2024年2月中旬頃より、世界中が注目する米国の著名投資家達の最新ポジションが明らかになってきました。
米国で運用資産額が1億ドルを超える機関投資家は、Form 13FというフォーマットをSEC(米国証券取引委員会)へ提出し、各四半期末時点で保有する米国上場銘柄のロングポジションとオプションを公に開示する必要があります。
この記事では、世界中から注目を集めるウォーレン・バフェット氏、マイケル・バーリ氏の2名について、Form 13Fをもとに彼らの2023年12月末時点の株式ポートフォリオ、第4四半期(10-12月)に売買された銘柄などを解説します。
※評価額については、2023年12月末時点の価格に基づいています。
参照:U.S SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION / 米国証券取引委員会
最新のForm 13F解説記事
当該記事は2024年2月時点でのForm 13Fの解説記事です。最新の2024年8~11月公開のForm 13F解説記事は下記をご覧ください。
- ドラッケンミラー氏「率直に言ってビットコインを持つべきである」【Form 13F 2024年第3四半期】
- マイケル・バーリ氏、アリババなど低迷する中国株の逆張り投資を強化【Form 13F 2024年第2四半期】
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バフェット氏:約3年ぶりにアップル株を一部売却、石油株への追加投資を継続

アップル株を約1,000万株売却
ウォーレン・バフェット氏の率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ社は、ポートフォリオのトップ銘柄であるアップル(AAPL)の保有株式を約1,000万株売却しました。
同社がアップル株の保有を減少させたのは、2021年の初頭に935万株を売却して以降、約3年ぶりとなります。
今回の売却でアップルの保有株数は約1%減少した一方、同期間中にアップルの株価は約12%上昇しており、依然としてバークシャー・ハサウェイ社の保有する米上場株式ポートフォリオの約50%を占めています。
石油株のシェブロン、オキシデンタル・ペトロリアムに追加投資
バークシャー・ハサウェイ社は、過去1年にわたってポートフォリオ上位銘柄のシェブロン(CVX)の保有株数を減少させてきましたが、今回は一転して約1,500万株を購入しています。
同じくエネルギー事業で同社が力を入れるオキシデンタル・ペトロリアム(OXY)についても、直近で約2,000万株近くを追加で購入しており、2023年末時点でバークシャー・ハサウェイ社が保有するオキシデンタル株全体のシェアは27.8%となりました。
参照:Berkshire Hathaway / 2023 Annual Report
HPとパラマウント・グローバルを大幅に売却、他4銘柄は全て処分へ
バークシャー・ハサウェイ社は、2022年第1四半期に、新規で米大手マスメディアのパラマウント・グローバル(PARA)の株式を取得して以来、その後1年間も追加で株数を増加させてきました。しかし、今回のタイミングでは、保有株数の約3割に当たる3,040万株が売却されました。
また、2023年2四半期に新規で取得した住宅建設会社のDRホートン(DHI)のほか、前四半期の段階で既に大半を売却していた保険会社のマーケル(MKL)とグローブ・ライフ(GL)、さらに金融・ソフトウェア会社のストーンコー(STNE)の4社を全て売却処分、ポジションを解消しました。
バフェット氏の保有銘柄として直近でトップ10に入っていたヒューレット・パッカード(HPQ)についても、保有株数を2四半期連連続で減少させており、シェア上位から姿を消しています。
ポートフォリオ上位9銘柄は不動、HPがトップ10から脱落

バークシャー・ハサウェイ社の保有する上位銘柄は、HP株のポジション縮小の影響により、金融機関大手のシティ・グループがトップ10入りしましたが、他の順位に変動はありませんでした。
過去を振り返ると、同社が保有する米国上場株式の銘柄数は、以前は45~50銘柄ほどであったのに対し、直近のForm 13Fが開示された段階では41銘柄へと減少しています。バフェット氏は直近で現金保有額を大きく積み上げており、今後の新規・追加投資先に注目が集まります。
マイケル・バーリ氏:売りポジションを解消、買いポジションは前四半期比で倍増

半導体セクターETFのプットオプションを解消
マイケル・バーリ氏のヘッジファンド、サイオン・アセット・マネジメントは、2023年第2四半期、S&P500などの主要な米国株指数の下落に賭け、約16億ドル相当もの巨額のプットオプションを保有していたことで話題になりました。(同年第3四半期末までにポジションは解消)
また、2023年第3四半期に取得していた、半導体セクターETF(SOXX)のプットオプション約4700万ドル相当についても、12月末までに保有を解消しています。
前四半期末時点で保有していた銘柄の大半を売却処分
サイオン・アセット・マネジメントが前四半期末(2023年9月末)の時点で保有していた株式は11銘柄で、そのうち4銘柄は全て売却処分、5銘柄でポジションを縮小しています。
全て売却処分されたのは、多国籍自動車メーカーのステランティス(STLA.MI)、海運会社のユーロナブ(EURN.MI)などを含む4社。保有株数を減らしたのは、メディア企業のネクスター・メディア・グループ(NXST)、海運会社のスター・バルク・キャリアーズ(SBLK)などの5社となっています。
売却される第3四半期末の時点では、これら9社でポートフォリオに占めるシェアは80%以上であったのに対し、第4四半期の売却後に残ったシェアは約17%へと低下しました。
アルファベット株など、全18銘柄に新規投資
バーリ氏は直近で保有していた銘柄の大半を売却した一方、アルファベット株など、新規で18銘柄の株式を取得し、大胆にポートフォリオを組み替えています。
新規で取得したのは、米大型テクノロジー企業のアルファベット(GOOG)やアマゾン(AMZN)、医療サービス企業のホスピタルコーポレーション・オブ・アメリカ(HCA)やCVSヘルス(CVS)、大手金融機関のシティ・グループ(C)など。
これら新規の18銘柄で、昨年末時点で同ファンドが保有する上場株式ポートフォリオの約7割のシェアを占めています。
アリババなど、中国テック大手に追加投資
近年、バーリ氏のポートフォリオ上位に度々登場する中国の大手テクノロジー企業、アリババ(BABA)とJDドットコム(JD)についても、追加投資が行われました。
バーリ氏のポートフォリオにアリババとJDドットコムが登場したのは、2022年第4四半期でしたが、2023年第2四半期には一旦全ての保有分が売却されており、その直後の第3四半期に再び買い戻された経緯があります。
近年の中国マーケットの低迷と共に、両銘柄の株価は2020年後半〜2021年前半を起点に下落トレンドであり、冴えないパフォーマンスが続いています。
昨年末時点でのバーリ氏のポートフォリオは、アリババとJDドットコムがツートップに並んでおり、この逆張り戦略の行方にも注目したいところです。
売り越し額は縮小するも慎重なバフェット氏、ガードを緩めたマイケル・バーリ氏
2023年のバフェット氏は、年初から9月末までの3四半期連続で大幅な売り越しが続きましたが、直近の第4四半期では売り越し額を減少させました。
昨年の好調な米国経済・株式市場にも支えられ、バークシャー・ハサウェイ社の資産は過去最大を更新しています。それに伴い、手元資金(現金同等物+米短期国際)についても過去最大となる1,600億ドルを保有しています。

同社の年次書簡「株主への手紙」によると、バフェット氏は「バークシャーは社会通念上で必要とされる額をはるかに超える、(多くの)現金と米国債を保有している」と言及すると共に、昨今の加熱する株式相場に対する懸念について、比喩を用いながら述べています。
【翻訳】
引用:Berkshire Hathaway / Shareholder Letters
「(今日の)株式市場では、私(バフェット氏)が若かった頃とは比べ物にならないほど、カジノのような振る舞いがみられる。カジノは今や多くの家庭に存在し、日々住人を誘惑している。」
一方のバーリ氏については、2023年の半ばには度々大量のプットオプションを保有してマーケットの下落に備えていましたが、年末の時点では解消させています。
バーリ氏の短期的に銘柄を入れ替えていく投資スタイルからも、直近は上昇相場を意識していることが伺えます。
昨年以降から現在の2月下旬の時点でも米国の株式相場は一貫して上昇トレンドにあり、昨今のAIブームによる過熱感もみられてきました。引き続き、今後の経済指標や地政学リスクによるボラティリティには注意する必要がありそうです。
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そのほか、過去のForm 13F解説記事はこちら
https://burry.co.jp/tag/form13f/
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