投資家に人気がある銘柄です。

ロイヤルHDは双日(東プ:2768)が20%を保有する筆頭株主です。その結果、法人の持ち分が他の2社より多く、個人株主の保有割合は相対的には少ないです。

すかいらーくHDサイゼリヤロイヤルHD
決算期2022/122022/82022/12
「その他」の保有割合74.85%69.25%37.56%
出典:各社website等より筆者作成

注:有価証券報告書の株主分布状況において「その他」は概ね「個人」

3社の指標比較

ざっくりと、指標を比較します。

すかいらーくHDサイゼリヤロイヤルHD
時価総額(百万円)465,128253,520132,482
株価(円)2,044.54,8502,657
予想1株配当(円)6(2023/12期)18(2023/8期)18(2023/12期)
連続増配年数2
実績配当性向0.0%15.7%18.9%
予想PER(倍)116.256.339.0
PBR(倍)2.942.523.18
自己資本比率37.1%63.5%35.8%
出典:各種データより筆者算出 2023/9末現在

結果論ですが、時価総額は店舗数に比例した形になっています。

配当や配当性向は3社とも高くありません。サイゼリヤは近年、配当は1株18円と、定額です。ロイヤルHDの予想配当は前年度より8円増配です。

外食産業は概してコロナ禍以降は万が一の資金繰りを重視しているだろうと考えられ、現金を使わなければならない株主還元は後回しにされがちでしょう。

次の記事で述べる予定ですが、「設備投資」に積極的な企業も多いと見受けられます。

同時点でのプライム市場全体の予想PERは15.61倍であることを鑑みると、バリュエーションで評価したら、やや割高に見えます。

株価の5年推移比較

株価の5年推移比較です。

参考のためにTOPIXも入れました。

2022年後半以降のサイゼリヤの上昇が著しいです。

一方、ロイヤルHDは2019年10月からTOPIXをアンダーパフォームし続けています。

出典:日経スマートチャートプラス

今回は、外食産業を取り巻く環境と、記事で比較する3社について簡単にレビューしました。

次の記事では3社の業績のレビューと近未来予想をする予定です。

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おせちーず氏の3社比較、後編に続きます。

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