個人投資家でブロガーの九条氏に、セミリタイアを目指した背景や債券投資について伺いました。
九条氏 プロフィール
2018年FIRE済み。米国株、クリプト、優待クロス、太陽光、不動産、オプションなどなどを行うインデックス投資家でリバタリアン 。ポイ活、クレカ活用なども。ブログ「FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記」
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取材実施日
2023年4月7日
「自分は給料のためだけにこの仕事をしているのでは?」と疑問を持つ
ーーご経歴を教えてください。
IT関連の企業で会社員を続けている40代の男性です。東京都内に住んでおり、家族は4人です。
仕事自体は比較的順調で給料も上がっていくものの、管理職としての業務が増え、よく考えると仕事が面白くないと感じる機会が増えました。
自分が本当にやりたいことができているのか、給料のためだけに働いているのではないかと疑問が湧いてきたんですね。
それでセミリタイアを目指すことを決意しました。
ーー具体的にセミリタイアを目指し始めたのはいつ頃でしょうか。
2018年、コロナが流行る少し前の時期でした。
その春に、辞めるまでいかないものの、他のことをやらせてほしいと会社に相談し、同年秋ごろからセミリタイアに移行しました。
完全な退職ではなく、もしやりたいことが実現できない状況になれば辞める、というスタンスでいまは働いています。
ーー働く時間は減ったのでしょうか。
絶対的な稼働時間は増加しています。
元々、仕事をすること自体が嫌いではなく、やりたくない仕事をやること、時間に自由がないことが嫌なだけなんです。
比較的自由度が高い仕事でもあるので、やりたいときにはどんどん取り組み、やれないときは時間を短縮して柔軟に働くようになった、ということです。
ハイ・イールド債の投資信託から投資をスタート
ーー投資を最初に始めたのはいつからでしょうか。
1998年頃です。
最初は貯蓄から始めたのですが、当時は浪費家で全くお金が貯まりませんでした。
そんな状況で、ある時、貯金をしなければならないと感じ、2年かけて100万円を貯めました。
それをきっかけに投資を始め、最初に投資したのは投資信託でした。
ーーなぜその投資からはじめたのでしょうか。
シティバンク(現・SMBC信託銀行)に行って、おすすめの投資を銀行員に尋ね、勧められたのがハイ・イールド債の投資信託でそれをそのまま買いました。
今では考えられないような行動でしたが、当時は他に方法が分からなかったのです。
この投資信託ははじめて購入した記念として、いまでも保有しています。
その後、日本の大型株の売買を行い、「割安だから買い」「利益が出たから売る」という取引をしていました。
この頃は大きな利益も損失もありませんでしたね。
疑似的な全世界インデックスやGAFAへ投資
ーー九条さんはインデックス投資に取り組まれていますが、最初に取り組まれたのはいつからでしょうか。
2008年にリーマンショックや金融危機が発生しましたが、その頃からインデックス投資などの理論的な側面に傾倒していきました。
当時はまだ、現在のオール・カントリーや全世界株式インデックスのようなものは存在せず、バンガードのETFも日本で取り扱われてなかった時期です。
それで、S&P500連動のIVV、北米を除く先進国インデックスのEFA、新興国インデックスのEEMなどをそれぞれ個別に購入し、疑似的な全世界インデックスを作成して投資を始めました。
これらの投資は今でも保有し続けており、むしろ買い増し続けています。
ーー投資信託以外の投資についてはいかがでしょうか。
当時、投資信託への投資をはじめた同じタイミングで、GAFAへの投資も開始しました。
GoogleとAmazonを買った後、Facebookが2012年に上場した際にも上場直後に購入しましたね。これらの株は一部売却していますが、残りはまだ保有しています。
2018年にFIREを目指し始めるまで、ひたすらこれらの株を購入しほとんど売却しなかったので、リーマンショック直後で市況もよく、資産は順調に増えましたね。
そして、2018年にFIREを目指すことを決め、資産の分散を意識したマルチアセットへの投資を開始し、株だけでなくさまざまな金融商品へ資金を投下するようになりました。
FIREを目指し、債券や金の現物、太陽光発電所など投資先を分散
ーー具体的にはどのように分散していったのでしょうか。
まずは債券の購入です。いろいろな形で債券を購入しており、生の債券ではなくETF系の債券を選択しました。
そのほかにもクリプトに加え、デリバティブやオプションなども取り扱い始めました。
2020年頃には、金の現物や太陽光発電所への投資も開始し、2021年には不動産投資もはじめました。
ーー最近は利上げにより債券価格が下落していますが、影響を受けましたか。
債券はコロナショック直後の2020年の4月ごろの大幅に上昇したタイミングで全て手放し、2022年の秋ごろから再び購入しているので、あまり影響を受けていませんね。
ーーコロナショック時に債券を売却できたのは、一定価格が上がったからでしょうか。もしくは今後の利上げとそれに伴う債券価格の下落を見越しての売却だったのでしょうか。
コロナショックの際、大規模な金融緩和により流れてきた資金により株式や現物資産が上昇すると予想しました。
一方で、債券の金利はすでに下がりきっており、これ以上、金利の下落やそれによる債券価格の上昇は可能性が低いと判断しました。
こういった状況を踏まえ、債券を売却して株式に資金を投じることにした、ということです。
利下げが近い未来で訪れると予想し債券へ投資
ーーいまから振り返るとベストトレードですね。
私自身は市況の予測であまり成功することはありませんが、当時、多くの人がこのようなシナリオを想定していたはずで、大きな流れとしては当然の結果だと感じています。
現在も債券を購入している理由は、今後、米国経済がハードランディング、またはソフトランディングするのか、どのように着地するかは分からないものの、利下げが必ず近い未来で訪れると考えているためです。
利下げが実現した際には、まず債券価格が上昇するでしょう。これまでの傾向から見て、利下げが来るタイミングは景気後退期となることが多いです。
ハードランディングが起こった場合、景気後退が深刻化し、株式価格は大幅に下落する一方で、債券価格が上昇するタイミングが訪れます。
その後、利下げの効果が表れて株式価格が回復すると同時に、債券価格が再び下落し始めると予想しています。
ーー現在は生の債券のほかにETFで購入されているとのことですが、具体的にどのようなETFを購入されていますか。
現在は、超長期債のTLTと、短期国債にほぼ相当するSHV、そしてハイイールド債のHYGや、TLTに3倍のレバレッジをかけたTMFなどを購入しています。
信用スプレッドが高くなっているジャンク債のETFを買い集める
ーーETFの債券をどのような基準で購入しているか教えてください。
前提として、債券の投資手法としては、大きく3つあると考えています。
1つ目は、配当金や分配金を取っていく方法です。国債でも現在なら約5%、社債なら7~8%程度の配当を得ることができますね。
私も生の米国債も購入しています。
この方法の特徴は、銀行預金と同様に、購入時に利回りが確定していて、元本が返ってくることが保証されている点です。
ただし、ETFで購入した場合は元本が上下するため、生の債券を購入する必要があります。
2つ目は、債券は金利の下落によって価格が上昇するため、金利下落に賭けて債券を購入する方法です。
この場合、債券の満期までの期間が長いほど、金利に対して敏感に反応すると言われており、この金利感応度をデュレーションと呼びます。
そのため、金利の下落に伴う債券価格の上昇に賭けるのであれば、デュレーションの長い債券を購入することで、より価格変動の恩恵を受けることが可能です。
今回、満期までの残存期間が30年ほどのTLTを購入する理由は、将来的に金利が下がることが確実と考え、それに伴う債券価格の上昇を狙っているためです。
最後の3つ目は、債券の信用スプレッドの変化に賭ける方法です。
国債や社債の利回りは、ベースとなる国債の金利に、債券の発行体のデフォルトなどの信用リスクが加わって決まります。
その時点の国債金利が4%で、デフォルトの可能性を加味した信用リスクのスプレッドが3%だとすると、合計7%の利回りになります。
このように、市況によって信用リスクのスプレッドが上乗せされたり、下げられたりします。
不景気時は全体的に各企業の信用スプレッドは大きくなりますし、倒産するリスクが高いと判断される企業の信用スプレッドはより大きくなります。
直近では、楽天の信用スプレッドが高くなっていますね。
ーーそういった前提を踏まえ、どのようなETFを購入していますか。
中でも、ジャンク債と呼ばれるものはより信用スプレッドが大きくなっており、これらを集めたのがジャンク債ETFです。
信用スプレッドが乗った投資不適格なジャンク債にまとめて投資することが可能で、HYGやJNKなどがあります。
歴史的に見ると、これらジャンク債は不景気になるとそのほかの債券より信用スプレッドが跳ね上がりますが、景気回復時には一般的な債券よりも早く回復する傾向があるんですね。
こういった債券の特徴や米国経済が今後ソフトランディングする可能性を踏まえ、これらの妙に信用スプレッドが高くなっているジャンク債のETFを買い集めており、将来大きな利益をもたらしてくれると考えています。
ーー現在保有されている生の債券は主に国債でしょうか。
はい、主に国債です。
米国経済が今後ハードランディングする可能性も考えられ、これからさらに債券価格が下がる可能性は十分にあるでしょう。
そのため期待はしているものの、まったく安心はできないな、という状況です。
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九条氏のインタビュー、3記事目では「LLMへの投資はGoogleとMetaに注目」「企業がAIを使いやすくパッケージ化するミドルウェア的な会社が出てきている」などについて伺います。
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