不動産投資家の大友(仮名)氏に、FIREをしない理由などについて伺いました。
大友氏(仮名) プロフィール
不動産投資家歴、15年。50歳。不動産会社に勤務しつつ、広島市内でアパート三棟、戸建て三棟の合計18戸を所有。
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取材実施日
2024年3月8日
一番の苦労は空室を埋めるための苦労
ーー購入や購入後に苦労した物件があれば教えてください。
二つ目に購入した八世帯のアパートですが、購入後、四世帯も空室が出てしまい、家賃を下げたり、募集条件を変えたりと苦労しました。
ただ、苦労した分、大家業にとっては良い経験になっていて、大家としてのスキルも上がりましたし、自信もつきました。
ーー二つ目の物件以降はトラブルはありませんでしたか。
トイレの水が出ないなど、そうした小さなトラブルは年に数回ありましたが、本当に困ったことはないですね。
空室を埋めることで、困ったことも特にありません。
共有部分の清掃やペット可への条件変更により空室率を減らす
ーー二つ目の物件では空室を埋めるために募集条件を変えるなど工夫されたとのことですが、空室が出ないように、もしくは空室が出てもすぐに埋められるようにするにはなにが大事なのでしょうか。
廊下など共用部分を綺麗に、清潔に保つことです。また、ぺット可への変更も効果がありました。
広島に限った話ではありませんが、感覚値で、大家の九割は物件を汚されたくないためにペットを禁止にしています。
私としては、自分の物件が汚される以前に、空室で家賃が入ってこない方が問題です。
ペット可で修繕費が多少発生したとしても、その分空室を早く埋めることができれば全体でのコストは軽減されるのでそうした方がいいと思います。
また、私の物件では、外国人や60代、70代の高齢者も積極的に受け入れています。
今後は外国人も高齢者もどんどん増えていきますから、多少のトラブルには目をつむり、必要があれば家賃も多少リーズナブルに下げることは必要です。
結果、これらの条件を変更しただけで、他に何もお金をかけなくても私の物件は空室が埋まりやすくなりましたね。
「部屋をリフォームして、そのリフォーム代を賄うために家賃を上げて募集しましょう」という考えがありますが、そのリフォーム代を回収するために何年かかるのでしょうか。
リフォームして家賃を上げたところで、またボロボロになりますし、賃貸ですから一生住むわけでもありません。
無理にお金をかけて、最先端の設備を導入するなど、背伸びすることはないと思います。
ーー「共用部分を綺麗に保つ」は初めて聞きました。共用部分というのは階段や廊下も含まれるのでしょうか。
はい、特に女性の入居者などは汚れていると嫌がります。
入居するかどうかは第一印象で決まりますし、割れ窓理論のように、共有部分が乱れていると問題も発生しやすくなるんです。
落書きやゴミを見つけたらすぐに清掃しますし、毎月一回は簡単な清掃もしていますね。
物件の異変に早く気づくために自ら月次で共有部分を清掃
ーーご自身で清掃されているのでしょうか。
実際に自分で現地に行って共用部分を見て、異常があったらすぐに感知したいのであえて自分で清掃しています。
数千円で清掃してくれるサービスもありますが、それだと単に掃除だけで終わってしまうので。
月に一回で三棟を一気に回るので時間はそれほどかかりませんし、毎月欠かさず行けばそれほどやることはありません。
ーーペット禁止の物件は確かに多いと感じますが、やはり大家さんの多くがペット不可とすることが多いのですね。
大家の多くは考え方が古く、特に高齢の大家はベットを禁止している方が多いですが、最近はペットを飼っている人も多く、今後も増えていくと見ています。
また、確かに入居者がペットを飼うと退去の際に壁紙を張り替えるなどコストがかかりますが、ペットがいてもいなくても退去すれば一定の清掃が必要です。
それに、最近はペットのひっかき防止など対策グッズも豊富です。
やってみるとわかりますが、空室期間というのは大家にとってはとてもストレスなんです。長期間、空室のままでは部屋も痛みますし、空室の分だけ利回りも減少します。
いつまでも古い考えにとらわれず、時代に合わせて条件を変えていくことも必要だと思います。
人口減少は続くが単身用の賃料の安いアパートは一定の需要があるはず
ーー日本の人口は減少傾向にあります。また、地方より都市へ人口が集中しており、地方は供給過多になるという見立てもあると思いますが、どのように見ていますか。
確かに地方は今後も人口が減少していくでしょう。
私が所有している物件は築年数が古いということもあり家賃は比較的安くしていますが、最近は物価が上がり生活が苦しくなってきている人も多く、今後も賃料が安い物件の需要は一定数あると考えています。
また、単身者も増加傾向にあり、お一人さまが安く暮らせるアパートはこれからも求められると思いますね。
実際問題、人口減少で困るのは大家だけではなく、他の業界でも同じです。私だけの問題ではありません。
今社会に求められていることに目を向け、今後は事務所の使用を許可したり、移民を受け入れたりするなど、人口減少なら人口減少なりの対策を検討しています。
ーー最近では、不動産価格の高騰が話題になっていますが、地方でも価格は上昇しているのでしょうか。
地方でも不動産の物件価格は上昇していますね。
実際、私が不動産会社の営業マンとして扱っている新築の一戸建ては昨年より一割以上価格が上昇しています。
いつまで上昇し続けるかはわかりませんが、当分はこの上昇傾向は続くと見ています。
しかし、インフレは物件価格だけではなく、食料品などあらゆる商品が値上がりしており、これについてはもう流れに身を任すしかないと思いますね。
物件が値上がりしているから買わないと言っても、来年値下がりする保証もないので。
2,000円賃料を高くしたところで空室が長引くのであれば気持ち的に嫌
ーー物価の上昇に合わせて家賃は値上げしないのでしょうか。
私の物件の賃料は一切上げていなくて、むしろ下げていますね。
私が知る限り、賃貸の業界では、物価が上昇したから賃料も上げるという文化がほとんどありません。
空室が長引いてしまったときや築年数が古くなったときに賃料を下げることがありますが、逆はあまりありません。
次の入居者に対して、既存の入居者の賃料より少し高く設定するという程度でしょう。
1,000円か2,000円高くしたところで空室が長引くのであれば気持ち的にも嫌ですし、逆に損だと個人的には思いますね。
暗号資産に悪い印象はなく長期ではより活用されると予想
ーーこのメディアの読者は暗号資産の投資家が多いのですが、大友さんは暗号資産についてどのようなイメージを持っていますか。
2017年のある期間、普通預金に入れるぐらいならという軽い気持ちで、ビットコインの積み立てを行っていました。当時の価格で合計約20万円を投資し、それから手をつけていません。
詐欺みたいな印象は全くなく、長期ではより普及、活用されると見ていて、不確実性の高い時期にリスクを背負って飛び込んだ人はそれ相応のチャンスを掴むのではと思いますね。
私自身はたまたま不動産会社に勤めて不動産投資を行っていますが、時代が違えば、もっと積極的に暗号資産に投資していたかもしれません。
ーー株式投資もされているのでしょうか。
楽天証券でつみたてNISAを行っていて、楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンドを子どもの学資保険代わりに5年前から毎月積み立てている程度ですね。
FIREできるようになったが仕事は辞めず、規則正しく人と関わる生活を送り認知症を避けたい
ーー大友さんは毎月の不動産収入が手残りで40万円とのことですが、FIREは検討されていないのでしょうか。
今働いている不動産会社がかなりホワイトで、勤務も一定程度、自分の時間を確保しやすく、特に辞めたい理由もないのでFIREは選択肢には入っている程度ですね。
もともと、不動産投資を始めたのはFIREが目標でした。
とにかく一日でも早くFIREしたくて、生活を切り詰めてお金を貯めていましたが、結婚して以降は、一人でどれだけ頑張ってもお金が貯まらず、FIREを諦めかけていた時期もありました。
2023年に17年ぶりに追加の物件を購入でき、FIREに近づいたとも思ったのですが、私の父が亡くなる前の五年間、認知症でずっと見続けてきたのですが、その体験で考えが変わりました。
父は自身が経営していた会社が倒産した後、40代から一度も働くことなく、一日中家に籠りテレビばかり見ていたんですね。
刺激のない自由気ままな生活を長年送ったことで、おそらく認知症を患ったのだと思います。
父の晩年の姿を見るまでは、FIREして、昼に起きてテレビや映画を見て、ゲームをして、お酒を飲んで、旅行に行きたいと思っていましたが、今考えるとそのような生活はボケまっしぐらです。
今は、FIREしようと思えばできる程度の不動産収入を得られるようになりましたが、できる限り仕事を続けて、規則正しい生活を送り、人と関わりたいと考えています。
仮に今勤めている会社を辞めることがあっても、Amazonの配達でもなんでもいいので、何か仕事は続けたいですね。
不動産投資は金融機関からの融資を活用できる唯一の投資
ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
不動産投資の一番の魅力でもあり、他の投資と違う点は銀行に融資を借りて投資できることです。
よく、「レバレッジを効かせる」と言いますが、それを最大限活用することも良いかと思います。
私も不動産投資をしながら、暗号資産やFXなどリスクヘッジのために色々な投資にチャレンジしてきました。
収入源はたくさんある方が良いですし、それは間違いありません。
私が今でも会社員を続けているのは、不動産投資をする際、自営よりも会社員の方が融資が受けやすいという理由もあります。
私は自己資金から始めましたが、もしこれから不動産投資を始めたい方は融資を最大限利用してみるのも面白いかと思います。
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大友氏の全3回のインタビュー、前のインタビューはこちら
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