S&P500への採用が投資家にもたらすメリット
以前、BMRさんから取材を受けた際に言及した、パロ・アルト・ネットワークス(PANW)がS&P500に採用されました。
取材時にS&P500に採用される可能性を言及していたので、その通りになって良かったなと思っています。
出典: S&P global
「それの何がすごいの?」と思われた方がいらっしゃるかもしれませんので、S&P500に採用されることが投資家にもたらすメリットを少し書きます。
S&P500に採用されると、S&P500に連動して運用される資金がその採用された銘柄を買います。
さて、その連動資金がいったいどれぐらいあるのかご存じでしょうか。
実は筆者も詳細は存じません。
S&P500に連動する商品が全世界でものすごくたくさんあるでしょうから、把握するのは無理だと思っています。
とりあえず代表的な米国ETF3本を見てみましょう。右端の値が、2023年6月16日現在の純資産(米ドル建て)です。単位は10億ドルです。
・Vanguard 500 Index Fund (VOO) 822.93B
・iShares Core S&P 500 ETF (IVV) 310.36B
・SPDR S&P 500 ETF Trust (SPY) 393.46B
3本の純資産を合計すると1,526.75Bです。
つまり、1兆5,267億5000万ドルということです。
1ドル140円で換算すると213兆7450億円という、気が遠くなるような数字になります。
妥当な比較になっているか自信がありませんが、令和5年度の日本の一般会計予算は114兆3,812億円だそうです。
S&P500連動資金の合計は3本だけでも、日本の国家予算2年分より大きいことになります。
連動資金が大きいインデックスの採用銘柄になることは、確実な買い需要を産みます。
大規模な資金が新たな採用銘柄をS&P500のウエイトルールに基づいて買うわけです。
資金量が大きいので、株価に与える影響も大きいわけです。
確実な買い需要を産むわけですから、このインデックスの入れ替え予想を真剣にやっているアナリストを持つ証券会社もあります。
S&P500に採用されること株価への影響をご理解いただけたでしょうか?
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
実は筆者は日本株で似たようなことをしていた
筆者は証券アナリスト時代、日経平均株価採用銘柄入れ替え予想をしていました。
S&P500と比較すると規模は大分小さいと考えられますが、この銘柄入れ替えも確実な需給になります。
採用される銘柄は買い、除外される銘柄は売り需要です。
インデックス採用銘柄の入れ替え予想は、
①インデックスのルールを確認
②①で確認したスクリーニングを実施
という手順で行うのが一般的だと思います。
ルールが複雑だと、勿論手間がかかります。
仕事でやるときは、常に用意している様々なデータを抽出し、スクリーニングをするプログラムを書いて実行していました。
まずはS&P500採用条件を確認
S&P500に関するルールは公表されています。
親切に、日本語版があります(以下、ルールブックと呼びます)。
丁寧に読むと難解に思えますが、大まかに言えば以下の5点が問われます。
ルールブックの「適格性基準」に示されています。
①米国企業の普通株(優先株等の種類株式やETFを除くということ)で、主な米国市場に上場している
②時価総額が127億ドル以上、なおこの時価総額の基準はマーケット環境によって時折変わる。
③売買高や浮動株調整後流動性比率(ルールブックでは「FALR」という)が一定値以上。つまり適度な流動性が必要だということ。
④直近の四半期及び直近の連続 4 四半期にわたる一般会計原則(GAAP)ベースの利益合計(非継続事業を除く純利益)が黒字であること
⑤IPOから12か月以上経過していること
パロ・アルト・ネットワークス(PANW)は①と②と⑤は従前から要件を満たしていました。一方、赤字企業で④は未達でした。
しかし2022年半ばから黒字の四半期決算を出しており、米国時間で2023年5月23日に発表した四半期決算で4期連続黒字になり、④を達成しています。
翌営業日に株価は大きく上昇しました。
S&P500の銘柄入れ替えに伴うウエイト調整
S&P500は一部の臨時入れ替えを除くと3の倍数の月に定期的な銘柄入れ替えを行います。
2023年6月2日の引け後にS&P500への採用が発表されました。
実施日のマーケットオープン時には採用銘柄が算出対象に含まれるように、連動資金が当該銘柄について取引するのは前営業日の引けあたりです。
なお、新たに採用される銘柄、除外される銘柄によっては、他の銘柄のウエイトも変わるため、取引は採用除外銘柄に限ったものではないことが多いです。
例えばAIバブルとも言われる銘柄の筆頭であるエヌビディア(NVDA)も6/16の最後の30分ぐらい、出来高が多くなっています。これは、S&P500の銘柄入れ替えに伴うウエイト調整が一つの理由でしょう。
こちらは、ブラックロックが公表しているiShares Core S&P 500 ETF (IVV) の構成銘柄リストの抜粋です。
2023年6月16日付でパロ・アルト・ネットワークス(PANW)が0.2%のウエイトで入ったことがわかります。
先ほどご紹介したETF3本が同じウエイトで買っているでしょう。
計算すると3本だけで1日で30億ドルの買い需要となりました。
もちろんこの金額は一部にすぎません。
S&P500に採用されることの意味が少しご理解いただけたでしょうか。
出典:https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/products/239726/ishares-core-sp-500-etf
スクリーニングにより頑張れば採用銘柄を予想できるかもしれない
さて、次のS&P500採用銘柄を予想できないものか?と思われたかもしれません。
厳密に予想するのは難しいですが、候補を絞り込むことはある程度可能だと思います。
ラフですが個人投資家でもできる方法をご紹介します。
まずご紹介した5つの採用条件のうち、③の「売買高や浮動株調整後流動性比率が一定値以上」は諦めてください。
やるための労力が尋常ではありません。また英語の資料を読む必要も出てきます。
諦める分、厳密にはならないことを踏まえて、予想することになります。
では、スクリーニングをしてみましょう。
筆者はマネックス証券で米国株取引をしているので、「米国株銘柄スカウター」を使えます。このサービスの「10年スクリーニング」機能を使います。
他社でも同様のサービスがあればぜひ利用してください。
具体的なスクリーニング方法
スクリーニングの条件設定画面の画像の掲載はマネックス証券さんから許可を得ていないため、恐縮ですが省略させてください。
筆者の場合は、以下のような条件でスクリーニングを実行します。
・区分から「ETF」を外し、時価総額と利益の条件を加える
・4四半期連続黒字を指定するのが難しいため、前期から黒字転換した銘柄を抽出
この条件であればかなりラフですが、このような条件を入れないと銘柄数が2,000銘柄以上と非常に多くなってしまうので、絞り込むために入れてみた次第です。
この辺りは、スクリーニング機能次第で出来ることとできないことがあると思いますので、ご自身が使える機能を調べて、工夫して頂ければと思います。
これで対象銘柄は300銘柄以下になりました。
この結果で排除できないのが、前述した条件の①の「米国企業」であること、です。
米国株式市場には米国企業ではないものも上場されています。
有名なところでは、アリババなどです。
ADRと呼ばれる米国預託証券が上場されていて、それなりの規模で取引されています。
ですから、既にS&P500に採用されている銘柄と米国企業以外をスクリーニング結果から除外します。
既にS&P500に採用されている銘柄は、ブラックロックのwebsiteでIVVを検索するとダウンロードできます。
ダウンロードした結果をスクリーニング結果と照らし合わせて絞り込み、業績の推移等を見て判断します。
⑤の条件は米国株四季報等で調べればいいでしょう。
多分、「それめちゃくちゃ面倒だ」と思われた方が多いと思います。
はい、面倒です。
何故ならこの予想と精度である程度ご飯を食べれるアナリストがいるくらいだからです。
お金をもらえるプロと同じようなことを情報量に乏しい個人投資家がやろうとしているのですから、楽ではありません。
ですから、気が向いた方にだけお勧めします。
ただ、その精度が向上して来ると、収益機会を自分で作ることが可能になります。
さて、あなたは興味が湧きましたか?
────────────────────
「毎月100万円以上のビットコインを買えるキャッシュを生み出すスモビジについて研究」するコミュニティ、「BMRスモールビジネス研究所」を開始しました。ご興味ある方はぜひ覗いてみてください。
────────────────────
この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめです。