不動産投資家の大友氏(仮名)に、保有している物件や良い物件に投資するための考え方などについて伺いました。
大友氏(仮名) プロフィール
不動産投資家歴、15年。50歳。不動産会社に勤務しつつ、広島市内でアパート三棟、戸建て三棟の合計18戸を所有。
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取材実施日
2024年3月8日
一戸建てを3棟、アパートを3棟保有し全体の表面利回りは24%
ーー大友さんが保有されている物件について教えてください。
一戸建てを3棟、8世帯のアパートを1棟、4世帯のアパートを1棟、3世帯のアパートを1棟、合計18世帯の物件を所有しています。
全て、広島市内の物件で、アパートは全て軽量鉄骨造です。
ローンの支払いや管理費、ランニングコスト等の諸経費を抜いた、全物件の収益は手残りで毎月40万円程になります。
ーーご経歴や最初に購入した物件について教えてください。
新卒から父が経営する建設会社に勤めていましたが、25歳のときに倒産してしまい、運送会社に転職しました。
その際、この先ずっと肉体労働が続けられるか不安を感じ、その時たまたまロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』を読んだこともあり、賃貸業に興味を持ちました。
そこで、不動産投資やお金について勉強を始め、宅建の資格を取得し、29歳で不動産賃貸の会社に転職。
かなり忙しい職場でしたが当時は不動産業で独立することを目標に懸命に働き、まだ独身で住まいも実家だったため、貯金も積極的に行いました。
その後、当時勤めていた会社の上司から物件を紹介してもらい、当時で築年数が15年、物件価格が300万円で利回り24%の一戸建てを購入しました。
これが最初の物件で、私が35歳、2010年頃のことです。
ーー利回り24%は表面利回りでしょうか。
表面利回りですが、ほぼ実質利回りでもあります。
「ほぼ」というのは、集合住宅では共用部分の清掃代やエレベーターの管理費などランニングコストが発生しますが、一戸建ての場合はそれらがほとんど発生しません。
なので、表面利回りでありつつ、ほぼ実質利回りでもあります。
一戸建ては家族で住むケースが大半のため一度入居すると長く住んでもらえる
ーー一戸建ては修繕費などランニングコストが物件のオーナーは基本的に発生しないとのことですが、では損壊などが発生した場合は誰が負担するのでしょうか。
二種類あります。
まず一つ目は例えば天災で壊れた場合ですが、これは大家が加入している保険で負担するのが一般的です。
二つ目ですが、例えば入居者の落ち度でドアを壊した場合、入居者が加入している保険代から修繕します。
経年劣化で壊れた場合は保険金が出ないため大家の自腹ですが、実際には私の場合はあまり発生しませんでしたね。
ーー経年劣化は物件オーナーの負担ではあるものの、実際には発生頻度が低いため、表面利回りがイコールで実質利回りになるということですね。
私が最初に購入した300万円の一戸建ても2010年の購入なのでもう15年目になりますが、修繕が発生したのは2、3回です。
15年間、入居者が変わらず家の痛みが少ないことも関係していると思いますが、築年数30年の戸建であっても、修繕コストはほとんど発生しないのが一般的ですね。
また、一戸建ては例えば庭に雑草が生えた場合、雑草を気にするのであれば入居者が草むしりをしますが、大家が行うことはありません。
一方、ワンルームや単身向けのマンションでは、大家が共用部の清掃の手配をしたり、草むしりを行うなど一戸建てと比較して負担が大きいです。
また、一戸建ては家族で住むケースが大半のため一度入居すると長く住んでいただけることが多いですが、ワンルームなど単身用のマンションは簡単に入居が決まる分、退去も早く、その度に清掃代やリフォーム代などが発生します。
そのため、不動産投資関連の本や投資家の間では比較的安い一戸建ての物件から購入するのが良いとされています。
保有物件の前面道路の所有権を巡って近隣住民が市を相手に訴訟を起こしていた
ーー15年前で地方とはいえ、表面利回り24%の戸建てが300万円という価格は非常に安いと感じます。
安かったですね。広島県内でも物件価格が安いエリアでしたが、それでも掘り出し物だったと思います。
金額が安かった分、元は取れていますが、それでも想定外の問題が二つありました。
一つ目は家賃滞納の問題、二つ目が近隣と市との訴訟トラブルです。
家賃滞納はこの物件に限った話ではありませんが、現時点で約5ヶ月分の滞納が発生しています。
ただ、すでに15年間入居していただいていること、滞納について事前連絡があったことを踏まえて大目に見てはいます。
滞納を考慮して強制退去というのもできなくはないですが、敷金を頂いているとはいえ、退去では修繕が発生しますし、新たな入居者の募集も必要です。
これらの負担を考えると遅れてでも支払っていただけるならうるさく言う必要もないかなと。
ーー二つ目の問題について教えてください。
二つ目はレアケースですが、物件の前面道路の所有権を巡って、近隣住民が市を相手に訴訟を起こしていたことです。
その事実を物件の購入後に知り、地域で負担する裁判費用を出しており、毎月1,000円程度ですが総額で10万円ほど負担しました。
賃貸業にいたことでどんな物件ならすぐに入居者が決まるか、どれくらいの賃料で早く入居が決まるか目利きできるようになった
ーー不動産投資を行うために不動産会社に転職されたとのことですが、何年ほど勤務されているのでしょうか。
不動産業界自体は勤めて21年ですが、勤務先は何度か変わっています。
29歳に不動産賃貸の会社に転職したのが最初で、売買も経験したいと思い二社目は売買の会社に転職しました。
不動産はブラックな会社が多く、一つの会社に長く勤めるのは私も含めてあまりありませんね。規模にもよりますが、毎月、1人か2人は辞めていくことが多いです。
現在は新築の一戸建てを専門に扱う会社に勤めていて、売買の会社では二社目ですね。
ーー不動産の会社で働いたことで、実際に不動産投資に役立ったことがあれば教えてください。
賃貸業にいたことで、どんな物件ならすぐに入居者が決まるか、どれくらいの賃料であれば早く入居が決まるか、目利きできるようになったというのはあります。
身近に大家さんを見ていたことも大きかったですね。
不動産投資は初期費用が最低でも数百万円は必要で、投資の中ではハードルが高い部類ですが、業界にいたことで心理的なハードルは下がったと感じています。
「健美家」は大家の実体験が多数掲載されていて、読むだけでも勉強になる
ーー不動産投資についておすすめの勉強法があれば教えてください。
今では不動産投資に関する情報がネットで多数出ていて、融資の受け方など具体的な方法は調べればいくらでも出てきます。
具体的には、「健美家」は大家の実体験が多数掲載されていて、読むだけでも勉強になると思います。
情報商材は数万円のものを勉強し始めのころに購入しましたが、「購入した分、元を取りたい」という気持ちで投資を始める動機づけにはなりましたが、特に商材の中身は参考にはなりませんでした。
セミナーも同様で、セミナーに参加したから良い物件に巡り会えた、ということはないですね。
不動産投資に関する本は、藤山勇司氏、加藤ひろゆき氏の著作が一番わかりやすく、「自分にもできるのではないか」と勇気を与えられ、内容も面白かったのでおすすめです。
加藤氏は、先ほどの「建美家」でコラムも書いています。
ーーネットで物件を探すことについてはいかがでしょうか。
私も「楽待」に登録しているので物件の紹介メールが届きますが購入したことはありません。
私は合計六つの物件を保有していますが、最初に物件を購入した当時の上司からすべて購入していますね。
良い物件に投資するためには不動産の営業マンと仲良くなるのが一番
ーー良い物件はどのようにして見つけたらよいのでしょうか。ネットに出ている物件は良質でない物件しか出ていないと聞きます。
ネットでせっかく良い物件を見つけて買い付けようとしたら既に2番手だったという話はよくありますし、もし良い物件があったら現地に見に行く前に買い付けを入れるぐらいのスピード感と度胸がなければ良い物件は買えないでしょう。
そのため、やはり不動産の営業マンと仲良くなって良い物件を紹介してもらうことが一番だとは思います。
ーーサイトで物件を探すよりも営業マンに紹介してもらう方がいいのですね。
いくら不動産投資について勉強し知識を得ても、駄目な物件を買ってしまっては意味がありません。
逆の言い方をすると、多少、不動産投資に関する知識が欠けていたとしても、営業マンに良い物件を紹介してもらえればその投資は十分に成功し得ます。
無駄とは言いませんが、長時間勉強して、大量の物件に目を通せば成功するかというとそういうものではないのです。
よく広告などで投資をするなら勉強が必要と謳われていて、間違いではないのですが、実際、いくら素人が勉強して物件を探したところで情報の川上にいる業者には敵いません。
情報をいち早くキャッチした業者が誰に売るかというと、仲の良い家主か前回買ってくれた家主にまず話を持っていきますからね。
もし仲の良い営業マンが見つからない場合、遠回りの手段かもしれませんが、不動産業界に自ら就職し、自分自身で情報をキャッチして購入するのもありでしょう。
不動産投資に必要な知識はそれほど多くはありませんので、2、3年、早い人であれば1年も勤めれば十分でしょう。
ただ、現実問題、転職してまで不動産投資について勉強しようという人は稀だと思うので、やはり信頼できる営業マンを探すというのが効率的だと思います。
買う気を見せなければ営業マンに相手にされなくなる
ーー良い物件に巡り会うためには不動産の営業マンと仲良くなるのが大事とのことですが、では仲良くなるためのコツはありますか。
営業マンとしては、「ある程度の貯蓄があり、銀行で融資を受けられ、フットワークも軽く、かつ実際に買う気もある」という人以外は相手にしたくありません。
なので、物件を紹介してもらったら必ずその物件を見に行き、仮にその物件を買わない結論に至ったとしても、「今回はこういう理由だから買えません」と理由をきちんと説明し、買う気を見せることですね。
そういった姿勢が伝われば、例え今回紹介された物件を買えなくとも次も物件を紹介してくれるはずです。
また、物件を紹介してもらう際に、その物件の駄目なところばかり見るのも良くありません。築浅で綺麗で安くて空室率の低い物件など、滅多にあるものではないんです。
何か問題があるから売りに出されているわけで、マイナスな点ばかりを指摘して買わない人はいずれ営業マンから相手されなくなります。
ーー大友さんはなぜ最初に物件を購入した、以前の会社の上司の方からしか購入しないのでしょうか。
私とその以前の元上司では、私としては「紹介されたら必ず買うから変な物件を紹介するな」となりますし、元上司からすれば私は「紹介したら必ず買ってくれるので変な物件は紹介せず長く付き合おう」とお互いにいい関係を構築できているからですね。
そういったお互いにお互いを裏切れない、win-winの関係性を作れるようになるのが理想だと思います。
ーー大友さんは不動産業界に長く勤めているので不動産に関する知識も豊富だと思いますが、一般的には例え勉強をしていても良い物件と悪い物件を見抜くことは難しいと思います。営業マンがあまり良くない物件を良い物件として勧めてきた場合、それを見抜く方法はありますか。
「この物件のデメリットはどこですか」と、はっきりと聞くことですね。
営業マンも仕事なので物件の良い部分を強調するでしょうが、正直に駄目なところを聞けば聞かれた以上は嘘は言えません。普通だったら真っ当に答えてくれるはずです。
それで大家業で一番困ることは何かと言うと、修繕費以前に、空室期間が長引くことです。
修繕費がかかっても入居が埋まればお金が入ってくるのでいずれ回収できますが、空室のままでは元も子もありません。
私であれば、営業マンに「この物件は前回空室が出てから、次の入居者が決まるまでどれぐらいかかりましたか」と率直に聞きますね。
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全3回の大友氏のインタビュー、2記事目に続きます
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