ウォーレン・バフェット氏、マイケル・バーリ氏は何を売買したか【Form 13F 2023年第1四半期】

 四半期に一度、米国内の機関投資家がポートフォリオを米国証券取引委員会(SEC)に報告する”Form13F”の時期になりました。

この記事では、世界が注目する大物投資家達の中から、ウォーレン・バフェット氏とマイケル・バーリ氏の2名に注目し、彼らが2023年1~3月の間に売買した全ての上場株式を明らかにしていきます。

※評価額については、3月31日時点の価格に基づいています。

参照:U.S SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION / 米国証券取引委員会

FORM13Fについて、もう少し詳しい解説はこちらの過去記事をどうぞ。

最新のForm 13F解説記事

当該記事は2023年5月時点でのForm 13Fの解説記事です。最新の2024年2月公開のForm 13F解説記事は下記をご覧ください。

Sponsor

仮想通貨トレーダーズクラブ COINRUN

COINRUNは暗号資産の古参トレーダーである、田中さん、ヨーロピアンさんの2名による、暗号資産のトレードによって「まとまった資産を築く」「継続的な収入を得る」「ビットコインを増やす」ことを目的に、様々な有益情報を共有するオンラインコミュニティです。

会員限定のトレード番組やチャットコミュニティ、月20回程度のレポート配信が利用・閲覧可能になります。

→サービスについてもっと詳しく知りたい方はこちらををご覧ください。

バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ、メインのアップルを買い増し、半導体のTSMCは全て売却

出所:”Search 13F Filings”からFORM 13Fデータを抽出して作成

同社シェア上位2銘柄を買い増し

 アップルは約2,000万株、バンク・オブ・アメリカは約2,200万株を追加購入、それぞれの保有株数は2%増加しました。

アップルは同期間に株価が大きく上昇したことで含み益が増加し、上場株式ポートフォリオ全体の約46%を占めるまでになりました。

バンク・オブ・アメリカについては、昨年からの金融引き締め・景気後退懸念、さらに昨今の金融不安により、金融セクター全体が低迷する中での強気の追加投資となりました。

出典:tradingview.com

HPなど継続保有の3銘柄に追加投資

 コンピューター製造販売のヒューレット・パッカード(HP)は約1,600万株、エネルギー事業のオキシデンタル・ペトロリアムは約1,700万株、保険事業のマーケルは約4,000株がそれぞれ追加で購入されました。

出典:tradingview.com

新たに投資した主な銘柄

 今回新規での投資となった、金融サービスのキャピタル・ワン・ファイナンシャルについては、購入株数は約990万株・推定9~10億ドル程度の投資規模となりました。

これは、当該第1四半期のみで購入された金額としては、オキシデンタル・ペトロリアムと同程度の比較的大きな規模の投資となります。

台湾有事や米地銀に対する懸念も

 

 同社は、2022年第3四半期(昨年7~9月)に台湾・半導体大手のTSMCへ新規投資を行っていたものの、わずか1四半期後に8割以上を売却、結局のところ今年1~3月のうちに、残りの保有分を全て売却していたことが判明しました。

5月に開かれた定例株主総会にて、バフェット氏より「TSMCは素晴らしく経営されている、世界に無くてはならない重要な企業であるが、地政学的なリスクを再評価した」旨の発言があり、政治的な緊張感の高まりを強く嫌気していることが明確に伺えます。

 米地銀大手のUSバンコープとバンク・オブ・ニューヨーク・メロンの2社についても、全ての保有分が売却されました。

これら両銘柄は、昨年から1年近くの期間を経て徐々に売却が進められ、今年3月末までに全てが処分された形となりました。

石油メジャーのシェブロン、自動車大手のゼネラル・モーターズを2割売却

 2022年2月からのロシア・ウクライナ戦争の影響や、アフターコロナによる経済活動の再開で、世界的に原油価格が高騰する中、同社は石油株のポジションを着々と拡大させてきました。

前四半期末の2022年12月末時点で、シェブロンは上場株式ポートフォリオ全体の約10%近くのシェアを占める規模にまで拡大しましたが、今回の売却で大きく膨らんだ利益の一部を確定させた形となり、シェアは6.65%にまで低下しました。

 ゼネラル・モーターズについては、約10年に渡って保有していた銘柄になりますが、2021年第1四半期より徐々に売却を進めています。

マイケル・バーリ氏のファンド、サイオン・アセット・マネジメントは保有銘柄の大部分を入れ替え、暴落する地銀株を購入

出所:”Search 13F Filings”からFORM 13Fデータを抽出して作成

新規で購入したのは地銀株やエネルギー株などを中心に、合計18銘柄

 今回特に目立ったのは、昨今の銀行不安の影響で軒並み大暴落した地方銀行への新規投資です。

経営破綻しJPモルガン・チェースが買収することとなったファースト・リパブリック・バンクの15万株をはじめ、ウェスタン・アライアンス・バンコープを12万株、パックウェスト・バンコープを25万株など、まさに落ちるナイフを掴みにいったことになります。

ポートフォリオ全体に占める地方銀行銘柄の割合は10%超となりました。

出典:tradingview.com

 購入された銘柄で、もう一つ目立ったセクターは石油・天然ガス採掘のエネルギー株です。

コーテラー・エナジー、ナショナル・オイルウェル・バーコ、デボン・エナジー、オビンティブの4社、これらエネルギー株がポートフォリオ全体に占める割合は約9%となりました。

バフェット氏も投資した共通の新規投資先に注目が集まる

 地方銀行の株式を売却したバフェット氏とは対照的なバーリ氏ですが、両者が共通して新規投資した銘柄があります。金融サービスのキャピタル・ワン・ファイナンシャルです。

株価は2021年8月に最高値の177ドルを付けた後、一貫して下落トレンドが続き、直近の5月で半値以下の85ドル台まで値を下げていました。

しかし、5月16日(火)に両2名のFORM13Fが開示されると、株価は短期間のうちに直近の安値から+15%以上高騰しました。

前四半期末に保有していた株式の大部分を売却処分済み

 全ての保有株を売却処分した銘柄は、ソフトウェア開発のブラックナイト、靴メーカーのウルヴァリン・ワールドワイド、統合型リゾート運営のMGMリゾーツ・インターナショナルなど、合計6社でした。

以前から資産バブルの崩壊を警告していたバーリ氏が、昨年の第2四半期に保有ポジションの全てを売却した際に、唯一新規で投資した銘柄、刑務所・メンタルヘルス施設事業のゲオ・グループについても、保有株数の大半(6割)を売却しています。

追加投資でポジションを拡大させた銘柄は2つだけ

 前四半期からの継続保有銘柄では、中国ECサイト大手のJDドットコムを新たに17万株、アリババを5万株購入し、それぞれ株数を大きく倍増させました。

出典:tradingview.com

まとめ

 バフェット氏とバーリ氏とでは投資スタイルは全く異なりますが、両者に共通して言えることもあると思います。

2023年第1四半期の相場では、インフレ率の鈍化傾向が続く中でFRBによる金融引き締めの終わりが意識され、昨年の株価下落トレンドからの転換が確かなものであることを探っていくような展開になりました。

そんな相場環境の中、株価自体は低迷しているものの、長期目線で見れば割安な価格になっている銘柄を見定め、一歩踏み込んで投資判断を行っている印象を受けました。

 このようにForm13Fからは、単に著名投資家のポートフォリオを知るだけでなく、彼らの頭の中にある投資のスタンスや将来の展望など、我々自身も考察し学ぶきっかけを得ることもでき、とても有意義だと思えます。

────────────────────

そのほか、過去のForm 13F解説記事はこちら

https://burry.co.jp/tag/form13f/

この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです。