FIRE済みの投資家であるSGee氏に、投資家としての最大の失敗などについて伺いました。
SGee氏 プロフィール
名前の読み方は「えすじー」。 FIRE済みの元サラリーマン投資家。米国個別株、各種インデックス中心に運用。太陽光やクリプトも少し。海外でグローバル企業勤務→日本。40代。お金の話も絡めつつ放言系。
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取材実施日
2024年5月17日
その後上場する友人の起業初期に投資できなかったのが投資家としての最大の失敗
ーー印象的な取引について教えてください。
ドルコスト平均法で積み立てて、コツコツと利益を積み上げていく取引がほとんどなので大勝ちというのはあまりありませんね。
強いて言えば、インデックスの積み立てをずっとやっていることが一番大きな成功でしょうか。
失敗については、友人が起業して出資を求められたものの、断り、その後、その企業が上場したというのがあります。
起業の本当に最初のタイミングだったので、仮に当時の時価総額を1億円、上場後の時価総額を100億円だと仮定すると、出資の相談は1,000万円だったので、税引き前で10億円にはなった計算です。
もし求められた通りに出資していれば、今とは桁が異なる投資家になれていましたね。
ーーなぜ当時、出資しなかったのでしょうか。
ビジネスプランを見せてもらったのですが、そのプランがあまりイケていなくて、うまくいかないと思ってしまったんです。
読者の皆さんもぜひ覚えておいていただきたいんですが、最初の事業プランは大体イケてなくて、こける事が多いらしいんですね。
現在、大きくなっている会社の多くも最初のプランはうまくいかず、ピボットしてプランBで成功していることが多いんです。
Twitterだって最初から今のTwitterを開発したわけではなく、最初はポッドキャスティングの事業から始めたそうです。
参考:渦中のツイッターはこうして作られた。創業者らも予想外、「くだらない」の壁超えた瞬間 連載:企業立志伝|ビジネス+IT
要するに、最初のビジネスプランではなく起業家に投資するという考えで投資しなければならないのですが、当時の私は起業家ではなくプランを見てしまって、それで見送ってしまったんです。
「人に投資する」という観点がなくプランだけを見て出資を断ってしまった
ーーその起業家の方はどのような方だったのでしょうか。
元同僚で、働きぶり、プライベート、生い立ち、価値観もよく知っている親友です。
タフで絶対ピンチになっても何とか生き残るだろう人間で、よくよく考えれば失敗するわけがなく、出資しない理由はありません。
しかし私が日和ってしまったばかりに、投資家としての次元を変えることができませんでした。
それが投資家人生最大の失敗で、逆にこのチャンスさえ掴んでいれば、米国株への投資、ドルコスト平均法での積み立てでの成功というのは誤差の世界で、本当に今でも悔やまれる失敗です。
「人に投資する」という観点がなくて、プランだけを見てしまいました。
ーー「人に投資する」というのはよくVCやエンジェル投資家の方も同じことをおっしゃいますね。
はい、私も後付けでよく聞くんですが、そのときはそういった考え方を全く知らなかったんですね。
ーー出資の相談をいただいたのは1,000万円だったとのことですが、当時は大きい金額だったのではないでしょうか。
おっしゃるとおり決して小さい金額ではないのですが、その後も単一の個別銘柄に1,000万円レベルで投資し、損もしているので、投資できる額ではあったんですよね。
ーーその方に限らず、周りで起業されている方は多いのでしょうか。
多いですね。IPOしている人も何人かいます。
ピンチが嫌いなので自分は起業家には向いていない
ーー「資産を築くためには起業か投資か」というテーマが人気なのですが、SGeeさんはどのようにお考えですか。
周囲に起業家が多く接点がありますが、彼らが口を揃えて主張するのは「起業しても失うものがない」ということです。
財産を全て投下して起業するのではなく、VCやエンジェル投資家など外部の投資家から投資を受けて起業するわけで、失敗しても一家離散するといった悲惨な状況にはならないし、失うものがない、とみんな口を揃えて言います。
一方で、やはりハードシングスはあるみたいなんですよね。
起業するとほぼ必ずピンチに陥ることがあり、皆んな、それを切り抜けています。
僕は何が嫌いかというと、ピンチが嫌いなんです。
派手な暮らし、いい車に乗りたいといったそういった欲求は高くないのですが、お金は不幸を避けるためのもの、ピンチを避けるためのもの、という感覚が強いんです。
例えば、いま私が難病に罹って、内臓の移植に数億円が必要となっても何とかなりますし、例えば1兆円持っていれば自分の国が戦争になってもスイスの避暑地にでも避難することも可能でしょう。
病気で働けなくなったりといった、そういったピンチを避けたいという性向が強く、避けるためのツールがお金という考え方で、私はまったく起業家向きではないと思うんですね。
ピンチで燃える人は確かにいて、そういった人たちは理屈上は本当に失うものはないので、特に若い方は起業したらいいと思います。
ただ、私のようにピンチが嫌いな人はコツコツ時間をかけて、投資で増やすしかないかなと思いますね。
起業は怖いイメージもあるが大成功しなくてもなんとかなる
ーー周囲に起業家が多いとのことですが、起業して失敗されている方もいますか。
それがいないんですよね。
起業して上場したというのは一握りですが、それ以外の起業家はどうかというと、みんな何とかなっています。
普通の暮らしができているし、路頭に迷ったりもしていません。
起業しても何とかなる、よほどのことでもない限りは大失敗はないんだろう、ということですね。あくまで私の周囲を観察した結論ではありますが。
ーー「普通の暮らしができている」とは、起業した会社が存続しているということでしょうか。それとも「会社が解散しても別の仕事で生活できている」ということでしょうか。
会社自体が解散してなくなった、という人があまりいないですし、解散している人でもまた会社員として就職したり、普通に生活している人が多いですね。
起業というと怖いイメージもありますが、大成功しなかったとしても全然大丈夫じゃんという感覚はありますね。
僕はピンチが嫌いなのでやらないですが。
ーー皆さん何歳ごろに起業されていますか。
30代前半に集中していますね。
私のエピソードは30代の前半か中盤ごろの話です。
読者の方も、タフな人、信用できる人から出資の相談をされたら前向きに検討してもいいと思います。
仕事を好きになって仕事で稼ぐことができるようになれば逆説的だがFIREに近づく
ーーFIREを目指す上で、注意点、気をつけた方がいいことがあれば教えてください。
投資は種銭勝負なので、種銭をいかに積み上げるかが肝です。
FIREしたいということは仕事を辞めたいのでしょうが、逆説的ですが、仕事を好きになって、仕事で稼ぐことができればそれはFIREへの近道になります。
元手数十万円を数億円に増やせるような凄腕トレーダーなら別ですが、私のような庶民に生まれた方は特に、入金力を上げて種銭を増やすという考え方は一考に値すると思います。
入金力が上げられる程度に仕事で成果が上げられれば、リタイアしてもやりきった感覚を持って生きていけるので、精神衛生上も良いです。
「私を含む一般人にとっては、蓄財に関しては本業があくまでメインエンジンであり、投資はブースター、ターボでしかない」が私の根本的な考え方で、FIREを目指されている方はぜひ、逆説的に本業も頑張ってみてください。
ーー外資系企業に転職するためのコツや働く上でのアドバイスはありますか。
英語はビジネスレベルで使えた方がいいです。
即戦力を採用する傾向が強いので、自分の専門性や売り、「私はこの領域やスキルのプロです」と言えるものがあると良いと思います。
業務として採用も担当していましたが、採用側は日系、外資出身というのは気にしていません。
何ができるのか、欲しいスキルを持っているかを見るだけなので、価値の高い人材であれば外資系企業への転職は難しくないと思います。
株式やビットコインそのものが好きなのか、単に経済的に豊かになりたいだけなのか
ーー最後に、読者にメッセージをお願いします。
バーリ・マーケット・リサーチの読者は私より投資に長けた人が多いと思うので偉そうなことは言えませんが、例えば、江戸時代だと生まれた瞬間に身分が決まっているじゃないですか。農民は武士になれないですよね。
現代ではそのような身分の固定はありませんし、スマホがあれば世界中のどんな資産にもアクセスが可能です。
お金が民主化された史上初の時代と私は考えていて、そういった面白い時代に生まれた同士、楽しくやっていきましょう。あえて言うのであればそんなところです。
私は40代でFIREできる程度の資産を築くことができましたが、投資に関してのスキルや知識については基本的なものしかありません。
株式を買う時も高度な分析は全くやっていなくて、決算を見て、EPS、PERなど株式投資の入門書に書いてあるようなことだけをチェックしています。
株式やビットコインそのものが好きなのか、単に経済的に豊かになりたいだけなのか、意識するといいかもしれません。
ーーSGeeさんは株式は好きですか。
私は別に株式自体には興味がないんですよね。
もし仮に生まれたときから1兆円持っていれば、株式投資に時間を使っていないと思います。
経済的、時間的に自由になるために必要だから最低限必要な事に絞ってやっているだけで、株式は好きでも嫌いでもありません。
何のために投資しているのか、趣味なのか、自由になりたいだけなのか、と目的をクリアにすると無駄を減らせると思います。
本業を頑張って入金力を上げた方がFIREするためには近道だったということもあり得る
ーー株式など投資に関する勉強、分析を増やすことが必ずしも目的のための近道になるとは限らないということですね。
Xを見ていても、皆、すごい分析していて、詳しいんですよね。
ただ、すごい時間を使って分析してXに投稿している割に、他の投稿を見てみるとあまりお金は持っていなさそうな方も散見されます。
株式投資の博士になりたいのか、単に経済的に豊かになりたいだけなのか、わからない人をよく見かけます。
なんのためにやっているのか、そのための方法論として本当にいまやっていることが近道なのか、そういったことを意識してみるのをお勧めします。
株式について調べている時間を使って本業を頑張って入金力を上げた方がFIREするためには近道だった、ということもあり得ると思います。
さらに言えば、お金がなくても幸せな人は、お金を求める必要はありません。
僕はピンチが嫌いなので、ピンチを回避するためにお金をたくさん保有することを目指しましたが、ピンチも苦手じゃなくて働くのも楽しいという人はお金にとらわれることもありません。
本当に自分が必要としているものはなにか、そこに辿り着く近道はなんなのか考えてみてもよいでしょう。
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